『ざ・総括。』 型式認証不正は何が問題なのだろうか?
しばらくBEVは停滞か?
トヨタ、ホンダ、マツダ、スズキ、ヤマハ発動機の5社で、型式指定申請に必要な認証試験の不正が見つかった。対象は2輪車を含めて合計38車種、現在生産中の製品もあり、合計513万台にもおよぶ不正である。発覚のきっかけはダイハツの不正を受けて国土交通省が自動車業界85社に社内点検を指示したことからだった。トヨタなどは「認証基準よりも厳しいテストを行っていた」などと言うが、不正があった試験の多くは国際基準に沿ったものであり、その試験を行っていなかったという点では認証の意義そのものが冒涜される重大な不正と言える。「より厳しい試験のほうが良いと判断した」などとは言えない状況にある。
<評価メンバー>
エ=エンジニアリングコンサルタント
チ=チューニングショップの社長兼エンジニア
部=元部品メーカーのエンジニア
T=ベテラン実験ドライバー
通=自動車業界の事情通
A=某外資系調査・コンサルティング会社のAさん
型式指定とは何か?
エンジニアリングコンサルタント(以下=エ) またまた認証に必要なデータでの不正だ。ダイハツは1989年から30年以上にわたって認証試験にかかわる不正を続けてきたことが明らかになり、日野自動車のエンジン不正、豊田自動織機のフォークリフト関連および乗用車用ディーゼルエンジンの不正なども糾弾されたばかりだが、今度はトヨタ、ホンダ、マツダという「世界で闘う日本の乗用車」の本丸にかかわる事件だ。そこでゲストをお迎えした。某外資系調査・コンサルティング会社で調査分析と市場予測を担当しているAさんだ。過去に3回参加していただいているから、今回も会議に加わってもらった。
某外資系調査・コンサルティング会社で調査分析と市場予測を担当のAさん(以下=A) 今回もよろしくお願いします。私も海外の認証資料を整理してきました。
チューニングショップの社長兼エンジニア(以下=チ) トヨタの記者会見で豊田章男氏が、「国の基準より厳しい試験をしていた」と語った。そのうえで「今日のこの会見で私が言うべきではないが、制度自体をどうするのかという議論になっていくといい」と語った。経営者だから型式認証の細かい部分や認証に必要な試験のことは知らないと思うが、トヨタらしい「上から目線」だよ。よく言ったもんだ。
ベテラン実験ドライバー(以下=T) まったくだ。オレが某OEM(自動車メーカー)で現役だった時代には考えられない暴言だ。こんな言い方をしたら、オレの時代の運輸省地交局(地域交通局)審査課は、たぶんイジメに走ったと思う(笑)。認証試験を後回しにするとかね。
元部品メーカーのエンジニア(以下=部) そもそも型式指定のための認証とは何なのか、です。型式指定は、同じ仕様のモデルを一定台数以上製造する場合には恩恵です。輸入車にも適用されます。型式指定を取得していないと、販売した1台ごとに国交省が定める完成検査を受けなければなりませんが、量産を始める前の段階で国交省が定める試験を行い、そのすべてにパスしている場合には型式の「指定」を受けた証として型式番号が与えられます。これがあれば、工場出荷前に工場内で完成車検査を受けて、それに合格すればすべての認証基準に適合していることが認められ、初回登録(軽自動車の場合は届出)時でも、そのあとの継続検査時でも、いちいち検査を受ける必要はなくなります。
自動車業界の事情通(以下=通) 継続車検でも公的機関への現車持ち込みは必要ない。いわゆる民間車検で済む。だからOEMは型式指定を取得する。コストはかかるけれど、一度の認証試験で済むのだから、じつはOEMにとっては都合の良い制度と言える。
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