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「両利きの経営」 その1

「両利きの経営」
チャールズ・A・オライリー
マイケル・L・タッシュマン
2019年2月28日第一刷発行

【所感】
イノベーション(変革)についての経営学の本です。経営学の理論が多く出てきます。
破壊的イノベーションを起こしてくれる会社に投資できれば、かなり有利なはずです。
・どんな組織が必要なのか、
・どこからイノベーションが生まれていくのか、
・社会へインパクトはどうか、
・会社の在り方はどうか。本当に強い組織を形成するにはどうするのか、
はたまた、
・会社での一個人の働き方まで、考えさせられました。
経営学の畑は触れたことなかったので、難しくも思えましたが、いい勉強になりました。

【NOTE】
 鉄鋼(ミニミル)、小売り(ネット販売)、医薬品(バイオ医薬品)、出版(オンラインニュースや書籍)、教育(MOOCs)、写真(デジタルカメラと写真共有サイト)、エンターテイメント(音楽やテレビ番組の配信)などの破壊的変化が起きてきた。

今日の世界では、変化の流れを逃がしたり、破壊的イノベーションに対応し損なったりすれば、企業はすぐ倒産に追い込まれてしまう。

 イノベーションとは、モノや仕組み、サービス、組織、ビジネスモデルなどに新たな考え方や技術を取り入れて新たな価値を生み出し、社会にインパクトのある革新や刷新、変革をもたらすこと。

「破壊的イノベーション」の特徴は、新しい顧客層の心をつかむ新しい製品やサービスの導入を通じて、新規事業を創造すること。

ライドシェア・サービスに対してタクシー。オンラインバンキングに対して伝統的な銀行。アマゾンとの競争にさらされたデパート。低コストの通信教育ポータルの台頭と大学機関。
 こうした脅威をどう捉えるべきなのか。どのような手が打てるのか。
業界や組織が破壊的変化に直面したときにリーダーが参考にできる「実用的な知見」がある。

リーダーは、
①「何をすべきか」と
②「どのようにそれを行うか」
の両方を理解する。
また、
③成熟事業で成功する組織を設計すると同時に、
④新興事業でも競争しなければならない。

成熟事業の成功要因は、漸進型の改善、顧客への細心の注意、厳密な実行。
新興事業の成功要因は、スピード、柔軟性、ミスへの耐性だ。
その両方ができる組織能力が必要。

「リーダー」は「成功の要(かなめ)」で、
「成熟事業と新興事業の成功要因の両方ができる組織能力」は「戦うための武器」となる。


ネットフリックスとブロックバスターの話

ブロックバスター
 リーダーのビジョン:DVDレンタル事業、好立地の店舗でのビデオレンタルという現業の成長と運営に集中。
ネットフリックス
 リーダーのビジョン:オンラインで映画サービスを提供している。インターネットにつながった全デバイスで動画配信を利用可能にする。

 ネットフリックスは、「両利きの経営」ができるリーダーがいた。
「成熟事業における既存の資産と組織能力を有効活用し、必要に応じて、それを新しい強みにつくり替えることに前向きで、かつ、実際にやってのける」(両利きの経営ができる)、リーダーがいた。

 ネットフリックスは、DVD郵送レンタルサービスを行いながら、動画配信に投資することができた。事業戦略は、価値、利便性、選択肢に軸足を置いていた。これを提供するためなら、値下げや新技術への投資も厭わない。新事業を成功させるために、既存事業との共食いも受け入れた。


■「深化」と「探索」の話
 企業活動における両利きは、主に「探索」と「深化」という活動が、バランスよく高い次元で取れていることを指す。
この両利きという概念は、1980年代から行われてきた認知心理学の研究から出てきたものだ。
 もともと人間の認知には限界がある。人間である以上、これは避けられない本質だ。広い世界の中で人間が認知できるのは目の前の一定範囲に限られ、そこにあるものだけで世界が構成されているように考える傾向がある。

 しかし、現実の世の中には、認知の範囲外にもっと多くの良い選択肢があるかもしれない。特に環境変化が起きたり、新しいことを試みようというときには、狭い範囲の考え方から脱してそれらの新しい知見に触れない限り、イノベーションを起こすことはできない。

 そこで、なるべく自身・自社の既存の認知の範囲を超えて、遠くに認知を広げていこうという行為が「探索」である。探索によって認知の範囲が広がり、やがて新しいアイデアにつながるのだ。「探索」は成果の不確実性が高く、その割にコストがかかることも特徴だ。

 一方、「探索」などを通じて試したことの中から、成功しそうなものを見極めて、それを深堀りし、磨きこんでいく活動が「深化」である。
「深化」活動によって、企業は安定して質の高い製品・サービスを出したり、社会的な信用を得て収益化を果たすことができる。

 不確実性の高い「探索」を行いながらも、「深化」によって安定した収益を確保しつつ、そのバランスを取って二兎を追いながら両者を高いレベルで行うことが、「両利きの経営」である。


■リーダーが「次の動きを決めるための最も基本的なロードマップ」(イノベーションの方向性の話)
3つのイノベーションの話。

 「深化」とはこれまで以上にうまく事業を行うこと。成功している企業は、時間とともに顧客理解を深め、より効率的に顧客ニーズを満たせるようになる。それを反映させて、戦略を進化させ、組織能力と公式な構造と文化の間の調整を組織全体で行う。
 しかし、競争がますます激化し、利益率が低下する中で、企業は新しい顧客セグメントに対応するか、高利益率を狙える「不連続的イノベーション」もしくは「アーキテクチュアル・イノベーション」を通じて、隣接市場へと移動しようとする。

①斬新型:製品やサービスをより速くするか、より安くするか、より良くしていく。
既存の組織能力を頼りに、すでにわかっている道のりを進む(「深化」)。
 例:次世代の自動車や携帯電話

②不連続型:既存の組織能力が無効になるような技術進歩を通じて改善が図られる。
通常、異なる知識基盤が必要となる。
 例:新聞社、紙媒体→コンテンツのデジタル配信。製造、機械式タイプライター→コンピュータでの文書処理。製造、機械式時計→クオーツ時計。
製薬、「低分子薬剤の開発」→「遺伝子工学やバイオテクノロジー(高分子)を用いた開発」。

③アーキテクチュアル型:一見するとマイナーな改善によって起こり、既存の技術や構成要素を組み合わせることで、既存の製品やサービスを大幅に向上させる。
通常、もともと小さな顧客セグメント向けに安価な代替品を提供することからはじまる。

 例:ミニミル(くず鉄を再利用した大型アーク炉)。
 ミニミルは当初、鉄筋しか生産できず、セメント用の補強材として利用されていた。製品コストは大手製鉄会社より20%低い。利益率が低い製品だったので、この市場を新参者に譲った。
 ところが時間とともに、ミニミルの技術は劇的に向上していく。ニューコアなどの新興企業は、総合鉄鋼メーカーよりもはるかに低いコストで、より高品質の鉄鋼製品をつくれるようになった。その結果、大手製鉄会社は次々と倒産した。


(とりあえず、ここまで出してみます)

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