男女ともに「子どもの近くで働く」選択肢を。コロナ禍での働き方変容と子育て
コロナ禍で男女共に働き方が大きく変わった、2020年
こんにちは。マフィスを運営する、オクシイ株式会社代表を務める高田麻衣子です。
2020年12月、マフィスは6周年を迎えました。
馬事公苑に最初の施設をオープンして以来、横濱元町、北参道、名古屋へと施設数を増やしてきましたが、今年はコロナの影響を受け、大きく働き方が変わった年でもあり、マフィスのユーザ層にも変化が見え始めています。
以前は「ママのためのシェアオフィス」と銘打っていたこともあり、ユーザの大多数がフリーランス、かつ女性でした。しかし、コロナ禍で企業勤めの方のリモートワークが急増したこともあり、「お子さまが保育施設を利用している場合は、ご夫婦同時のデスク利用も可」としたことから、ここ最近は男性ユーザや企業勤めのリモートワーカー、夫婦でご利用くださる方が急増し、お子さんも保育施設を利用するため、一家でマフィスに来てくれる方もいらっしゃいます。
会社員がリモートワークの一環で仕事する場にシェアオフィスを選ぶ形も増えつつあり、お子さんが散歩に出る様子を、ご両親が窓から眺めている姿には、子どもと距離が近い安心感と喜びを女性だけでなく、男性も享受できるようになったことを実感します。
産休・育休から復職したての頃、罪悪感を覚える女性は少なくありません。仕事をするためには離れざるを得ないけど、ずっと離れていたいわけではない。子どもの可愛い時期を見られないもったいなさや、泣く子どもを見て感じる複雑な気持ち、でもやはり仕事もしたいと保活をして、子どもを保育園に預けている現状もあるでしょう。片や、職場でも空気を読みながら、早く帰らなくてはいけない、残業できないがゆえに肩身の狭い思いをしているかもしれません。
私自身、会社員として復職したあと、移動の時間が非常にもったいないと感じていました。なぜ朝8時から夕方の6時まで子どもを保育園に預けるのかって、往復1時間のバッファを取らなくてはいけないからです。
子育てと仕事を並行する上で、働く場所と時間が大きな障壁になっていることを課題に感じていましたし、時間は働く場所で解決できるのではないかと考えていました。かといって、在宅で仕事をしていると、共働きであるにも関わらず、家事育児を自分が一手に引き受けなければならないのではないか、自宅で集中できるのだろうか、という不安もありました。
会社に出勤しなくても夫婦同じ時間に家を離れられればよいのではないか、そのためには家の近くに効率よく仕事できる環境があれば…、家と保育所とオフィス、この三点を結ぶ三角形が小さければ小さいほど、仕事と子育てはしやすくなるはずだと郊外型のシェアオフィスというマフィスの原点が構想として思い浮かびました。
上記の理由から、「近くに住宅地がある」というコンセプトを重視しており、どんなにオファーがあっても、オフィス街にマフィスを作ろうと思ったことはありません。
プロフェッショナルとして働きたい、と願う人たちのための施設に
とはいっても、ここまでは全く順風満帆ではありませんでした。周囲の人たちからは散々「お金の匂いがしない」「事業にするには5年早い」「保育施設つきのシェアオフィスなんて行政がやることで民間がやることではない」と反対されましたし、実の父からは「お前の給料をどこから出すつもりだ」とも言われました。
法の解釈の合間を縫って、もっと簡易な施設を作ることもできたかもしれません。それでも事業計画書を作成して、東京都の青少年局に相談していくなかで、保育施設として届け出ない選択肢はもはやありませんでした。
同じ施設にいても、親は子どもから意識を離さないと、仕事に集中することはまず不可能です。見守りサービス程度では、子どもは親から離れないでしょう。それは家で仕事するのと変わらないし、私だったらそのレベルのサービスにお金を払うことはしない。
ゆるい腰かけ感覚ではなく、プロフェッショナルとして働きたい、だけど子育てもしながら自分たちにとって良いバランスで仕事も家庭も大事にしたい。そんな人の気持ちや苦労を私たちが埋めてあげられたら…というのが当初からの想いです。
企業主導型保育事業の補助金を活用して元町や北参道にも施設をオープンし、施設運営会社として多店舗展開を進めてきましたが、創業時からこのコンセプトは変わっていません。
子育て世代の変化と、私自身の変化
一方で、この5年で数々の変化を感じてきました。
