一匹の怪物。運命共同体の青い君。
これは、この先同じ困難にぶち当たった私が長く苦しまなくていいように、解決の糸口になるかもしれない前例を書き留めておこうというnoteです。自分向けなので、一部表現が少し読み辛いかもしれません。
一か月前のある日。
特にいつもと変わらず落書きをしていたら、その描きかけの絵に身の毛がよだち、思わず鉛筆を放り投げて、机に背を向けて頭を抱え震える事態となってしまった。
前触れもなく、前例もない。想定もしていなかった。まるで隕石が落ちてきたような、生活を唐突に引き裂いた異物。
この時、私は何を感じてしまって、何が起こったのか全く分からなかった。今も分からない。
それから、先週まで、自分の絵を見るとなぜか恐怖心が湧いて吐き気がする状態が続いた。
本能的に無理。
自分の絵の未熟な部分にもどかしくなることはあれども、基本的に自分の絵は好きで、幼い頃の拙い絵でもずっと変わらず好きでい続けていた。だから、その両極の感情が生まれたと同時に、私の創作に割かれていたあらゆる機能が強制停止した。頭が真っ白になる。それが相応しい瞬間だった。
今思うと、この強制停止はよくできていた。
受け入れることのできないほどの重大な感情には、ただ侵されて殺されていくしかできない。この手のものは制御なんてできたものじゃない。生まれたが最後、私の中の食えるものが無くなるまで食い尽くす怪物だから。
だから、強制停止というより、強制隔離の方が感覚的には近いかもしれない。
今回の怪物の被害に遭いそうな創作をしている私が私から引き剥がされた。私の世界をまるで他人事のように見ていた。自分の描いた絵も考えた設定も、もやがかってすごく遠くに、手が届かぬ遠くにあった。
勇敢な私が描いたそばから絵を怪物に食い荒らされて泣きそうになっているのを、半分以上寝ながら薄目で見ていた。
ちなみに、この強制隔離の影響は凄まじかった。ここ10年ほど、私の殆どの行動の起点、動機は創作と強く結びついていた。
だから、何をすればいいか分からなかった。今の職場も、次にやりたい創作で欠けている情報を補えそうだという理由で決めている。だからこれを機にと、真面目な話―例えばこれからの人生についてなんて考えようとしてみたけれども、何を考えることもできなかった。隔離シェルターの外側に残される私はびっくりするほど粗末なものだった。
創作以外のものを疎かにしてきたわけじゃない。片っ端から全てが創作に吸い込まれていくからこうなってしまっていただけで。創作自体も十分怪物の要件を満たしている。
勇敢な私の犠牲が実ったのが先週だった。
創作に関する機能がほぼ停止している中、自キャラのひとりだけをそのシェルターから引っ張り出して、すっからかんのエネルギーをぼろぼろとかき集めながらその子ひとりを描き続けていた。スィンくんという青い髪の男の子。彼を選んだ理由はふたつ。彼が大好きだったから。そして、彼を理想通りに描けたことが無かったから。
10年以上前、当時の私が好きな要素を全部詰め込んで作ったキャラクター。ただ、理想てんこもりの高嶺の花状態で、100%思い通りに描けた試しが無かった。彼なら描けなかったとしてもそれが通常だから余計に落ち込まなくていいだろうとの考えだった。それに、もし彼がそれなりに満足に描けたなら本当の回復だと確証が持てるとも思った。なにより、どうせ同じ苦しむなら、好きな子と苦しみたかった。
(だから、もし私が後に同じような怪物に襲われた時には彼を描くと良い。)
もしかしたら、この怪物は時間が解決していて、その私は無駄に傷ついて苦しんだだけかもしれないけれども、久しぶりに視界に入れても吐き気のしない絵が出来上がった日には、それをずっとうっとり眺めていたくらいに夢見心地だった。きっとこの清々しさは、解放感は、安らぎは、勇敢な私が傷ついたからこそもたらされたものだろう。この尊い感情はきっとこの先何かの節に私を救うと思うので、引き出しの手前の方に仕舞っておこうと思う。
強制隔離のシェルターはまだもう少し開かないようだ。怖がりな私がまだ納得していないらしい。勇敢な私にはもうしばらく、スィンくんだけを描く日々を続けてもらおうと思う。
ちなみに原因のようなものに見当はついている。ずっと怪物だと知らずにここまで来た創作が根っこで笑っていた。無意識に上手く付き合えていたこれまでを再構築しようとしている途中で、これだけ生活に重きを置いてきた創作を少し横によけていたのが気にくわなかったらしい。お前と添い遂げる為にしていることだから、少し大人しくしておいてくれ。
それはそうと、怪物は最初からこいつ、ただ一匹だけだったということか。
これが、勇敢な私と一緒に苦しんでくれたスィンくんです。
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