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アスリートが運動指導者として活躍する為に必要な学びを提供するメディアです。

ここ最近は「運動生理学」の分野の基礎中の基礎を学んできました。

6月に入り、昨日は箸休め記事を書きましたので、心機一転(?)久しぶりに「機能解剖学」に関する学びを進めましょう。


深層外旋六筋を覚える理由

今回のテーマである「深層外旋六筋(しんそうがいせんろっきん)」とは、テストでよく出てくるワードです。

こういったものが何故テストで出題されやすいのかというと、それはズバリ問題として作りやすいからですね。

深層外旋六筋は読んで字のごとく、6つの筋で構成される「股関節を外旋させる」筋群ですから、「6つ答えよ」という問題を出せば6つ分の設問が完成します。

問題の作り手としては楽な話です。

しかし、話はそんな単純なものではなくて、何故6つの筋をまとめて群とした呼び名が与えられているかということです。

何故なら、大切な働きを持つ筋群だからです。


例えばボールを投げる時やバッティングをする時、股関節は内旋位から外旋位に向かいます。

簡単に言うと、内に捻られた股関節が、その捻られた反動で外向きに捻られて回転運動を生み出すのです。


しかし、運動をしていない人からすると、例えばあぐらや脚を組んで座る姿勢を長く続けることで、この深層外旋六筋は縮んだままになってしまいます。

簡単に言うと、大腿骨が外に捻られた状態でストップしてしまって、「ガニ股」の原因になるのです。

「ガニ股」にも色々な種類があるので、全てがこの理由ではないのですが、深層外旋六筋が縮まったまま硬くなっている人はとても多いです。


この様に、スポーツのパフォーマンスにも大きな影響を与えると同時に、日常的などうせエラーにも関与する筋群だからこそ、「とりあえず覚えろ」とテストに出題されることが多いのだと思われます。


深層外旋六筋を構成する筋

読んで字のごとく6つの筋の総称が「深層外旋六筋」です。

まずはそれを構成している1つ1つの筋の名前を見ていきましょう。


・梨状筋(りじょうきん)

・上双子筋(じょうそうしきん)

・下双子筋(かそうしきん)

・外閉鎖筋(がいへいさきん)

・内閉鎖筋(ないへいさきん)

・大腿方形筋(だいたいほうけいきん)


さて、ご覧頂いたように、梨状筋と大腿方形筋以外は、名前が上下もしくは内外と対になっています。

ですから実質的に覚えるのは3つだということが分かるでしょう。

ただ、上双子筋と下双子筋、外閉鎖筋と内閉鎖筋はもちろん別の筋であって、神経支配も違うので、厳密に言えば分けて覚えた方がいいのでしょうが、そんなことを言う前に、まず名前を覚えるのが先です。

まずは、名前を覚えましょう。


それから、これらの筋は「深層」というだけあって、直接触ることは出来ません。

梨状筋には比較的簡単にアプローチできますが、それでも直接触っているわけではありません。

このようにに、直接アプローチできない為にイメージしづらい筋だからこそ、運動指導者は的確なアプローチが出来るようになるべきですね。

しかし、何度も言いますが、細かいことを覚えるのは後の話です

まずはその存在や名前を知っておきましょう。


筋群を分けて考えるのかどうか

ここから先は少々脱線する話ですが、かなり重要です。

この深層外旋六筋も、肩のインナーである「ローテーター・カフ」や、「骨盤手筋群」、その他にも、「脊柱起立筋群」や「内転筋群」さらには「腹筋群」と呼ばれる筋群が存在します。

それぞれを構成する個々の筋が、起始と停止を別々に持つのは間違いありませんし、神経支配が異なれば細かく言えば全く別物とも言えます。

しかし、スポーツの場面や日常動作、或いはトレーニングの時に、それぞれが別々で働くことはあり得るでしょうか?

確かに、主立って働く筋はありますし、何かしらの原因で少し動員されにくくなっている筋はあるでしょうが、それぞれの筋は最終的に同じ仕事をする為に仲良く働いてもらう必要があるのです。

例えば今回学んだ深層外旋六筋も、「梨状筋だけ働かせる」なんて馬鹿げたことは必要ありません。

最終的にはこの6つのチームが共同して股関節を外旋させてくれればよいのです。


歩く辞書になれても……

実はこれは筋群というよりは、身体全体に言えることで、「どこそこの筋だけを働かせて何とかする」という教科書を見たのままの頭で、グラウンドに出てきたようでは運動指導はできません。

もし動作エラーが発見されたとして、その原因が細かい話だったとしても、最終的にはもとのダイナミックな動き、実際の動作へ戻っていかなくてはいけません。

機能解剖学を学ぶ上でよく陥りがちな失敗は、筋の機能や起始停止や神経支配を完璧に覚えて、歩く辞書のようになれているにも拘らず、上手く指導できないということなのです。

これは多分、実際に身体を自分で動かした経験が少ない人が陥っているパターンだと思います。

アスリートの皆様は自分の体を自分で動かすのは間違いなく得意ですから、細かい話を学んだら、その細かさに集中するだけではなく、「あ、だからこうやって動くのか」という動きへと頭を変換させていってください。

そうすれば、立派な指導者になれるはずです。


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