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兵庫県知事選挙の結果が示すもの

斎藤知事の辞職による選挙が行われ、予想を覆し斎藤知事が再選されました。
今までにない選挙でとても興味深い結果でした。


(1)情報が錯そうする

わたしは日本のテレビを見ておらず、ネットニュース主体になりますので間違えているかもしれませんが、テレビと新聞を中心とするマスメディアの論調と真逆の結果が出たようです。
アメリカで起きるようなフェイクニュース、陰謀論が渦巻くなか、何が本当の話なのか、誰も判断がつかないまま投票日を迎えるという混乱状態です。

マスメディアが情報を支配しコントロールする時代は明確に終わりを迎えたということだと思います。

わたしとしては喜ばしいことではありますが、一方でマスメディアにもう少ししっかりしてもらいたいという気持ちもあります。
テレビの視聴者のレベルが低すぎて難しい現状は理解します。しかし、もう少し質の高い、しっかり分析した情報を提供しないことには、大きな組織による取材力、分析力が無駄になってしまいます。

ネットで出回る情報は玉石混交で、読解力や理解力に欠けた情報弱者が惑わされ情報を拡散させてしまう傾向にあります。
信頼できる情報ソースとしての役割をマスメディアには果たしてもらいたいと思います。今回の出来事はテレビ、新聞にとっては相当なショックだったと思いますので、変わる良いきっかけになるといいですね。

いずれにせよ、事実関係は今後解明されていくでしょう。民意を得たとしても事実解明が不要になることはありません。

(2)若者の支持する候補が高齢者が支持する候補者に初めて勝つ

これも初めてではないでしょうか。
都知事選の石丸旋風は、盤石の小池知事には効きませんでした。20代、30代の投票率を上げたところで負けていたのです。
ところが、報道によれば今回は20代、30代で7割が斎藤氏を支持、60代、70代が稲村氏を支持で、斎藤氏が勝ちました。

都知事選とは状況が違うので比較はできないという意見もあるでしょう。
保守王国の兵庫で、左系の稲村氏を立てても保守系の支持基盤が一致して押せないとか、結局現職が有利という定説に沿った結果ではないかとか。

ただ、若者の投票率が上がり、影響を高めたという事実は大きいと思います。
若者が政治に興味を持ち、政治参加が増えれば、若い世代をより重視した政策が増えていくことにつながります。

(3)SNS効果

フェイクニュース、陰謀論とSNSは相性がいいので、今回はハマりやすかった可能性はあります。それと既得権益にかみついたために追い落とされたのだという分かりやすいストーリーもネット情報との相性がよかったのでしょう。本当に悪い奴は誰だったんだみたいなのは面白いですからね。

ただそれだけでなく、都知事選の石丸氏の流れから、今回の兵庫知事選までSNSの利用とYoutubeの利用の効果は継続しています。
若者の支持を集めたり、情報操作により誘導するにはSNSとネット情報は有効だと明確になりました。また、今回は40代、50代でもそれなりに影響は受けるということも分かりました。

ネット情報は偏ります。エコーチェンバー現象とかフィルターバブルと言われる状態が生み出されるためです。
技術的にそういう状態になっている面もありますが、人間の性質が自分が理解できるものだけを信じるようになっているため、仕組みをあれこれいじったり規制したところでどうにもなりません。

ネットは本来多様な考えが雑多に行きかうところが良いところなのに、社会的分断を強化していく方向に働くというのはつらいところです。

誰かがよい方法を考え付いてくれることを期待するしかありません。情報リテラシーを上げる教育をするのが王道ですが、AIによるニュートラルなキュレーションとか、極端な意見同士をAIに分析させるとか、AIにどっちがより真実を言っているか事実認定させてみるとか、そういうサービスが出てくるような気がします。

(4)今後の選挙戦

今回のようなパターンはなかなかなく、再現性は厳しいかもしれませんが、SNSとYoutubeの利用方法と効果は研究されると思います。
日本人は保守的だと思われており、事実保守的な一面がありつつも、実際に歴史を見れば簡単に態度を変える民族です。

