SAIDと運動指導者としての在り方
アスリートが運動指導者として活躍する為に必要な学びを提供しているメディアです。
今回はこれまでと少し趣向を変えて、「トレーニングの原則」について書いていきます。
そしてそこから見る、運動指導者の在り方について、私なりの考えを述べてまいります。
トレーニングの原則とは?
トレーニングには原理・原則があり、それに従ったプログラミングが効果を発揮すると考えられています。
原理や原則の名称そのものは、様々な著書やネットで拾えるものだと解釈していますので、こちらの記事では割愛します。
大まかにいうと、
個々の(個別性)、目的に見合った(特異性)、適切な負荷を(過負荷)、少しずつ(漸進性)、継続的に(継続性)、なるべく全面的かつ(全面性)、意識的に(意識性)、トレーニングしましょう。
といった感じです。
特異性の原則
ここで運動指導者の頭を悩ませる奥深いテーマが「特異性」というお話です。
人間の体は与えられた負荷(刺激)に見合った反応を示す、という意味の「Specific Adaptation to Imposed Demands」の頭文字を取って「SAID」と言う時もありますので、頭に入れておきましょう。
Specific……明確な
Adaptation……適応
Imposed……与える
Demands……要求
簡単に言うと、「目的に見合った手法でトレーニングしましょう」ということなのですが、この手法の選択が非常に奥深いのです。
どんなプログラムを提供するか?
例として、「速く走る」ことを目的としてあなたを訪ねてきた選手がいたとします。
その時、あなたならどんなプログラムを思いつくでしょうか?
このプログラム構築のセンスが問われるのです。
まず、この選手が抱える問題点が何かを明確にしないといけません。
例えば、明らかに筋力が不足しているのであれば筋力アップが必要で、あまりにも柔軟性がないのであればそれを向上させる必要があって、はたまた姿勢が悪いのであれば姿勢を正す必要があります。
この判断は、この選手が抱える問題に対するアプローチであって、間違っていないのですが、どちらかというと「個別性」のお話です。
つまり、最も大切なことが、「速く走るにはどうしたらいいか?」ということであることを忘れてしまいがちなのです。
確かに、問題となる体力要素があれば、それを適切なレベルに持っていくのが大切ですが、それよりも大切なことは、それがちゃんと「速く走る」という目的に繋がるかどうかなのです。
例えばスクワットが体重の2倍持ち上げられるようになっても、「速く走る」ことができなければ、その努力はただスクワットの挙上重量を高めただけなのです。
最も大切なことは、どうやったら「速く走る」ことができるかを伝えることですし、結果として「速く走る」ことができたか、これに尽きます。
場合によっては専門家に任せよう
他にも色んな人がいます。
速い球を投げられるようになりたい、キック力を高めたい、マラソンのタイムを縮めたい、長く泳げるようになりたい、ゴルフが上手になりたい、健康的なライフスタイルを構築したいなど、運動指導者を訪ねてくる人は十人十色です。
その千差万別の対象に対して、猫も杓子もスクワットではダメなのです。
時には、自分ひとりではどうにもならないこともあります。
特に、経験のないスポーツをしている人を担当する時は、そのスポーツに詳しい人とタッグを組むことも大切です。
間違ってはいけない
その上で、「ここの筋力が足りないから」という理由で、それに見合ったレジスタンストレーニングを組むのは恐らく正解でしょうが、ここでも間違ってはいけないのは、「筋力」を高めることが目的なら、「筋力」を高める為のトレーニングを提供しないといけないということです。
気付いたら「筋肥大」だけ起こっていて、「筋力」の向上が見られなかった、なんてことはあってはならないのです。
運動指導は時として、選手生命を左右し、人生の在り方を左右します。
その命や意義を取り違えてはいけません。
これは非常に奥深い問題ですが、運動指導者を目指すということは、そういった側面があることも忘れてはいけません。
ですから、運動指導者は謙虚であるべきで、真摯に学び続ける必要があるのです。
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