子育てが夫婦で共有されるようになったことはその1つです。マフィスにお子さんを預けているご家庭でお父さんがデスクを利用するのも当たり前の光景になったし、保護者会には、お父さんだけが来る家庭、お母さんだけが来る家庭、夫婦で来る家庭がどれも同じくらいの割合でいらっしゃいます。
明確にいつ潮目が変わったという記憶はないのですが、5年前には存在しなかった光景が今はある。子育てに関与したいという男性が確実に増えています。
私の変化はというと、会社員時代と比べて幸福度はレベルアップしました。
元々、私は自己肯定感が低く、収入や学歴、社会的地位など色んなことにコンプレックスを抱き続けていました。
だけど、経営者になってからは、これまで親交のあった会社員の人々だけでなく、フリーランスで働く人、幾多のジャンルの経営者など新たな出会いが増え、価値観が大きく変化しました。
特に新たに出会う経営者の方々は一代で会社を大きく築いた人から、何百年も続く老舗を継ぐ人まで様々で、もはや自分と比べてどうこうというレベルですらありません。みんなそれぞれの立場で様々な苦労をしています。この出会いが私の価値観を変化させ、「人は人、私は私。」と自己受容することができました。子育てで重視したいことも変わったし、善し悪しではなく、独立したことが「私には合っていた」という言い方がしっくり来るようになりました。
45歳が人生の終盤だった数百年前からすると、人生100年時代なんて考えられないでしょう。しかし私もまだまだ元気ですし、定年を意識して仕事をしている場合ではありません。
生活のために稼ぐことももちろん大事ですが、自分の価値観を体現する手段、ツールとして仕事をしている人たちのために、マフィスはこれからも事業を続けていくのだと思います。
子どもの近くで、プロフェッショナルに働く選択肢を当たり前に
2021年4月には横浜市に認可保育園「マフィス白楽ナーサリー」が誕生することもあり、チャイルドケアにはより力を入れていこうと考えています。現場のメンバーに強く伝えているのは「脱・託児所イメージ」。周囲からの見られ方も、現場の意識も、より一層私の描く理想の形に近づけていきたいと思っています。
通常、保育園というのは仕事をする人に対して、子育て面のサポートをする場ですが、お預かりしている間の子どもたちをケアするだけで、彼ら、彼女たちが幸せになるわけではないことも私たちは知っています。保育園で過ごす時間以上に、家庭での親子の関わりは彼らの人生の幸福度に大きな影響を与えます。だからこそ、私たちは子どもたちだけではなく、ご両親が心身ともに健康であること、自信をもって仕事にも子育てにも取り組めていることがとても重要だと考えています。
子どものお迎えに行ったときに、保育士さんが自分の体調を気にしてくれたり、仕事のことを聞いてくれたりしたことで、安心した経験のある人も多いのではないでしょうか。
ご両親のお仕事や悩みごとへの理解やコミュニケーションも重視していくことが、保育士個人だけではなく、園全体のコンピテンシーとして標準装備する。これをマフィスのオリジナリティとしてこれからもより重視していきたいです。
認可保育園のスタートにあたって、このところよく聞かれるのは「マフィスってオフィス付きの保育園なんですか?それとも保育園付きのオフィスなんですか?」という質問。
これは会社としての根幹の問いでもあります。私は誰の役に立ちたいのだろう、どの部分を解決してあげられるのだろうと考えたとき、子育てしながら働きやすい環境を求める人に応えたいというのが、当初からの想いです。
決して、保育園運営事業者を目指していたわけではありませんが、「シェアオフィス付きの保育園」と謳った方が、これからのニーズにはハマりやすいのかも?と思案している最中です。
いずれにしても保育の質はより向上させていきたいですし、まず既存施設で目指すのは、2歳児までの施設でありつつも、皆さんが満3歳の3月末ぎりぎりまで使い続けたいと思ってくださる施設です。
来春4月に新しく出店する「マフィス横濱白楽」の隣には、認可保育園「マフィス白楽ナーサリー」も開業します。ここは就学直前までお子様をお預かりする保育園ですので、復帰後も親が子どもの育ちを感じながら仕事ができるだけではなく、子どもが4,5歳になった時に、お父さんとお母さんが仕事している姿を近くで見られることで、親の仕事に興味と誇りを持ち、その子自身のキャリア感にも良い影響を与える場所にすることを目指しています。
子どもの近くで働く選択肢を当たり前のものにし、親と子どもたちそれぞれの生活が充実したものでありながらシームレスに繋がる、そんな世界観をこれからもどんどん増やしていくつもりです。