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オードリータンさんに会うことになってよかった話

2024年11月16日は、私にとって大切な日となった。
それはオードリー・タンさんの講演に行くとなったことからはじまる。

オードリー・タン
台湾出身。2016年10月デジタル担当の政務委員に就任し、35歳は台湾史上最年少。コロナパンデミックで「マスクマップ」を形にして政府の信用を上げた。
14歳のとき、学校生活に馴染めず中学を中退。19歳のときに、シリコンバレーでソフトウェア会社を起業した。「世界の頭脳100人」にも選出。

一部Wikipedia


講演の参加目的は、ライター師匠の川内イオさんが、オードリさんに取材交渉を進める一つの手段だった。私はイオさんに同行した。経緯はこうだ。

9月のある日、FBをスクロールしていると「滋賀の大学にオードリー・タンさんが講演に来る」という投稿に目が止まった。この情報をすぐにシェア。

直後、イオさんから懇親会も含めて参加を申し込み、宿泊の手配も済んだと連絡がきた。私は思わず「はやっ!」と返信。このスピード感…。

これでオードリーさんと同じ空間にいれることが決まった。でも、直接話せるかどうかはわからない。場所の雰囲気、規模、オードリーさんの動きが全く予想できないから。最大の目的はオードリーさんの取材。そこに持ち込める確約もまだないから、普通なら躊躇してしまう。ところが、イオさんはハードルが何もないかのように飛び越える。行動力に驚く。チャンスがゼロでない限り、とにかく前へ前へ行くのがイオさんなのだ。

私は講演会(無料)しか申し込んでなかったが、イオさんのぐいぐい進む方向に、なんとかしがみついていこうと懇親会(有料)もポチ。どうなるかわからない未来に、私も足を踏み入れた気分だった。イオさんと一緒なら、なんとかなるかもと。

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それから2ヶ月後の11月14日、時間が経って、申し込みしたことも忘れかけていた。イオさんに再度「オードリーさんの講演行きますか?」と連絡した。会場は私にとって近くて慣れた場所だが、イオさんはこのイベントのためだけに東京から来ることになる。

「いくよ!」

かる〜い返事がきた。フフっとなった。またもやハードルをひょいひょい越えるイオさん。2日後のことなのに私はまだ何も想像がついていない。ただ、イオさんと待ち合わせの場所と時間は約束したので、これでまたオードリーさんに近づいた。

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イオさんが「ヨッ!」と来る前に、記念に撮った待ち合わせ場所


11月16日朝10時、会場の最寄駅にイオさんは本当に来た!早朝の新幹線で東京から現れたとは思えない、身軽さと、足取り。「ちょっと待ってね」とイオさんはベンチに座り、パソコンを開けて何かはじめた。5分くらい待つと、コンビニでプリントアウト。それはオードリーさんへの手紙だった。

「最後の仕上げをしたよ」と。

ギリギリだけど最後の最後まで妥協はしない。以前インドで取材した教育関係の話を絡めて、オードリーさんをなぜ取材したいのか、今後の教育に馳せた思いも綴ったと教えてくれた。

「暑苦しい手紙だ〜ハハ」

チラッと見えた手紙は、英文ぎっしりが数枚。「この手紙をオードリーさんに渡し、必ず読んでもらわないと」と私はグッと何かが固まった。

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オードリー・タンさん(中央)、安野貴博さん(右)

会場は思ったより小さめの場所だった。到着した時には他の人の講演が始まっており、オードリーさんも一番前の客席で聴衆の1人になっていた。

「オードリーさんいるね」イオさんとコソっと確認。

11時半になるとオードリーさんと、東京都知事選に出馬した安野貴博さんがステージに登場。講座の内容は「シビックテック」。私の頭にハテナが飛ぶ。幅広い知見というのはこういう時に発揮されるのだろう。残念ながら私は持ち合わせていない。かなり専門的な内容で英語と日本語が入り混じり、小難しい学会に潜り込んだ気分だった。私にとってなかなかツラい時間だった。

