見出し画像

「時空を超えて出会う魂の旅」特別編~印度支那㉝~

東南アジアのある地。
出家を経て、戒名「慧光」を私は授けられ”巨大寺院”に入門。
隣国の僧「碧海」と出会う。
そして新たな戒名「光環」を名乗る。

隣国出身の商人は、言葉を続けた。
”今、その玉は。何を望んでいますか。”

我に返り、自らの手の中にある碧色の玉を、光環は見つめた。
じわりと穏やかな体温が伝わってくる。脈を感じる。
ーさあ、参ろうぞ。我の故郷へ。ー

閃光に貫かれた。
光環はようやく、碧海尊師が亡くなったことを痛感した。
隣国へは、帰国されるあの方に同行しようとしたまで。
万事手はず整っているとはいえ、あの方亡き今、
我があの国へ旅立つ理由は無い。
今はもう、あの方はいない。
悲しい、なんと、悲しいことだ。
玉よ。我を供に、隣国に参るつもりか
瞬時に、玉が応えた。
ー貴殿は、我の主。
 我が貴殿の供を務め、隣国に行くのだ。ー

光環は、意識を取り戻した。
いつの間にか、倒れてしまったのだ。手に玉を、固く握ったままで。
翌朝、件の商人を大寺院に再び招き、光環は告げた。
”玉は、我を主とし、隣国に供をすると申しておる”

商人は喜びで目を見開いた。そして、大きく通る声で告げた。
”光環尊師。ここに隣国出身の私がおりますのも、仏縁でございましょう。
尊師の隣国への道、我々(隣国出身者)が支援いたします。お任せを”
さあ忙しくなりますわい、と、笑顔の商人は慌ただしく辞去した。

画像1

巨大寺院に帰りつくまでに起こった、この急展開。
光環は、眩暈がするような思いだった。
一方で、自らがすべきことをしている、
確たる安らぎと、前向きな想いが漲っていた。

碧海尊師は、約束を違えたことが無かった。
それがなぜ、大寺院に我を迎えに来れないようになったのか。
なぜ、共に隣国に行くことができなくなくなったのか。

光環は、切なくなった。
掌の玉を眺めた。

碧色の輝き。
碧海尊師の故郷である隣国の海は、このような煌めきか。
目の前に、光輝く海洋が広がった。
海に、光環は抱かれた。

体から、滂沱の悲しみが、次から次へと、迸った。
一頻り、光環は悲しみのなかに自分がいることを、ようやく許した。

碧海尊師は約束を守った。
この玉が、巨大寺院から我を迎えにくるように。
そして、共に隣国に参るよう、取り計らってくれた。
光環は、そのように理解することにした。

画像2

その後の光環の行動は、俊敏極まるものであった。
大寺院から巨大寺院へ移動し、隣国に出立する準備をした。
とはいえ、すでに碧海尊師により準備完了していたため、
日を開けず、隣国に向けて出発した。
不思議な巡り合わせのようでいて、
必然により、光環は自分の意志で隣国に向かった。

道中は、隣国出身者の力添えにより、安全かつ順調なものとなった。
碧海尊師が修行した寺院に、到着。
さらなる修行を重ねた光環は、世の光となる。

何年か後、光環は隣国で生涯を終えた。
そして、その骸は本人の希望通り、海に還された。
表向きは、涅槃に入った後、本国に体を返すためであったが、
碧海尊師と共に葬られるために。

光環は、愛弟子の一人に言付けた。
”自分の肉体と共に、この玉を海へ還せ”と。
玉がその意志でないことは、知ってはいたが。

光環の骸が海に還される日、この愛弟子は約束を違えることにした。
敬愛する尊師の形見を、海へ還すことはどうしてもできなかったのだ。
密かに、寺院内に掘った穴に玉を納めた。

隣国は美しい国であったが、その後幾度も戦火に包まれる。

ある時、ならず者の狼藉と略奪に、寺院は見舞われた。
寺院敷地内に収まっていた玉は、危機を察した。
誰の手にも、自身を委ねたくない。
そこで自ら千々に砕け散り、隣国の土へと還った。

碧色に輝く、想いと共に。


時の流れの中で、私達は離れ離れになった
しかし、私達の絆は消えることがない
輝き満ちたあの日々を、今もいつも想う
あなたは今、どうしているのだろうか
私に唯一できることは、風にあなたへの想いを託すこと
風よ、どうかあなたに、届けてほしい
今もいつでも想っている
今もあなたを、変わらず愛している 
あなたと歩き、夢を語った瞬間を、今も覚えている
あなたとわたしの物語 忘れたことはない
もし時間を戻せるのなら
また一緒にいられるだろうか
わたしはまだ、あなたが恋しくて
この想いが消える事はない
あなたと一緒にいた時を忘れられない

この肉体は
いつか地に、還す時がくる
しかし魂は
あらゆる体を借り、永遠に生きていく

愛しき君よ
我らは永遠に離れることはない





いいなと思ったら応援しよう!

magenta-hikari
ありがとうございます! あなた様からのお気持ちに、とても嬉しいです。 いただきました厚意は、教育機関、医療機関、動物シェルターなどの 運営資金へ寄付することで、活かしたいと思います。