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ラノベ#5



前々回のあらすじ: 感電した事とイスから落ちる以外は特に何も起きなかった



    【魔王様は倒されたい#5】



「なぁ!?あるだろ!?説明してない事が!!」
と、苛立ちを隠しきれない感じで問い詰める。

『、、、、えぇ〜??』
この少し高い声のマスオさんみたいな返事が余計に腹が立つ。

「いや、あるハズ!!魔王城のレイアウトを変えれる的なシステムがさぁ!」
このシステムが無ければ、魔王城の2Fの巨大駐輪場はゲーム設計者が作った事になる。そんな変過ぎる遊びを設計者がする訳が無いと確信していた。

『あぁ!!魔王城のもよう替えの事ですか!』

「もよう替えて!季節の変わり目みたいに言うな!でも、やっぱり有るじゃ無いか!!」

『ええ、すっかり忘れてました。と、言うのも、実は魔王城もよう替えは私の管轄では無いんです。なので、詳しくは担当のツェシに聞いて下さい』

「ツェシ??」

『ええ。この部屋を出たトコに立ってるでしょ?』

「あぁ!?あの!!」
すぐに、さっきめちゃくちゃ無視して来たあの無愛想な女の子が頭に浮かんだ。

『はい。彼女は通称・ツェシ。
名をツェシベール・ニション。 
フランス語で、“とても素敵なおっぱい”と言う意味です』

「あっはぁん、??」

『ツェシベール・ニション。』

「えっと、ツェシベールが?」

『“とても素敵な”』

「ニションが、?」

『“おっぱい”と言う意味でございます』

「ほぉーぅ。」

『普通の“素敵な”は、“ボン”です。“とても素敵な”が、ツェシベールです。』

「ツェシだけだと??」

『恐らく、“とても”とかですかね??』

「、、、なら、いいか。」

あだ名がもし、“ニション”の方だったら「おい、ニション、なぁ、ニションって!」と呼ぶ度に「おい、おっぱい、なぁ、おっぱいって!」と発言する事になるけど、“ツェシ”だと「おい、とても、なぁ、とてもって!」なので、助かった。


   何から助かったかは知らないが。


『ま、詳しくは彼女からお願いします。私は帰って山積みの事務処理を片付け無くてはいけないので。では!』

そう言うとボフンっと空中に現れた魔法で出来たシュレッダー機が現れた。
彼はその中に入り、機械から出て来た細切れになった体と、緑の血液が地面の上でシューと音を立てて煙になって消えた。



「、、、、。エグい消え方したな。。」


普通にボフンっと消えれないのだろうか?と思いつつ、少し気合いを入れて彼女のいる方向を見た。


先ほど、えらく冷たくあしらわれたので、また声をかけるのが億劫である。

「あ、あのー、、ツェシさーん、少しよろしいでしょうか?」

そう言いながら結界ギリギリまで近づく。

『、、、、、、、、。』

当然のように無視をされる。

「あのー、ツェシさん?魔王城のもよう替え??について聞きたいんですけど、、、。」

と言うと、彼女は大きくため息をし、
『また面倒な事を、、、。』
と小声で言った後に続けて
『はい!分かりました!では、まず見積もりですね!』
と満面の笑みで言った。

私は前半は聞こえなかったフリをしつつ
「あ、はい!見積もり?をお願いします」
と言うと
『はい!では、今からそちらにお伺い致しますので』
と事務的に言いながら結界を超えて部屋に入って来た。

「いや、“今からそちらにお伺い致しますので”って、そんな距離無いですやんか!、、もぅ、ねぇ。」

ツッコミを無視しながら、スタスタと歩いて行って、玉座の近くにイスと机をボワンと出現させて彼女は座った。
どうやら、事務的な事以外は無視をされる様だ。


『で、どの様にもよう替えを致しますか?』

「ん“っ!ん“ん“っ!!」
と咳払いをし
「そうだな!まずは1Fに出て来るモンスターをこうこう、こうして、、、、
宝箱は中身はコレに変えて、、、こことここにも追加して、、

2Fはこうなってるのを、こう変えて、、、
で、ここの空気清浄機を加湿機能の付いたヤツに変えて、、」
『はい、、。はい、、。』
「で、ここの空気清浄機はフィルターを新しいのに変えて、こっちの空気清浄機は角度を変えて、、、」
『はい。なるほど。』
「あと、階段の途中の空気清浄機は要らんと思うから、ココの宝箱の横に置いて、、』
『はい。宝箱の右横?左横?』
「いや、この宝箱は右横に既に空気清浄機あるから、左横に」
『なるほど。左、、と。』
「あと、ここの喫煙所、空気清浄機がビッチリ敷き詰められてて真ん中の灰皿に辿り着けんかったから、ここの空気清浄機、もう全部、天井まで縦に積もう」
『縦に、、と。』
文句も言わず地図を見ながらメモを真面目に取っている。
どうも業務になると、ちゃんと会話をしてくれる様なので、これからも毎日、もよう替え頼んじゃおうかな!?しっかし空気清浄機多いな。

