VCT PAC 「ZETA vs DFM」JPダービーマッチの感想・戦術考察
WEEK4 DAY2「ZETA vs DFM」
この試合は両日本チームにとって最も重要な試合といっても過言ではなく、調子を上げつつあるZETAと未勝利という長いトンネルの真っただ中にいるDFM両者とも負けられない試合となりました。
試合開始前の雰囲気
両者とも応援している日本ファンは多く、また両者の状況を理解している方も多いためどちらが勝っても心の痛い試合となることが明確でした。
両チームの状況をまとめていくと、
「ZETA」
・現在2勝1敗。突破基準となる4勝に2勝足りない。
・1マップ圧勝が少なく、ストレート勝ちがないため得失点(?)差では油断できない状況。
「DFM」
・現在0勝3敗。突破基準となる4勝に4勝足りない。
・3回の負けで1マップしかとれておらず、2回ストレート負けと得失点(?)差でも厳しい状況。
このようになっており、ZETAとしてはこの勝利はプレイオフに大きく近づく1勝、DFMとしてはこの先を考えると何としても取らないといけない1勝となります。
MAP1 ASCENT(PICK:ZETA)ZETA 13 - 9 DFM
MAP1 ASCENTの感想
一般的に守りマップと言われるアセントにしては珍しい両者攻撃でラウンドを取りまくる珍しい試合となりました。
今回の試合のサプライズはxnfri選手に変わって出てきたSEOLDAM(ソルダム)選手でしょう。LOCKINでは振るわず1マップのみの登場で、リーグ戦始まって以降出場はなかったのですがZETA戦で今スプリット初出場になりました。また前回はtakej選手がリザーブでseoldam選手の出場でしたが、今回xhfri選手に変わってということでこの点も前回と違う点になります。
試合を通して両チームの攻撃が目立つ半面、守りで課題のあった試合のように見られ前半を10-2で折り返したZETAとしてはもったいない後半になってしまいました。
ただDFMも負けておらず、次のピックマップでは十分互角に戦えるのではと思わされる試合となりました。
戦術考察
seoldam選手は世界でも名のあるジェットプレイヤーですのでジェットをピックすることは見ている人含め周知の事実でした。ただZETAも事前にseoldam選手が出てくることを知っていた様子なので両者ともそこまで驚きのあるピックではなかったと思われます。
ここからは面白かったラウンドを見ていきたいと思います。
前半 ZETA Attack DFM Defence
ラウンド1(ピストルラウンド)
DFMはZETAがAラッシュをしてくることを予測していたと思える配置で、ミッドを完全に開けてA3人で守っている。ただ、ソーヴァの立ち位置は謎。
見事にラッシュを止めれたDFMはその後の対応含めよかったが最後crowに全て持ってかれてしまいました。
ラウンド2(DFMエコラウンド)
DFMのこのモクを使った速い取り返しはかなり面白かった。(もともとZETAのSugarZ3ro選手が流行らせた気がする)この先もこのモクを何回か見ることになります。
ラウンド3
このラウンドは両チームともに相手の動きに連動して柔軟な対応を取った、とても見ごたえのあるラウンドでした。
ZETAは少しAにアクションをかけてのBラッシュをしようとしており、DFMはA2・Mid1・B2配置を取っています。
ここでもDFMは2ラウンド目で見せたローワーからサイト内へ味方が入れるモクを使いラッシュ対策をしています。この時点でDFMの動きは完璧に近いと思います。
ただZETAはサイト内に最低でも3人いる事を情報として持っており、すぐに相手人数の少ないAサイトにむかいます。
ZETAの判断の速さは素晴らしかったのですが、序盤につけられた人数差とtakej選手に1人持っていかれたことが不利となり最後は囲まれて倒される形となりました。
このラウンドは両チームよかった点が多く特にDFMは完璧なラウンド運びだったと思われます。
ただあの状況でAメインまで取れていたZETAは撃ち合い次第では全然取れていたラウンドでありました。
ラウンド4(DFMエコ)
このラウンドでDFMはミッドを制圧しにいくのだが、意図のわからない動きになってしまったように見えました。
seoldam選手がミッドを取ってハイミッドを駆け上がるまではわかりますが、AメインにZETAが固まっていたりした場合、seoldam選手のカバーがないため無駄死にとなる可能性が高いです。
そしてこの後相手がラッシュをしてきた際、なぜかKAYOはリスを回ってキルジョイ側へ行きます。ジェットはハイミッドから攻側リスを回ってBメインを裏から詰めますが、KAYOは確実にジェットと裏から挟み込む動きをしたほうがジェットのカバーもできる点を考えても効果的だと考えられます。
