「前田さんアップ」の怪~ウォーミングアップを再考する
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令和5年4月も残すところ1週間。
週末には各地で私が専門としてる陸上競技の試合が開催されています。
昨日も試合に出場する契約選手の帯同で陸上競技場に行っていました。
なかなか週末の気候が安定しない4月ですが、「まだ4月」です。
やるべきことをやりましょう。
「前田さんアップ」の怪
有難いことに最近は契約選手だけでなくスポット的に指導する選手が激増しておりまして、その選手たちの中で「前田さんアップ」たるものが流行している様です。
私が考案したネーミングではないですし、誰が言い始めたかは定かではありません。怖いですね。笑
最初は「なんやねんそれ」と思っていましたが、確かに私がお伝えした方法をやって頂くので、何とも明朗なネーミング。
私が指導している選手は短距離選手が多いとはいえ、長距離選手もおられますし、跳躍や投擲の選手も指導しています。
またゴルフや、ダンス、演奏家にも身体の使い方を指導する機会があります。
しかも皆さん競技レベルがバラバラです。
また「趣味でやってます」という人から「人生をかけてます」という人までいるわけですね。
そして普段の生活が違いますから、練習に割ける時間が違います。
こういった理由から「前田さんアップ」というのは、人それぞれ違います。
自ずと似た様なことをやることにはなりますが、人それぞれなのです。
同じなのは「考え方」。
「ウォーミングアップとは何ぞや?」ということを理解することが大切です。
今回の記事では「ウォーミングアップとは何ぞや?」ということを再考して参ります。
ウォーミングアップの目的は?
まずウォーミングアップの目的を考えていきましょう。
読んで字のごとく「ウォーミング」すなわち温めることが目的です。
なにを?そう、筋の温度ですね。
筋の温度を高めることがウォーミングアップの目的です。
筋の温度を高める方法はいろいろありますが、身体を動かすことで温めることが一般的です。
走ったり、自転車漕ぎをしたり、縄跳びをしたり、踏み台昇降をしたりします。
また目的が筋の温度を高めることですから、その日の気温によってもやることが異なります。
冬場にやっているアップを夏場にやってしまえばそれだけでバテてしまいますし、逆であれば筋は冷えてしまいます。
筋が温まり、体液の巡りが善くなり、筋の弾力性が向上するようにイメージして取り組めばよいかと思います。
またチームで練習する際、共通プログラムとしてのウォーミングアップが存在することが良くありますがこれは注意が必要です。
特にチームメンバーの体力レベルにバラツキがある場合、ある人にとってはウォーミングアップでも、ある人にとってはバテてしまうほどの運動量になっていることがあります。
指導者であればこの辺りは留意しておかないといけませんね。
専門的ウォーミングアップ
ここまで説明してきたウォーミングアップは「一般的ウォーミングアップ」と呼ばれます。
次に取り組むのが「専門的ウォーミングアップ」です。
今から走るのであれば走る為に、投げるのであれば投げる為に、打つのであれば打つ為に必要なことをします。
例えばダッシュする人はいきなりダッシュしませんし、ピッチャーだっていきなり全力投球するわけではありませんね。
簡単に言えば、その動きをゆっくりから速い動きにしていくことです。
専門的ウォーミングアップの目的は、やろうとしている動きを的確に(怪我することなく)出来るようにすることです。
やろうとしている動きがうまく出来ないのであれば、それは専門的ウォーミングアップに問題があるかも知れません。
陸上競技であればここは「ドリル」を呼んでいる人が多いですが、「ドリル」についてまとめた過去の記事もございますので、併せてお読み頂くと理解が深まるかも知れません。
今やっているアップは適切?
さて、ここまで読み進めて頂いたところで、ご自分の(あるいは指導している選手の)ウォーミングアップは適切に出来ているかを考えてみましょう。
「何故そのウォーミングアップなのか」が説明できるでしょうか?
多くの人は、昔からこれをやっているとか、何となくやっているとか、そんな風にしか答えられないものです。
それではせっかく取り組んでいるのにもったいないことです。
目的と手段は常に整合性が取れているべきです。
速く走りたいのにそうならないことをしてるなんてことはないでしょうか?
筋の温度を高める為なのか、その次のステップとして取り組むのか、色々考えていくと「何故こんなことをしているのだろうか」となるものです。
最適なことは何かを常に考えながら指導をするのが指導者の仕事ですね。
走る為のアップについて考えてみる
私が専門としている走りに関しては、一般的ウォーミングアップとして歩いたりジョグをしたりすれば、それ自体が専門的ウォーミングアップの重なってくることになります。
多くの人は「アップ行ってきます」といってジョグをするでしょう。
長距離選手ならそれは実際の競技でやることとほとんど同じですし、短距離選手もそのまま重心移動距離を増やしていけばそれは流しになって、いずれ短距離の走りに繋がっていきます。
私は指導の際、このジョグ、そしてその前段階である歩きの動きを大切にします。
その為にはちゃんと立てなくてはいけません。
非常に地味な取り組みですが、それに比べて派手な取り組みをしていて上手くいかないのであればやるべきことはそういうことだろうと思います。
また専門的ウォーミングアップでよかれと思ってやっていることで、余計な動きを入力している人も少なくありません。
「ハードルドリル」と呼ばれるものの多くはその類の代表格です。
何故ハードルドリルをするのでしょうか?
股関節の動きを良くすることが目的だとしたら、ハードルがなければそれを達成することはできないのでしょうか?
接地に関して何かをしたいというのであれば、なぜわざわざハードルを使うのでしょうか?
もちろん、真っ当な理由がある場合もあるでしょう。
しかし私に寄せられる報告の中にも「ハードルドリルして脚を痛めました」というものがあります。
本末転倒どころの騒ぎではありませんね。
上手く走れないのであれば、専門的ウォーミングアップに問題がある可能性があります。
専門的ウォーミングアップの手順は、ゆっくりから速くです。
走るという速く動く行為に問題があるのであれば、その動きの速さを遅くして問題点を見つけていく必要がありますが、そういったことは出来ているでしょうか?
「ハードルドリルが下手だからダメなんだ」という謎めいた発想になってしまってはいないでしょうか?
またやりたい動きがどうしてもできないのであれば、それは身体の状態に問題がある可能性は非常に高いと思われます。
ですから、まずは身体を調整する必要があるということを常日頃申し上げている次第です。
身体の調整に関しては以下の記事にて解説をしています。
(※5000円の動画ですがある方からは「8000円以上のパーソナルトレーニングセッションに匹敵する価値がある」とお墨付きを頂きました)
まとめ
ウォーミングアップというのは非常に大切ですが、その前にまず身体が整っている必要があるということですね。
そしてまずは筋の温度を高めるべく「一般的ウォーミングアップ」を行い、その上で適切な「専門的ウォーミングアップ」をするという考え方で取り組みましょう。
「前田さんアップ」というのは、そういった考え方で必要なことをお伝えした結果生まれた、オーダーメイドのプログラムということです。
かなり無駄なことに時間を使ってしまっている人は少なくありませんので、この記事で何か気付きが得られましたなら幸いです。
最後までお読み頂きましてありがとうございます。
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