
【三菱アウトランダー】マガジンX 2025年3月号『ざ・総括。』<単品売り>
オススメ度 ★★★☆☆
初代の「志」に戻るべきだ
昨年10月にMC(マイナーチェンジ)した三菱アウトランダー。三菱自動車としてのフラッグシップであり、AWD(オールホイールドライブ)の三菱を象徴するクルマとして、前後独立駆動の電動モーターという新しい方式が作り出す運動能力の高さが2013年1月に発売された初代PHEVモデルの売りだったが、2015年6月のMCで燃費志向のPHEVへとやや舵を切り、2021年10月のアウトランダーとして3代目、PHEVとしては2代目のFMC(フルモデルチェンジ)では日産とのアライアンス・モデルとして登場。そのとき本誌評価陣は「三菱らしさが消えた」と評した。今回はそのモデルのMCなのだが…。
●評価(★)の見かた●
★☆☆☆☆=まったく買うに値しない
★★☆☆☆=ちょっと考えたほうがいい
★★★☆☆=一応オススメできる標準作
★★★★☆=積極的に買いの秀作
★★★★★=買わなきゃ損する超逸品

<評価メンバー>
エ=エンジニアリングコンサルタント
チ=チューニングショップの社長兼エンジニア
部=元部品メーカーのエンジニア
T=ベテラン実験ドライバー
通=自動車業界の事情通
「高級車」をねらった三菱
エンジニアリングコンサルタント(以下=エ) アウトランダーのMCだ。現在は純粋なICE(内燃機関)搭載モデル、いわゆるICVは日本向けには設定されていない。すべてPHEV(プラグイン・ハイブリッド・エレクトリック・ビークル)だ。初代PHEVは、この評価会議では★の評価が満点だった。当時は、前後軸にそれぞれ別べつの電動モーターを搭載して前後軸に機械的な連携のないAWDは他に存在しなかった。三菱はICVでは不可能な領域で車両運動性を極めるという意思表示を行い、前後モーターという新機構を使って見事に「走り」をまとめていたから★5つだった。その初代PHEVがMCされたときは、燃費志向の分かりやすい「エコカー」に変わった。せっかくのハンドリングマシンが平凡なPHEVになろうとしていた。あのとき、我われは「初志貫徹してほしい」と注文をつけたが、そうはならなかった。
ベテラン実験ドライバー(以下=T) 以前も同じ発言をした記憶があるが、初代PHEVはランサーエボリューションのSUV版という印象だった。AYC(アクティブ・ヨー・コントロール)と前後モーターを統合するS‐AWC(スーパー・オール・ホイール・コントロール)が独特の駆動感覚を生んでいた。その後、三菱のAYCはFF車の前輪ブレーキを使って横方向(ヨー方向)の運動を制御する方法が生み出され、AWDでなくてもAWDのような車両姿勢の安定性は得られるという路線が中心になった。それでもアウトランダーは前後にモーターを持つクルマとして存続し、我われはそこに期待したのだが、FMCで現行モデルになったときは、「ああ、これで終わった」という残念な気持ちになった。
自動車業界の事情通(以下=通) 振り返れば、三菱はFFベースのランサーエボリューションで後輪左右の自在なトルク移送、単に片側輪の動力を弱めるのではなく50:50から理論的には片輪100まで可能なトルクベクタリングという手法を編み出し、AWDの世界を変えた。そして電動化が叫ばれて以降は、機械式の前後軸関連制御ではできないことをやろうとした。それが初代アウトランダーPHEVで、その後に登場したエクリプスクロスも「走り」はいい出来だった。
チューニングショップの社長兼エンジニア(以下=チ) そうやって振り返ると、日産が三菱自動車を支配するようになってから、三菱が長年育ててきたAWD技術の進歩が止まったような印象だ。現行モデルの「マッド」モードのように、前後軸の回転拘束を演出するような他のOEM(自動車メーカー)では絶対に考えないような制御も登場したが、いかんせん日産主導の現在のプラットフォーム、日産エクストレイル/ローグと共通のプラットフォームには三菱のAWDらしい骨太さがない。ジープ・ラングラーに比べるとその差は大きい。まだ初代アウトランダーPHEVのころは良かった。
部品メーカーのエンジニア(以下=部) 北米でローグはさんざんな販売実績です。昨年はインセンティブ(販売奨励金)を積み増ししましたが、それでも前年比マイナスで、まったく期待外れです。そもそも現行モデルが登場したときに「坂を登れない4WD」だとか、「燃費が悪すぎる」とか不評だったのに、日産は根本的な手当ができませんでした。
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