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【ADAS(先進運転支援システム)】マガジンX 2024年11月号『ざ・総括。』

下手なADAS(先進運転支援システム)は「疲れる」

ADAS(アドバンスド・ドライバー・アシスタンス・システム=先進運転支援システム)は、その名のとおり運転者を手助けするためのものだ。すでに多くの機能が開発されて市販車に採用されている。世界的には、現在のADASは「レベル2」と呼ばれる自動運転の領域にいる。しかし、世の中には「上手いADAS」と「下手くそなADAS」が存在する。何も気にせず乗っていられて、安心して任せていられるADASは、総じて欧州車のADASだ。本誌評価陣は、「そもそもシャシー性能とパワートレインのレスポンスがADASのフィールを決める」「クルマの基本性能を上げることのほうが先」と言う。

トヨタ・プリウス
プジョー408
BMW・5シリーズ

<評価メンバー>
エ=エンジニアリングコンサルタント
チ=チューニングショップの社長兼エンジニア
部=元部品メーカーのエンジニア
T=ベテラン実験ドライバー
通=自動車業界の事情通

距離か車間時間か

エンジニアリングコンサルタント(以下=エ) 今回はみなさんに何台かのADAS装備車に乗ってもらった。なぜかというと、ADASとひと括りに言っても、あるいはLKA(レーン・キープ・アシスト)のように特定の機能だけを取り出しても、搭載しているモデルによってその制御も乗り味も変わる。その理由はどこにあるのかを、この評価会議で取り上げたかったためだ。将来はおそらく世の中が自動運転を求めてくるだろう。そこへ行くにしても、まずは現在のADASで起きていることを整理しておく必要がある。座長としてそう考えた次第だ。
チューニングショップの社長兼エンジニア(以下=チ) そこで座長に依頼されたのは、トヨタ・プリウス、プジョー408、BMW・5シリーズの3台を日常のドライビングで使ってもらい、皆さんのマイカーのADAS機能と比べてもらうことだ。この3台はウチとTさんの会社がリースで借りているクルマだ。日独仏3カ国代表という位置付けだ。ああ、プジョー408については、そのうちしっかり評価運転をしてもらいたい。
 どのクルマが優れているとか、どのOEM(自動車メーカー)がダメだとか、自分のマイカーのADASはここが優秀だとかの個別の話ではなく、クルマ側がやってくれる自動制御の「違い」を論点にしたい。まずはACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を取り上げよう。昔のクルーズコントロールは、車速をセットしておくとその速度で一定に走るという単純なものだったが、現在の「アダプティブ」や「アドバンスド」が名称に付いたクルーズコントロールは、渋滞追従だとか、前方に割り込みされたときの対処とか、いろいろとやってくれる。
部品メーカーのエンジニア(以下=部) ACCが主に受け持つのは前後方向の運動と、そのためのタイヤ摩擦力の使い方です。一方、LKC(レーン・キープ・コントロール)はLKAとも呼ばれますが、これはステアリングを使う横方向の運動とそのためのタイヤの使い方を担当します。なので、ACCの役割の中でもっとも重要なポイントは、ブレーキを掛ける「タイミング」とその「掛け方」、それと「減速度の立ち上げ方」です。
ベテラン実験ドライバー(以下=T) 最終的に必要になる可能性がある制動を行うためのブレーキ効力を最初にスッと立ち上げること。たとえば10m先の路面が濡れていることに対処するためには、減速がはじまってから途中で制動力を強くするのでは困る。路面のミュー(摩擦係数)が低い場合、たとえ0.2G程度のブレーキングだとしても、危険な状況に接近してから減速を強める方法では止まれないことがある。
自動車業界の事情通(以下=通) 同時に踏力一定ブレーキだね。ブレーキングの最初にスッと減速度が立ち上がり、そのまま一定のGが続いていくのであれば、ドライバー以外の乗員はそのままの体勢を保っていればいい。減速度が減る方向への身体反応は人間は自然にできるが、途中から減速度が増えると身体が前方につんのめって揺れる。これは不愉快であり、疲れる。

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