棋譜並べ雑感
最近、棋譜並べをする時間が楽しい。
好きな棋士の1人である菅井竜也八段の実戦集をKindleで購入し、毎日平均2局、並べている。解説付きで、1局につきタイトルページを含めて約20ページ。大満足である。指し手の解説はもちろん、流れの善悪や気合の部分や逆転の可能性に言及された、人間らしさに溢れる棋譜ばかりである。これこそ、考え方として身につけて血肉になるものだ…と本気で思う。
並べていて思うことがある。自戦記を書ける棋譜とそうでない棋譜の違いは、自分で考えて編み出した指し方とか、自分らしい指し回しで生まれた名局なんだろうと思う。皆さんは、並べたくなる棋譜があるだろうか。
自分らしい…とは何か?そんなものは棋士の先生は十人十色であり、それぞれご性格も違う。しかしそれが将棋に、棋譜に表現されている先生と、まだ実現されていない先生は残念ながら分かれると思う。棋譜を見たら誰が指しているかわかる…そういう魅力が、最近薄れてきていると感じるのは私だけだろうか。
大山流の受け
升田式石田流
山田定跡
中原流相掛かり
泥沼流
加藤流棒銀、神武以来の天才
火の玉流
いぶし銀
カミソリ流
鷺宮定跡
光速の寄せ
受ける青春
スーパー四間飛車
世紀末四間飛車
コーヤン流三間飛車
武市流筋違い角
羽生マジック(例:▲5二銀)
緻密流、丸太、1億と3手読む
鉄板流
激辛流
一刀流
下町流三間飛車
藤井システム
さばきのアーティスト
千駄ヶ谷の受け師
ゴキゲン中飛車
遠山流
矢倉流中飛車
戸辺攻め
糸谷流右玉
振り穴王子
新山崎流
青野流
勇気流
ニックネームも含めれば、魔王や貴族、番長や軍曹や東西の王子…も思い浮かぶが…将棋の内容を連想出来るかと言われると疑問が残る。
ふと気づいたのは、最近の若手棋士の先生方や現在タイトルを争っている先生方のものがたくさん思い浮かばない。ソフト研究が進んだ効果で、今まで気がつかなかった鉱脈が次々に掘り当てられている。その一方で、誰が指したのかわからない…誰が指しても同じ…そんな気持ちになるのは私だけだろうか。
もちろん、これは私の主観でしかないので、最新型を数多く追い求めたい方には自信を持って将棋年鑑をおすすめする。しかし、少なくとも私は…仕事も子育てもある私には、好きな棋士の先生が指した名局集、実戦集がベストだと思っている。
菅井竜也八段の実戦集は今週までで2冊終わってしまう。次は久保九段の四間飛車…の中でも自戦解説の12局くらい。それからまだ時間があれば…何かの名局集に移ろう。
前回、棋譜並べを日課として血肉になったのは、10年くらい前に支部対抗団体戦の県代表になった時に遡る。県大会当日が転勤による引越しの日だった。西日本大会までの1ヶ月間、ネット環境もテレビもついでにカーテンもない社員寮の自室で、白熱球のランプに照らされつつ『月下の棋士』とか言いながら、中原誠名局集をひたすら並べた。結果は西日本で5勝1敗で、あと1つ勝てば四段免状だったが…叶わなかった。コロナが明けていればこの3月、夢よもう一度。