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インドネシアでブームが来そうな日本食 1回目:おにぎり

インドネシアで浸透している、もしくは浸透しつつある日本食について、わたしの個人的な味覚と観察で解説していくシリーズをはじめたいと思います。

今回はおにぎり特集です。

なぜ選んだかというと、2010年にロースクールを卒業しサンフランシスコの法律事務所で研修していたとき、Onigillyという日本人が始めたおにぎりやが流行り始めていたので、海外でポテンシャルがあると前から思っていたのと、

インドネシアのどのコンビニに行ってもおにぎりが売っているにも関わらず、意外に一般のインドネシア人に知られていないので、なぜなのか気になったのです。
例えば、たこ焼きやカツはコンビニで売っていませんが、インドネシア人にはおにぎりよりよっぽど知られています。


なぜおにぎりはインドネシアで浸透しきれていないのか

わたしは日本食についてインドネシア人がどの程度知っているか、クラスメイトへのアンケートと、寮に集まる人々へのアンケートで別々に数字を集計しているところです。
そこで大きく差が出た日本食があり、その中の一つがおにぎりでした。
学生はわたしがリストにあげた日本食をほぼ知っているのに、寮の関係者はかなり知らないのです。
具体的にいえば、おにぎりの他に、からあげ、おでん、うどん、ぎょうざ、どらやき、で差がつきました。これらの商品については今後特集していく予定です。

これらの差が大きい商品は、マーケティングのイノベーター理論でいうところの、Early Majorityが買い始めた頃かと思います。 
下の図の左から3番目がEarly majorityです。

Wikipediaよりコピー

仮説1:味の問題?

おいしくないのではないか。冷たくてもおいしい米というのは、お米の中でも高級な部類に入る。安い米は冷たいとまずくなってしまう。
また食習慣として、インドネシアではもち米は冷たくなってから食べることがあるが、ごはんはいつも温かいので、食べ慣れていないのではないか。

検証
実際に食べてみました。
高いおにぎりと安いおにぎりが売っていて、安いのは8000ルピア(80円)、高いのは14,000ルピア(140円)です。
安い方はお米の質が悪すぎておいしくありません。ぱさぱさしている上に芯が残っている感じもします。ノリの質も悪いです。

上が安い、下が高い

高い方のお米は日本のおにぎりに近いです。驚きました。海苔も悪くないです。
ただ、具材についていえば、素材を潰しすぎてしまっているのと、手をかけていなさすぎるので、並みか並み以下の味になっています。
わたしは記事にするため全部で20個食べましたが、リピートするとすれば、ローソンのサーモンマヨ味かツナマヨだけです。
ローソンのおにぎりは許容範囲ですが、他はちょっと14,000ルピアの価値はないと思いました。

ローソンのおにぎり3種

ちなみに、日本に旅行に行ったことがあるクラスメイトが何名かいて、日本のコンビニでおにぎりを食べたか聞いたところ、全員が食べたと言っていました。
そして、味については日本の方が好みだと言っていました。
どこが違うと思ったか聞いたら、まず具材の種類が違うのと、インドネシアは味つけが濃すぎるという意見でした。

一番人気のおにぎりはツナマヨでした。

仮説2:高すぎる?

価格設定を間違えているのではないか。
コンビニで買い物をしない層にとっては、縁がない。

検証
わたしが想定している競合商品のナシクニンに比べると明らかに高いです。ナシクニンは10,000ルピア(100円)で、ごはんの量も多く、おかずは3種類はいっています。

そもそもインドネシアと日本の物価の違いを考えたときに、日本のコンビニおにぎりよりインドネシアのコンビニおにぎりの方が高いなんておかしいです。

今は高い価格で導入して、マスマーケットを取りに行くときに値下げする作戦なのかもしれません。要は今値下げしても売れ行きが大きく変わることはないという判断なのでしょう。

クラスメイトは10,000ルピアなら高いと思わないが、14,000ルピアは高いと言っていました。

価格の割に量がすくない
おにぎりはごはんを固めているので、おにぎり一個でごはん茶碗一杯分のごはんになると聞いたことがあります。
ただし、それは日本の話であって、わたしがインドネシアで食事をするときに出てくるごはんの量は茶碗2杯分はあります。
ご飯をたくさん食べる国民性なんです。宮沢賢治の「雨にも負けず」に出てくる”一日に玄米4合とみそと少しの野菜を食べ”の世界です。

標準的なインドネシア人にとって、おにぎり1個ではとても食事にならず、3個くらい食べないとお腹いっぱいにはならないと思います。
クラスメートに聞くと、おにぎり一個では量が少なすぎて食事にならないと言っていました。
おにぎりは1個14,000ルピア(140円)するので、3個だと42,000ルピアになってしまいます。

インドネシア料理の場合、ごはんはおかわり自由という店があり、30,000ルピア(300円)以上のおかずだと、ごはんは食べ放題です。おにぎり2個で30,000ルピアとはくらべものになりません。

そもそも昼食代に40,000ルピア以上払えるインドネシア人の比率は人口の5%程度ではないでしょうか。

おにぎりの具材にお得感がない
典型的なおにぎりの具は、ツナマヨ、チキンマヨ、サーモンマヨといったマヨネーズもの、牛肉、鶏肉のそぼろもの、それらの激辛バージョンといった具合です。
高級食材といえるのはサーモンくらいで、分量的にはおにぎりの中身なのでどうしても少なめになってしまいます。
日本のサケおにぎりは、サケの塊が入っていますよね。こちらはシーチキンのようにつぶしてしまっていて、魚を食べている感覚がありません。

1食で45,000ルピアは日本食レストランに行ったと思えば安いですが、インドネシア料理でいえば、鶏肉の量を倍にしたり、牛肉を食べてもまだ届かない価格です。肉ダブルでも35,000ルピアにしかなりません。

おにぎりに入っている具材だけで判断すれば、わたしの感覚では1個10,000ルピアでも高いと感じるくらいしょぼいです。

仮説3:インドネシア料理と差が出にくい?

