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「時空を超えて出会う魂の旅」特別編~印度支那①~
ある時。”ある人”が、あるところで、生まれました。
宇宙にある、大きな大きな一つの光から、
その人は「地球」という星に、「人間」という生物として生まれたのです。その少し前。大きな光は、”ある人”に向けて、そっと囁きました。
「愛おしい我が光よ。色々な経験をしておいで。」
”ある人”は笑顔を返し、流れ星に乗って、地球に向けて出発しました。
幼い時から、その地に強い興味があった。
今世初めて、そこに降り立てた時の高揚感。
胸いっぱい、その地の空気を取り込み、解き放つ。
街を歩き、その地の人々と語らう。
祠と仏像に、手を合わせる。
とてつもなくエキゾチックでありながら、心地よい。
その後、何度もその地を、私は訪れた。
あれから、何年も経つ。
貴方も、きっと。
あの地に、再び降り立つことがあったでしょう。
そろそろ、待ち合せしませんか。
朝陽と夕陽に包まれて再び、貴方と共に、あの地を歩みたいのです。
宇宙の果てまで。
そこは、長閑な土地。
気候が温暖で、緑濃い風景が美しい。
田には水が満ち、畑からも豊潤な収穫に恵まれた。
人々は穏やかで、仲が良かった。
”ある人”は再び、肉体を持って生まれようとしていた。
遙か東欧の地での、
貧困と飢え、裏切りに苦しんだ人生から解放され。
今度は、東南アジアのその地に。
女性は、難産に苦しんでいた。
大きな屋敷の外では、仏僧の祈祷と村の呪術師の祈りが、
同時に捧げられていた。
”出でよ。そなたは、生まれるのであろうから”
何時間、いや、何日も経て。
産声も上げずに、赤子はこの世に生まれた。
「はあ、やれやれ。よかった、よかった。
さあ、早う。茉莉、浄めとくれ。」
お産を介助していた女性から、
子守の”茉莉”は、生まれたての赤子をしっかりと腕に受け取り、
慣れた手つきで体を浄め始めた。
茉莉は、村の子だくさんの家に生まれた娘だ。
長兄・次兄の後、生まれたばかりの茉莉が女子であったのをみて、
両親はひどくがっかりした。
男子は、家族の徳を積む行為となる仏寺への出家ができ、
農作業や家畜の世話をする労働力となる。
しかし女子は、将来赤子を成す以外使えない、とされていたからだ。
後に、茉莉の両親はそんなことを思ったことなど、すっかり忘れた。
茉莉は心身明るく健康な上、実に働き者だった。
幼い頃から女性の仕事とされる炊事洗濯掃除、機織りはもちろん、
農作業や家畜の世話、おまけに、両親に次々生まれる弟妹の子守までした。
甲斐甲斐しく弟妹の子守をしながら、よく働く茉莉は、村で評判になった。
また、茉莉は村の人々にはもちろん、子ども達からも愛された。
このような経緯で人々は、茉莉の両親に金品を渡し、
茉莉に子守を手伝ってもらうことが、いつの間にか倣いとなった。
何とも、小さい体。壊れそうだ。
がっしりとした茉莉の手から、今にも崩れ落ちそうな赤子。
おそらく、月満ちることなく、生まれたのだろう。
これまでの中で、一番小さな赤子だと、茉莉は思った。
体の力など、無い。
茉莉は思わず心配になり、小さな鼻と口にそっと頬を近づけた。
なんとも優しい、微かな息吹。茉莉は、心底ほっとした。
この赤子が生きていることを知り、とても嬉しくなった。
すると、どうしたことだろう。
10歳ぐらいで、まだ少年のような体をした茉莉だったが、
胸が張り、気持ちが溢れてくるのを感じた。
この赤子をたまらなく愛おしく、可愛らしく思った。
茉莉は何か、この赤子にしてやりたくて、たまらなくなった。
先程変えたばかりではあったが、襁褓に手を伸ばした。
濡れているかどうかもわからない、
赤子の着けていた襁褓をそっと外す。
実は産湯をつかわせた時から、
茉莉はこの赤子の特別なことに、気付いていた。
・・・・・・・そんなことなど、取るに足らないこと。
小さな体に清潔な襁褓をつけると、茉莉は嬉しくなった。
その夜、茉莉は久しぶりに実家に帰った。
両親、兄達は、まだ野良仕事に出ていて不在だったが、
家屋は幼い弟妹で溢れていた。
みんなに平等になるよう、お土産の飴を分けた後、
早速、茉莉は食事の支度を始めた。
ふと、一番幼い妹の襁褓が膨れていることに気付いた。
茉莉は素早く、襁褓を替えてやる。
暮れなずむ空の下で、襁褓や他のものをを洗濯しながら。
あの赤子の特別なことは、確信となった。
「お前だけに、とどめよ」
どこからか、知らない声が茉莉だけに届く。
声を聞くまでもなく茉莉は、秘めようと考えていた。
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