KENさんのそれから。
昨年のUMBで千葉代表として戦ったのはVENMさんでもなく、輪入道さんでもなく、千葉たたき上げのもう一人のMC、KENさんだった。彼は常に千葉のシーンでは慕われ続け、そしてその日常が出たに過ぎない。
私は去年彼のことをこのように書いた。そして半年ほどが経ち、彼の心は「何一つとして」変わっていない。だが、確実に彼の「心」は確実に千葉のシーンで形となりつつある。
UMBで活躍してからの彼はどうだったのか?
前回大会ベスト8。あっという間に駆け上がっていった彼の日常は大きく変わることはないものだったに違いない。曲を作りそしてライブをし、バトルで様を見せつけていくその日常に決して変化などはなかったのかもしれない。
しかし、勝ち上がっていく中で確実に「千葉にはKEN」がいるというこの存在感が生まれ、そしてその重厚さは徐々に徐々にではあるが……形となって行ったはずだ。それは具体的にと問われると答えられる点があまりない。目に見えるものではないからでもある。
ただ、はっきりと存在はしている。事実彼は、今もバトルやライブでその様を見せつけ続け、地域のヘッズを唸らせ続けてきた。しかし、それだけでは足りない。さらなる高みを目指すチャレンジャーでもあるのだ。それがいかに難しいことなのかは説明するまでもないだろう。
一度頂点に上り詰めたからこそ、でもある。
UMB千葉予選準優勝
連覇のかかったUMB千葉予選。結果として優勝は彼の後輩にあたるCherryさんだった。あどけない顔をしていた彼を見ていたからこそこの優勝はとても感慨深いものとはなったが、それは別で書くとして……。
彼もまた格好いい大人の背中や生き様――すなわちKENさんやVENMさんたちのことを指すわけだが、それらを追いかけそして並びそして自らの手で引っ張って行こうと決意を固めたヘッズの1人だったように思う。
それがステージに立ち、そして同じ目線同じ立場でビートに乗りマイクを通して言葉を吐く。なんとも感慨深いものがある。KENさんは敗れはしたものの晴れ晴れとした表情で去って行ったように見えた(当然悔しかったとは思うし、私が見えただけで分かったような気はしていない)。
この時ふと思ったことが1つある。彼の曲「Ya Know My Steelo」のリリックの中に「見せてやるよ Like と Love の違い」というものがある。KENさんはラップを愛していた。そしてそれは今も変わらないだろう。さらに、彼には「愛していた」ものがあった。それは「人」だったのだ。
KENさんにとってラップというのは表現の場であった。自らの想いを伝えそして人との輪を作り出していくためのものだったのだなと。そのうえで彼が歩いてきた道の後ろから多くの後輩が現れ、そして今ステージに立ち続けている。
それはもしかすると前回の優勝とはまた違った、KENさんにとっては価値のあるものときっとなって行くだろう。
想いは受け継がれていく
LikeとLoveの違いに気が付き、それらを胸にマイクを握るMCたちは大勢いる。例えばそれは鷹芽さん(彼のバイブスはすごい。ぜひとも現場で感じていただきたいくらいだ)だったり、LASSさん(ビートメイクまでやる気さくな方である。いつもありがとうございます)だったり……。もちろんCherryさんだってそう(彼については別項目で)。彼らは格好いい人たちの背中を見て育ち、格好いい背中を今まさしく見せつけようとしている。
そんな時にふと思い出すのが、1枚の絵だ。アルゼンチンがワールドカップで優勝した時、こんな絵を見たのを思い出す。
すでに世界的な名声を得て王となったメッシと手をつなぐアルゼンチンのサッカー少年たち。その少年たちは大人となりメッシと背丈も似てそして横に並びサッカーをプレーする。
今、まさしくそういった「繋がり」が確実に広がっているのかもしれない。もちろん前からあっただろうし、もしかしたらそれはほかの地方も同じだったかもしれない。
ただ確実に言えるのは、今そうした輪を作り出したのはKENさんがUMB千葉予選で優勝したからこそでもあり、その今があるからこそ今日もこれからも。どんな舞台でも、彼はLikeとLoveの違いを見せていくはずだ。