個人の考え、ポリシー、原理原則を持たない民族だからです。世の中の大きな流れに思考停止させてついていく傾向があります。
それでいながら馬鹿という訳ではないので、簡単に騙されることはありません。慎重なところもありますし、よく考えるところもあります。

(5)斎藤知事に期待したいこと

わたしは斎藤知事には正直危うさを感じています。
パワハラだからではないですよ。わたしも一度パワハラだと注意を受けたことがありますし、人間に間違いはつきものです。仮に不倫をしようが何も思いません。

権力を持つ者として権力の濫用に慎重であるべきという態度が欠けているから危ういのです。
自殺された局長が公益通報制度を使って匿名で告発をしたとき、追い落としを図るためのデタラメな内容だとして、告発者の特定をしようとしたばかりか、堂々と嘘八百の内容だと攻撃しました。しかも停職処分までしています。

本当に嘘八百で悪意のある告発かもしれません。ただ公益通報制度の目的を考えれば、告発された権力を持つ本人が嘘だとか告発者を見つけて罰してやるなんて言ったら制度が成り立たないことは分かりますよね。
そもそも法律の名前が「公益通報者保護法」ですから。

権力に対する監視機能として設けられているわけですから、権力者としてはコメントは差し控え、第三者の調査にゆだねるとすべきなんです。公益通報者を特定して攻撃しようなんてあり得ません。
仕返しをされないよう保護しなきゃいけないんですよ。
局長は管理職でも上の方だから保護の必要はないとか、敵対行為なのは明らかだからとか、権力側が仕組を恣意的にいじってはいけません。

わたしの前職でも、公益通報者保護法が2022年に改正される前から内部通報制度を運用してました。社内だけでなく社外にも連絡できるようにしていますし、社員には説明し連絡先が書いてあるカードを配っています。それでも最初の頃は運用が混乱していました。
ある子会社の社員が内部告発をしたら、担当者がその内容を真っ先に子会社の社長に連絡して、「これは事実ですか?」なんて聞いて、問題になったこともあります。
その部門の人は、「内部告発者の上司に連絡するルールになっているから従ったのだ、告発者が名前を出してもよいと言っていたから連絡したのだ」と平然としてました。悪意はなく良かれと思ってやったことです。その後、間違っていたと認めルールを変えました。
今はそんなことは起きません。告発者の保護は徹底しています。

一番大事にしなければならないのは、内部告発者を守ることです。次に大事なのは当事者は関わってはいけないということです。必ず利害関係のない第三者が事実性を確認しなければなりません。
そこを厳しく運用しないと、誰も告発なんてしなくなり、制度の意味がなくなります。

権力を持つ人は勘違いしてはいけません。
権力は個人に紐つくものではなく立場に紐つくもので、選挙によって選ばれた政治家は国民から権力を付託されているに過ぎません。
民主主義の大原則です。

パワハラをしようが、不倫をしようが、極端にいえば犯罪を犯していようが、悪人だろうが、国民がこの人に権力を持たせて仕事をさせたいと思えば、権力を持つのです。
その代わり、常に権力の行使については監視され、社会に奉仕するために権力を使わなければならず、権力にしがみつくようなことはあってはならない条件つきです。

そこは今回きちんと間違いだった反省して、二度と告発者をつぶそうとするようなことはしないと誓ってほしいです。

仕切り直しのタイミングで、そこのけじめをつけてもらうのが大事だと思います。

議会や市長たちと仲良くやりますというのは、正直どっちだっていいんです。
それぞれが選挙で選ばれている人たちなんだから、権力を持つ者同士、健全に議論を戦わせればよいだけの話です。政策を実現するために妥協することもあるでしょう。権力闘争なんだから裏切りも当然あります。

その議論、やりとりを有権者が見て、次の選挙で権力を与えてよいか判断を下す。それが民主主義です。
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とても興味深い選挙でしたので書いてしまいました。これからの選挙がどう変わっていくのか、興味を持って見ていきたいと思います。


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