のりたまリーグ最終戦
3月6日土曜日、のりたまリーグの最終戦を迎えた。最終戦を前にして今期の成績は…全敗。初戦の馬場美濃さんとの将棋は、美濃囲いを攻略できていた。しかしなぜか複雑な手順に飛び込んで大逆転負け。馬場美濃さんの指し手は的確で堅実、確実。自分には無いものを感じた。痛恨の黒星スタートから、今期の苦難が始まった。
9月に職場がかわり、片道5分だった通勤時間が50分になった。そして11月からの息子の入院…。「心・技・体」のバランスはガタガタになり、将棋も勝敗以前に内容が厳しい。開幕前に立てた勝ち越しの目標は早々に達成できない儚い夢となり、消えた。
しかしそれでも、将棋配信に積極的にお邪魔して人とのつながりと対局の機会だけは失わないように心がけた。戦法の研究はできないが、将棋から離れない…ただそれだけを目標にして。
1月になり家族が戻ってきた。ゆーげんさんとの将棋は、結果こそ負けたが納得のいく内容で、少しずつ戻ってきているのを実感した。
ヘッセさんの棋力の上昇に励まされ、あすたさんのストイックな研究に脱帽し、くりそらさんの無限の引き出しに憧れて…。対局で負かされるたびに、落胆もしながら前に進む糧をいただいた。
最終戦の相手はnzさん。水曜日の幽玄杯で強烈な終盤力を発揮されていた。あの馬場美濃さんが、感想戦で何回も詰まされたとおっしゃるくらいで、自分も厳しい将棋になることを覚悟した。
さて、どんな作戦をとるか。筋違い角が自分にとっての直球、ストレートだが。最近の対局を観戦すると相振りになりそうな気がする。先手を引けたとしても、後手が飛車先を突けば角交換できない。野良では結構な確率で発生する筋違い角だが、対局者がわかっているリーグ戦では、容易に回避できるし対策を立ててから受けることもできる。だから発生率も勝率も低くなる。先手での対抗型、後手での相振りに絞って作戦を準備することにした。
対局当日の3月6日は、前日職場棚卸しのため、24時間徹夜勤務して朝9時半に帰宅した。入浴して食事して少し寝て…体内時計がおかしい。妻の実家に息子をお願いして、夫婦で買い物に出掛けてリフレッシュできた。自らの眠気とも戦いながら、実際少し眠ってしまいながら息子を寝かしつけて迎えた22時。対局開始。
後手になり、想定通りの相振り飛車模様に進んだ。手持ちの書籍の中で参考にしたのは菅井ノート相振り編。お持ちの方は、ご覧いただければと思う。ここで△3六歩▲同歩△5五角が、初心に戻って準備してきた形。▲1八飛△3六飛に先手がどう応じるか、という将棋のつもりだった。
先手の対応は想定外の▲6五歩だった。なぜ想定外か?菅井ノート相振り編でも触れられているが、角交換して同桂の形が8九地点に飛車打ちの傷を作っており、好んで飛び込む変化では無い。として打ち切られていたからだ。あすたさんほどの深掘り研究が出来ていれば、想定内で策を練ることが出来たかもしれない。角交換して再度の△5五角に先手の応手は。
▲7八銀と引かれたのが、8九地点もカバーしながら左辺に玉を囲う含みを見せる柔軟な手だと感心した。しかし、nzさんが狙っていたのはもっと積極的で直接的な展開だった。
3図から△3六飛▲6四歩△同角▲6八飛と進んだのが4図。▲6四歩は全く考えておらず、指されてみると筋。先手の狙いが見えるだろうか。
△1九角成▲4五角で5図。まさか「▲4五角」を相手に指されるとは思わなかった。一見困っているように見えるが、取ったばかりの香車で切り返せるので大丈夫。
△6六香▲3六角△6八香成▲同金と進んだのが6図。飛車交換になり、得した香車を取り返された。仕切り直しに見えるが、強力な駒を活用して有利にもっていきたい。以下、△7二銀▲3八銀△5五馬で7図。
先手の角は生しかも筋違い。後手は馬。この差を主張すれば優勢に持っていけると思った。
7図から▲5六香△4四馬▲4六歩△4二銀▲4五角△3二金に▲9六歩で8図。端歩をついたのは、後手に動いてもらう意味と条件が良ければ端攻めを睨んでいる。しかし、速い攻めにはならないので、ここは形勢グラフを引き寄せることができると思った。
香車を狙って△5四歩としたのが好手だったと思う。角も香車も効いている玉のコビンを突くのは危険かと思ったが、タイミングと条件が揃っていて成立したようだ。優勢を意識した。
戻って、8図では▲9六歩に代えて▲6五桂と跳ねる手が感想戦で検討された。指摘してくれたのは開始から観戦されていたくりそらさん。分岐8図以下△5四歩▲同香△5二歩で何事も…ないなんて言わないよ絶対。
皆さん、ここから攻めをつなげるとしたらどうしますか?香車にひもをつけているだけの大弓が火を吹く展開は…
この▲6四歩が見えているかどうか。△同歩▲6三歩△5一玉!▲6二飛!△8二飛!
変化は一例だが、人間的では無い。KENTOにかけたら後手が有利ではある。しかし▲6五桂の変化なら先手のnzさんが終盤力を発揮する展開になったかもしれない。本譜は9図から香車を取り切り、先手の猛攻に冷静に対応できた。
以下、先手の攻め駒を狙っていき、最後は即詰みに討ち取ることが出来た。
作戦の準備、切負け将棋の指しまくりではなく秒読み付きの将棋を大切に指す、そして家族の帰宅、転勤先への慣れ。全ての要素がプラスに働いて、リーグ全敗を回避することができた。とはいえ、入れ替え戦対象の順位なので大一番があと一局控えている。相手はB級リーグで好成績、勢いがあり充実している。限られた時間の中で、できる最善の準備をして対局に臨もうと思う。来期もA級で戦えるように。