DFMとしては裏を2人にして、Bサイト側は裏の合流を待ってまとまって行動するという判断が必要だったと思うラウンドでした。
ラウンド5
このラウンドではZETAは残り時間40分を切ってからAサイトをメインとショートで挟みながらラッシュを仕掛けます。
DFMはA3・B2配置でミッドはリス抜けだけを見ている状況。
相手のラッシュが来るとなったタイミングでReita選手のリスからのリコン+サイト内3人の素晴らしい連携でZETAを止めきっており見事なラウンドになりました。
ラウンド6
ドライでキルジョイが倒された時点で不利を背負ってしまったDFM。一回もカバーキルを取れずラウンドを取られてしまいました。
この場面でキルジョイが体でミッドを見ているならジェットはジャンプでミッドを確認する必要はなく、キルジョイが視認したらすぐキルをとれる状況にしているべきです。
ただここはZETAとしてもモクを余らせているので、ミッド深めにモクを置いてリスクを減らすべきでもあった場面。
ラウンド8
DFMはA2・M1・B2の基本配置で、対するZETAはA1・M3・B1とミッドのコントロールを意識した配置。
Bメインのタレットが壊されないためKAYOは速めにAに寄ります。
ただこれまでDFMはAサイト付近に人を多く配置する傾向があったことを読んでかZETAはBに攻め込み、情報が欲しくAショートを出てきたReita選手をショートで倒せたことでAのサイト内2人は動けなくなります。
このままずるずると人数差+カバーキルが取れない状況を作られBサイトは壊滅、ZETAがラウンドを取ります。
情報が欲しかったためReita選手は動いたのでしょうが、1人行動はハイリスクハイリターンですので1人相手を倒せて有利だった状況でやるべき行動ではなかったと思います。
ラウンド9(DFMエコラウンド)
DFMのTO後のラウンドでZETAはお得意セットのショートからヘブン抜けセットをみせました。ただDFMはミッド多めに固めていたので運が悪かったとも言えます。
ガーデンのキル+ショートの取り返しの阻止、2つのキルで勝負ありのラウンドでした。
3ラウンド続けてDFMはまともにカバーキルが取れていない状況です。
ラウンド10
初期配置としてDFMはA3・M1・B1、ZETAはM3・B2となっています。
この後DFMはAメインを二人で詰める素晴らしい動きをします。
Aメインをつめ、後続のキルジョイを狩れた時点でZETAはおおよそB攻めしかできません。ということは4人がBサイトを全力で取りに来るということで、ZETAの判断は速く最速でBにラッシュを仕掛けました。
そうなると相手4人に対してキルジョイは1人で戦うことになり、ソーヴァのカバーも期待できず倒されてしまいます。
この場合DFMの選手はZETAの選手より速く
・サイト内にソーヴァが入り、お互いがカバーをしながら戦う。
・いったんサイトを明け渡し、ソーヴァKAYOウルトで取り返す。
この2つのどちらかを選択し、行動しないといけません。
このラウンドはZETAの判断の速さが勝負を勝ちに繋げ、対応できなかったDFMが負けたラウンドでした。
ラウンド12
ZETAの素晴らしい状況判断とゆさぶりが見れたラウンドになりました。
初期配置はDFMがA2・M0・B3、ZETAはB5です。完全にラッシュの構えですね。
最初のラッシュはDFMが前目で見事に止めます。ただこのあとのZETAがすごかった。
ラッシュ失敗の直後、ZETAはBメインに2人残しAショートにアクションをかけ相手を陽動します。この際DFMの判断ミスとしては全員でAに寄ったことでしょう。
これはPAC・EMEA圏を見ていても思うのですが、ラッシュは3人いれば止まります。というか3人で止めないといけません。
DFMはソーヴァにミッド抜け、ジェットにBを任せてAは残りの3人で守らなければいけませんでした。これは焦りと今までのZETAの勢いある攻めの影響ですが、それにしても極端によりすぎてしまいました。
前半総括
DFMはラウンド5以降まともにチームプレーが出来ず、ZETAの素早い判断に翻弄され続けてしまっていました。背景にはもちろんZETAの緩急も素晴らしいですが、DFMの小さな情報共有ミスや判断の遅れ、選手の立ち位置など改善点が多々見られる守りだと感じました。
ZETAは前半判断の速さや柔軟性、アグレッシブさなどすべての面で素晴らしいプレーだったと思います。
後半 DFM Attack ZETA Defence
ラウンド14(DFMセカンドバイ)
DFMはラウンド差がつきすぎているためセカンドバイをし、Aサイトにラッシュをします。
