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日本の経営スタイルに関する間違えた情報が教えられ、修正する 

Management of Innovation, Technology, Entrepreneurshipの授業で一コマです。
ジャストインタイム(JIT)がどのように生まれたのか、どのように運用されているかの説明で、日本はボトムアップスタイルで現場が権限を持ってなんでも現場で決めているのだという説明がありました。

間違いだとは言い切れないのですが、どうしても気になる点として以下2点があり、訂正しました。
- トップの指示はなく現場の課長レベルですべてを決めるかのような説明だが、実際には大きな方向性、数字目標はトップから降りてきて全体で共有されている。
- 現場の課長レベルが全て決めているという説明には、あたかもそこから下はインドネシア人がイメージする明確なジョブ・ディスクリプションがあり、各々が細かい指示に基づいて作業するかのようなイメージを持っているが、そんなことはない。
日本人の指示は基本的にあいまいである。

わたしはトップからの指示の例として、工場のケースを伝えました。不良率を10%下げろとか、スループットの時間を2割短くしろとか、原価率をあと5%下げろとかそういった類の指示です。

現場の課長レベルの指示も基本的には似た傾向にあり、あいまいで現場に近ければ近いほど自分で考えて行動し、自分の役割を超えて組織に貢献することが求められるとも付け加えました。

おそらくインドネシア人には想像できない状況だと思います。日本企業の現場経験があって初めて理解できる話です。
わたしは現場経験はないのですが、三菱自動車時代に岐阜のパジェロ製造の監査役をしていた関係で、業務を通じて日頃の経営課題を見聞きしてしました。感覚的にわかるのです。

その背景として、以下2点が影響することを説明しました。
先生がとんちんかんな背景を説明し始めたから、追加しないといけなかったのです。

1.High context cultureであること
High context cultureというのは明確に言語化せずに阿吽(あうん)の呼吸、以心伝心でコミュニケーションを取ることです。
インドネシアもHigh context cultureに入りますが、日本と違うのはHofstedeのいうHigh Power Distanceのcultureでもある点です。High Power Distanceが大きいというのは、権威主義が強い国になり、インドネシアはとても高く、日本は中くらいから下の方なのです。
High Power Distanceのカルチャーのもとではトップダウンの組織になり、上からの指示に従うこと以外に余計なことはしなくなります。

日本は職務区分が不明確なまま、それぞれの担当領域をカバーしながら臨機応変に仕事をしていきます。指示が明確でなくても、大きな方向性にそって下に降りれば降りるほど具体的な施策に落とし込まれていきます。

たぶん先生はこのイメージがついていません。現場の課長が明確な施策を作り、それをもとに明確な職務区分と職務権限が作られ、各自が決められた通りに動くと思っています。
High Power Distanceのカルチャーで生まれ育っているので仕方ありません。

2.家族主義
なぜ個人の責任範囲を超えて他の領域を手伝うのか、改善案を考えて実行するのかといえば、日本人は個人の利益よりも組織の利益を重んじるからです。
その職務態度やチャレンジは高く評価され、仮に結果が伴わなくても、あるいは他人が結果を出しただけになっても、結果責任を問われません。
プロセスをとても評価されるのです。

責任は個人の責任というより全体の責任だという風潮がとても強い。
決裁のスタンプラリーはこの最たるものです。
一人で決めればその人の責任になりますが、全員が賛成したとなれば、全員の責任になるからです。
そして全会一致で承認された、というプロセスを好みます。無駄に時間をかけ細部を妥協してでも合意形成を図る傾向があります。

日本企業の家族主義と利他主義は経営学では有名な理論なので、先生は分かっていました。

何かミスがあった場合、日本の企業はすぐに原因究明のプロセスに入ります。一方、インドネシアを含めた他の国では誰の責任範囲だったのかがまず問われます。
一歩二歩遅れるんですね。

たいていは言い訳しますし、余計な時間と労力を取られてしまいます。その対策として、ジョブ・ディスクリプションは明確になりますし、余計に責任範囲外のことはしなくなります。

日本は誰の責任かは後回しで、仮に誰か個人の責任だったとしても、そのミスが発生するような仕組みを作って放置した人間と組織の責任でもあると考えますから、ミスした人間も積極的に原因究明プロセスに入り、いち早く改善ができます。

これがKaizen活動の基盤になります。

先生はジャストインタイムを例に出しましたが、わたしはKaizenを例にすべきと思います。
ちなみにジャストインタイムもコロナ後はトヨタは系列を含め在庫を増やす戦略に転換しているので、今は違うのですが、その突っ込みはしませんでした。

あまりやりすぎないようにと思って我慢していたのですが、日本に関して間違えたインプットをされるのは困るので細かいかと思いましたが口出ししました。

修論のテーマで、日系企業の現地化の難しさを調べているのも影響したと思います。

文化の差はとても大きいのです。
製造業だと指示があいまいだとしても、製品という明確なものがあり、結果が目に見えてわかるのでやりやすいのですが、サービスや管理部門は厳しいのでしょう。

製造業に比べてサービス業の海外現地法人は日本人比率が高いというデータがあり、このことも影響していると思います。




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