Beautiful Work
暑い…暑すぎる
ここは砂漠地帯。オーストラリアの中心地。1月が真夏の炎天下なんてどうなってんだ、と心の中で嘆くわたし。今日の気温は41度…休憩時間帯には43度には届くだろう。あぁ…朝に塗った日焼け止め塗りなおさなきゃ。
タスクボードを眺めて、まだ終わっていない部屋数を数え、一部屋の清掃時間を逆算して考える。ふーん、意外と少ないかも。まぁこの暑さだし、閑散期には入ったからね。きっと13時頃には休憩に入れば、ティファニーとランチルームで会えるだろう。
そんなことを考えながら、チェックアウト後の部屋をノックをし、お客さんがいないことを確かめて清掃に取り掛かる。
ここは、リゾート地。有名な世界遺産をお目当てにたくさんの観光客が世界中から来る。それぞれが特別な思いをもって。
ある部屋には、60歳の誕生日おめでとうのバースデーカードとバルーンが飾りつけられ、ある部屋には世界中の旅行先で買ったお菓子が床一面に食べ散らかされ、またある時には
「毎日、綺麗な部屋で過ごせて幸せでした。ありがとう!」と感謝のメモがチップを添えた状態で置かれている。
チェックアウト後の部屋は、確かに汚い。ゴミだって大量だし、匂いも独特。いくら綺麗にしてくれていたとはいえ、一番最初の状態のままなわけはない。
しかし、それ以上に
気兼ねなく、わたしが掃除した一室で体も心も休めてくれたということが、何よりも嬉しい。
週に一度は、仲良しのチームのみんなでリゾート内にあるBBQエリアで一緒にご飯を食べる。何か特別なことを話すわけでもなく、今週も乗り切った~!最近の恋愛どーなのーーとお互いたわいもない話をする。
そんな場で、清掃の仕事で感じた気持ちを話してるなんてアホらし!普段飲まないお酒を飲んで、酔っちゃったかなわたし~と水を飲もうとすると、
Maggieは毎日Beautiful Workをしてるからね!
わたしたちのTeamは、ホテルのBack Bornだからね!!
なんて綺麗な響き…。
わたしの世界の見え方と、この人たちの見え方は違っていた。
ゴミを集めながら、汗を流しながら、なんでこんな底辺みたいな仕事してるのかなぁって思うこともあった。こんなのって教養がない人の仕事みたいやんって間違った見方もしていた。
だけど、お客さんにとっては一生に一度かもしれないこの場所で、大切な人と特別な時間を過ごす場所。その思い出にそっと寄り添える素敵な仕事。
わたしたちがいなかったら、汚い部屋で過ごしたくないと宿泊をキャンセルするだろうし、そうしたらホテルとしては経営すらまわらない。
あれ、意外と大役をしてるん?わたし?
歩いている道が綺麗なのも、部屋が日々綺麗なのも、自分ではない、誰かが時間を使って一生懸命に綺麗にしてくれているから。
それは、当たり前のことじゃない。
知っていたつもりになっていただけで、わたしは全然気づいてもいなかったんだ。
いってきます
ドアを施錠して、五階から下へと階段で降りていく。4階のSさんが、雨でぬれた床をモップを使って掃除してくれている。
あの、いつもありがとうございます!
え、あぁ!まぁ、いいのよ、時間があるのよ~私は
少し驚いていたけど、笑顔になってくれてたな。嬉しい。
今日は帰ったら、駐輪場近くの草刈りをしよう。