DFMがサイトを取り切った段階で人数差は互角、ただZETAはここで決めに行こうとジェットKAYOでヘブンを降りようとします。
ZETAは相手のプラントタイミングで攻めるか、Lazさんの寄りを待ってドローンと共に取り返すかの2択だったと思うのですが、勝ち急いだもったいないラウンドになってしまったように思います。
ラウンド16
定番BセットのラッシュをDFMは行います。
見事に刺さりサイト中のキルジョイ→ソーヴァと順番に倒せ、カバーに来ようとしたジェットも防ぎZETAをキープに追い込みます。
DFMのきれいなラッシュだったといえるラウンドでした。
ZETAとしてはAラッシュ、Aショートラッシュ、Bラッシュ、B+ミッドラッシュを体験したため次から対策をしたいところ。
ラウンド18
DFMは一拍置いてのAラッシュ、ZETAはギャンブルに出ます。
ZETAは開幕Aメインをパラノイア+ジェットで詰め、それをカバーするようにソーヴァのウルトを使います。ただこれは相手が引き気味だったため刺さらず、キルジョイウルトのあるDFMとしてはおいしい結果になりました。
ラウンド差にそれなりに余裕があるからなんでしょうか。ただここを取られ、ZETAは次エコラウンドと考えると11-8まで見えてしまいます。焦っているようにも見えるラウンドで少しもったいなかったと感じました。
ラウンド20
DFMは開幕Bラッシュ、ZETAはA3・B2配置を取っています。
ただ今回はDFMのラッシュは止まり、お互い4対4となりいったん流れが止まります。
4対4と人数が同数の場合基本的には攻めが有利であり、守り側は極端な配置を取ることが多いのですが、ZETAは今回手広く守ろうとしてジェットKAYOをAに戻します。
しかしDFMは特に移動することなく、ドライでB中に入りキルジョイを倒し、SugarZ3ro選手のスパーカバーがあったもののサイト内を取られ、相手選手の情報が無くなります。ZETAの選手たちはお互いにカバーできる状況を自ら捨ててしまったためピンチになりました。
個人的にはSugarZ3ro選手もサイト内に入ってパラノイアを使えればチャンスはあったと思いますし、なんとかモク抜きできてよかったもののもう少し良い状況で戦えたと思います。
ただこの場面に関してはAnthem選手が心臓もプレイも強かった。
ラウンド21
DFMは一拍置いてのAラッシュ、ただ今回はZETAの動きは完璧でした。
Bサイトを見ていただくとわかる通り、メイン侵入を確認するタレットがあります。ZETAはこれが壊されないことをきっかけにAに全員固めます、なんせDFMはラッシュ以外したことがないのですから。
そしてロックダウンもあるので被害とスキルを抑えながらサイトを相手に明け渡します。
相手KAYOウルトの前にロックダウンを置けた時点でDFMに壊すすべはなく、ヘブンをつめてきた相手も見事に捌ききり久々のラウンド取得となりました。
ラウンド終始キルジョイのおかげといってもいいラウンドでした。
後半総括
前半の終わりからは考えられないほどグダグダの展開になってしまいました。ZETAの防衛面も勝ち急いでる感があったり、相手の動きを深く考えすぎたのか対応に戸惑いまくってました。
そして今回の問題はDFMでしょう。ラッシュ以外の攻め方がありません。勝ち急いだZETAのミスがあったからこそここまでラウンド差をつめれましたが、ほかのチームに通用するとは到底思えない戦術です。実際最終ラウンドでやられたように基本ラッシュは3人いれば止めれます。どうみてもレパートリー不足でこの先が心配になるアセントでした。
MAP1 ASCENT 感想・考察まとめ
楽しみにしていた試合でしたが個人的にはこのマップの内容は今リーグ最低の試合といってもいいような気がします。ZETAに関して、攻めはとても感触が良くDRX戦と比べてバリエーションが増えて(見れて)進化を遂げていると感じたり、スロースターター感が否めないのでそこまで悲観的ではないですが、DFMのアセントはちょっと現状だと世界と戦えるレベルではないと感じます。
カバーキル意識や詳細な情報の共有面などでやっぱりZETAとは差があるかなと感じましたし、戦術の種類や連携面など改善点が多々見られる試合になったんじゃないかなと思います。
ただやはり日本チーム同士の試合は独特の緊張感があって、見てる側もピリピリしながらみれてとても楽しかったです。
ということで本日も最後まで読んでくださったかたいらっしゃたらありがとうございます。MAP2は時間ができ次第やりたいと思います。
筆者Twitter:まがしき @esportsmagasiki
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