ただ、講演が終わって「手紙を渡す時間と話すチャンス」を獲得すれば、参加した意味はある。オードリーさんは目の前にいて、その時は確実に迫っている。

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講演が終わった。そして全体写真の時間。それも終わり、解散が告げられると、イオさんは動いた。私も思った「今ならいける」。イオさんの後ろにピタッとくっつき、2人で小走りにオードリーさんの方に向かった。

スーツでパシっとキメた女性がオードリーさんと写真をとっていた。そうか、写真もありなんだ。

イオさんが女性の撮影終了を待っている。おそらく数秒。女性が席を立つのを見計らうと、イオさんはすぐさま手に用意していたオードリーさんの最新著書とペンを差し出した。

オードリーさんに話しかけるイオさん

オードリーさんはためらいもなくペンを受け取り、サラサラとサインした。そしてついに念願の手紙も手渡したイオさん!やった!!イオさん、やった!!目の前でオードリーさんとイオさんが話をしている。イオさん、なにか驚いて笑っている!なんだなんだ!?でも楽しそう!

私が写真撮影に失敗して、2人の笑顔がいい唯一の写真

やりきったイオさんが満面の笑みで振り返った。

そして私の番が来た。

実は、私も前の晩に手紙を書いていた。完全なる便乗と感じつつ(笑)。ただ、オードリーさんのことを知るうちに、自分の過去と重なるシーンを見つけた。私とはまったく別世界の偉大な人物という感覚だったのに、そこから急に心が引き寄せられて、その「重なった」部分をどうしても伝えたくなった。

「そうだ、今年の文フリのために書いた文章を英文にしよう…」

そう思いついたのは前日の夜中。日本語で仕上げていた文章を慌てて英語に直した。もしかして…あわよくば…いや、天才だけど人だもの…オードリーさんと私の気持ちが一瞬でも繋がるかもしれないと期待した。願った。少なくとも、やらなければつながらないと鼓舞した。これが夜中の怖さ。無敵の気分だった。

「唐鳳(オードリー)様」

手書きの手紙と、英文に直したエッセイのコピーを入れて、「唐鳳(オードリー)様」と書いた封筒の完成。

目の前のオードリーさん。イオさんに習い、挨拶をしてからその封筒を手渡した。やわらかい物腰、優しい口調、全てにおいて、受け入れてくれる姿勢で接してくれた。最後に手を出したら、両手で私の手をふわっと包んでくれた。

なんて素敵な人なんだと感動した。優秀さをひけらかす態度も皆無、ただただあったかい方だと、幸せな気持ちになった。

膝と手先が震えていた。同行、便乗のはずだったんだが。イオさんと私はミッションクリアで力尽きた。そして大満足で、有料の懇親会はスルーし、会場を後にした。

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私はオードリーさんに会うと決めて、それに向かうイオさんからもたくさんのことを学んだ。
・スピード感
・行動力
・粘る
・思い
今回イオさんの行動にしがみついて本当によかった。何か実現したいときの大切なことが体にも心にも沁みた。

環境を固めて、思いを高め、行動を起こす。そしたら「結果」って出るんだ。

私とオードリー・タンさん、手の下には私たちの手紙!

オードリーさん、とにかくイオさんの手紙は読んでください!そして良い返事をくれたらいいな。届けー!!

〜お知らせ〜
オードリーさんに渡した私のエッセイも入った、オムニバス『しわしわ』。
これを、文学フリマ東京39に稀人書店で出店します。

2024年12月1日(日)
ブースは【P49-50】
稀人書店:
https://x.com/marebito_books 

みんな真面目に面白く紙にまつわる話を書いています。
当日、私も店番します。

会いに来てください!

去年、個人ZINEで書いた『ゲートをくぐった子ども』も置いてます。不思議な体験集。神社で撮った写真、窓のアレは?、地下鉄の女性など実話7話を収録。密かに子どもたちに人気です!

カジュアルホラー




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