これは異端説と思いますが、インドネシア料理と似すぎていて、わざわざお金を払って日本食を食べた気がしないのではないか?
わたしがおにぎりを知らないインドネシア人に、おにぎりとはどういう食べ物か画像を見せながら解説したら、インドネシアでもごはんの中に具材を入れて食べる料理があると言っていました。
彼らのイメージする料理は、ナシバカールや、ちまき(バチャンという)、中身が入っているロントンの類。これらの料理はノリの代わりにバナナの葉やパンダンの葉でごはんを包んでいます。
のりを使っているかいないかと、形の違いしかないです。

寿司やラーメンは、見た目も味も明らかに違うので、外国の料理を食べているという感覚へのプレミアムを払う気になるのではないかと考えています。

仮説4:昼ごはんをぱっと済ます習慣がない

わたしの感覚だと、おにぎりはゆっくり食事をする時間がないときにとりあえず腹持ちするものでお腹を満たしておく目的で食べます。
インドネシア人学生もそういうタイミングはあるのですが、そういう時はごはんではなく、スナック系を食べてしのいでイレギュラーな時間にしっかり食べているように見えます。
そしてクラスメイトを見ていると、周囲の人間にも買ってきたスナックを食べるように勧めてシェアしています。
おにぎりは一人でさっと食べてしまう料理なので、彼らの習慣にあまり合っていないような気がします。

寮のスタッフを観察していると、そういうときはバクソを買って食べるか、袋ラーメンをさっとゆでて食べています。単価は3000~5000ルピア(30~50円)です。

15,000ルピアだと、ちゃんとした食事ができる価格帯ですので、ちょっと済ます食事にしては値段が張るし、中途半端な食事なのではないかと思います。

おにぎりをポピュラーにするにはどうしたらよいか。

案1:あたたかいおにぎりを出す

インドマートでもローソンでも、おにぎりを買うと必ず「あたためましょうか?」と聞いてきます。米は冷たいより暖かい方がおいしいことをよく分かっています。
日本でこんなこと聞いてくるコンビニの店員いないですよね。

それ以外に、和食の店で寿司職人が寿司を握るようにおにぎりを握って、ふんわりした握りたてを食べてもらうのがいいんじゃないかと思っています。
インドネシア料理にふんわりと握る料理はわたしの知る限りありません。
15,000ルピアするなら、これくらいしてもらわないと費用対効果が合いません。

案2:特別な具材を使う

一番は刺身です。マグロやサーモンの刺身を使って、冷たい寿司に対し、温かいおにぎりで食べてもらう。
インドネシア人はまだ刺身が食べられない人がかなりいますので、その場合はよく知られているカツや唐揚げなどの揚げ物でもよいです。

案3:具を極端に大きくする

たとえば、唐揚げやカツを完全におにぎりからはみ出させてしまうのがいいんじゃないかと思います。
そして、ぱりぱりのノリでまくことにあまりこだわる必要はありません。わたしの感覚ではそこに価値を見出しているインドネシア人はいないんじゃないかと思います。

それより、最初からのりで巻いていていいので、名古屋の天むすみたいに具がはみ出して丸見えになっている方が、インパクトがあって浸透しやすいんじゃないでしょうか。
わたしは今のおにぎりの価格はこのままでいいので、食材にコストをかけてみてほしいです。

案4:携帯食としての機能性を打ち出す

おにぎりの始まりは携帯食です。お弁当ですね。
インドネシアは弁当文化を持っており、日本のほかほか弁当がインドネシアで成功したのはこの文化に乗っかったからとも言われています。

弁当(bento)という言葉を持ち込み普及させました。概念としてはインドネシアに前からあったものの言語化はされていなかったのだと思います。
ブンクスという単語が近いと思いますが、包んで持って帰って家で食べるという感じなので、日本の弁当のように一つの食事として栄養バランスや具材を考えてアレンジするまでは行きません。

また、バンドン工科大の学生を見ていると、食事のとき手を汚したくないのだろうなというのを感じます。パダン料理を食べるのに、手で食べるのですがビニール手袋をして食べています。昔と変わってきています。

インドネシア料理でおにぎりに近い米料理は、バナナの皮で包まれているので手で剥がしてから米の部分を手で持って食べないといけません。手が汚れます。
その点、おにぎりは手を汚さずに済むのでアピールポイントかと思います。

ただ、おにぎりは手を汚さないためにノリを使っているんだよ、とクラスメイトに説明した時ポカンとしていたので、もしかするとおにぎりを手を汚さない食べ物と認識していない可能性はあります。

おにぎりの今後の展開に期待しています。







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