メモを取り終えてペンを置いた彼女が淡々と言う。
『かしこまりました。この見積もり内容だと、、、1兆ジャストですね。』


      「高っ!!!!」


思わず叫び、また天井からホコリが降って来た。


「何!?高すぎへん!?なんなん1兆ジャストって?
1兆にジャストとかあるの?聞いた事ないぞ!?
なに?何千万とか何百円とかの端数はオマケしてくれてジャストなの?」
『いえ、計算したら、ちょうど1兆ジャストになりました。』
「ちょうどジャストに!?」

すげぇ運を使っちまったみてぇだ。

「でも、高すぎへん!?普通、家のリフォームでも高くて一千万行くか行かへんか位やのに。。」
『まぁ、家ならね。魔王城なんで』
「ええー、、、、。でも、そんなお金ないぞ、、。えーと今、全財産が60万ゴルドやから、、うん。ほぼ1兆足りないです。。
これ、なんとか安くならないですか??」

   ほぼ1兆を値切るのは初めてだ。

(ま、言っては見たものの、絶対に無理やろうしなぁ。今回は関係無い、空気清浄機関連をやめるか。。でも、置き場所変えるだけやからあんまし金はかかって無いやろしなぁ。。)
なんて思っていると、彼女はこんな提案をして来た。

『なら、お持ちのアイテムをお売りしたらどうでしょう?私が一旦、お預かりして、アイテムショップに売って来ますよ』

「いや、でも不要なアイテム全部売ったところで1兆にはならんよ〜。。」

『貴方が魔王である以上、お持ちの全てのアイテムが不要だと思いますけど?』

確かに、冒険はしないので消耗アイテムや素材は使う機会は無い。
苦労してゲットした伝説の鎧なども、装備すら出来ないのなら持っていても意味は無いもんなぁ、、。

めちゃくちゃレアなアイテムもあるけど、勿体ないけど今は1日でも早く勇者に倒される事が優先かぁ。。
と考え、泣く泣く、今までのプレイの結晶全てを彼女に託した。

『お預かりしました。じゃあ、少しお待ちください。街に行って、商人に売却して来ますので』

「なるべく高値で買ってもらうんだぞ〜」
と泣きながらハンカチを振る。
「あっ、伝説の装備シリーズは全部、買い取り価格1億以下なら一度、戻って相談して欲し、、、」
と言ってる最中に、彼女は時空に丸い穴を開けて街へワープして行った。

「聞けよっ!あーぁ、しっかし、あと足りないお金はどーやって稼ごう??」
と独り言を言いながら、床にねっ転がる。

「手っ取り早くゲーム内で金を稼ぐなら、カジノやけど、この部屋からは出れないしなぁ、、。
優勝賞金500万の武闘会も、高値で売れる素材“ヒヒイロカネ”を落とすモンスター狩りも結局は全部外に出れんと無理や。。
と、なると内職??え?魔王て内職出来るんかな??これ、爪の長さ絶対、内職向きじゃ無いよな。。。てか、ほぼ1兆を内職で稼ぐなんて何年かかんの〜って話やで。
まぁ、何もやる事ないよりかマシか。
、、そう言えば、飲み会前に飲むウコンの力って、もうジュースとして独立していいレベルで美味しいよなぁ。
アレの500のペットボトル欲しいわ。
、、、ウコンの力の焼酎割とかめちゃくちゃ流行りそうやけど、なんで無いんやろ?
飲めば飲むほど、次の日に酒が残らへんから良いんちゃうんかな??
酒と混ぜたら効果無くなるんか?いや、ソレなら飲み会前に飲んでも胃の中で酒と混ざり合うから効果ないやろしな。。
それで言ったら、ビオフェルミンと下剤一緒に飲んだらどうなるんやろ?
、、、“クリスタルガイザー”って水の名前ってより必殺技の名前っぽいよな。
、、、メリル・ストリープも風魔法っぽい名前やな。」

『独り言、めちゃくちゃ気持ち悪いですね。』

「うおっ!!帰って来てたんか!!え!?いつから居たん!?」

『メリル・ストリープが風魔法っぽい名前ってトコからです。』

「、、、最後やんけ!こーゆーん、だいたい序盤から聞かれてて恥ずかしっ!てなるのがセオリーやねん!」

『それより、預かってた全アイテム、売って来ましたよ!』

「早かったな!で、全部でいくらになった??」

『1兆ジャストになりました』

「1兆ジャストに!?」

また、変な運を使ってしまったが、どうやら内職はしなくて良さそうだ。



      【次回に続く】

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