Strategy(戦略)について考察~サイゼリヤのStrategy(戦略)に思いを馳せる
Supply Chain Managementの授業で以下の96年11月のハーバードビジネスレビューのポーターの記事を読んで、そこに出てくるActivity Mapを自分たちでも作ってみようとなりました。
まず初めに、ポーターのポジショニング理論を非常にざっくり説明しますと、企業は常に模倣の脅威にさらされていて、最後は差別化がなくなり価格競争に陥り勝者は存在しなくなるという前提に立っています。レッドオーシャンの世界です。
その中でいかにブルーオーシャンを見つけ、他と差別化していけるかが大事で、他とは違うポジションを確立しようとするのが戦略だというわけです。
競争相手を研究しベンチマークにして追いついていこうとするのは戦略ではなくOperational effectivenessだと言っています。
いつもざっくりすぎてすいません。
記事に出ている各社のActivity Mapを出せればわかりやすいのですが、著作権の問題で出せませんので、簡単に説明するとIKEAの場合はコアのActivityが4つあり、それぞれに関連したActivityが10個くらい散らばって矢印でつながっているイメージです。
4つのコアは①サービスが限定的②客が自分で商品を選ぶ③家具のモジュール化④コストが安い、です。
ローコストを突き詰め、無駄を廃し本当に必要なアイテムに絞り込んだり、プロセスを変更し、ローコスト家具を提供できるエコシステムを作り上げているのが図で分かるようになっています。
(あとで自作のサイゼリヤActivity Mapをお見せするので、こういう図なんだとご想像いただければ)
わたしは前回の授業のときに、みんなに自動車会社のバリューチェーンとサプライチェーンがどういう仕組みになっているか説明したので、内心「三菱自動車で作ろうよ」と言われないかびくびくしていました。
作れないことはないのですが、他社をベンチマークに日々改善を重ねるのが主体で、この会社ならではの差別化戦略の要素は少ないのです。
社員としてはもちろん考えまくっていますよ。わたしが属していた経営戦略本部にそれをやるチームがいました。でもこれだけ成熟し、かつプレーヤーも限られた業界だとなかなか難しいんです。
案の定グループメンバーが言ってきたので、「それだとみんなの勉強にならないから、別のにしよう」と半ば説得し、メンバーの一人がやっている「Okosan Gyoza」という餃子レストランを使って作ることになりました。Okasanは日本語の「お子さん」から来ていて、彼の息子のインスピレーションらしいです。
30分で作って提出しないといけなかったので抜けが多いですが、個人的にはとても楽しい作業でした。正直もっとやりたいと思ったくらいです。
結局、わたしが吉野家を念頭に、みなを誘導してしまったところがあります。
吉野家はみなさんご存じの「うまい、安い、早い」ですね。実は昔は「早い、うまい、安い」の順番だったのを変えているんです。
わたしの年代よりちょっと下くらいはキン肉マン世代ですから、「牛丼一筋300年~ はやいのうまいの やっすいのー」の歌はよくご存じと思います。
早い、うまい、安いを実現するための吉野家のシステムは徹底されています。メニューは少なく、店舗の設計、レジ位置、サイドメニュー置き場など、こだわりぬいていますから、吉野家の話をしたところ結構引っ張られてしまいました。それうちも考えているんだ、という感じです。
吉野家はインドネシアでも有名で、みんなもイメージしやすかったんです。先生も見に来たので、吉野家の話をしたらおもしろがっていました。吉野家には3つのコアバリューがあって、Speed、Taste、Priceだ。特にSpeedは注文から1分以内に出すルールになっている(もしかして今は違うかも、ガセネタを説明した可能性あり)とか、牛丼を誰が一番うまくよそえるかコンテストが開かれているとか。
インドネシアの吉野家は日本と違い、カウンターで注文し、出てきた料理を受け取って席に移動します。
わたしが頼んだのが普通の牛丼だったからかもしれませんが、1分で出てきました。はやいはインドネシアでも健在です。
あとはわたしの大好きなサイゼリヤも低コスト実現のためのこだわりが尋常じゃないので、絶対Activity Map作ると面白いはずなんですよね。
と思い、勝手に自作のサイゼリヤActivity Mapを作ってしまいました。
おこさん餃子のマップを中途半端な状態で提出しないといけなかったため、不完全燃焼になっていたのだと思います。
好きなだけ時間をかけて作りたい気分でした。非常に楽しかったです。
サイゼリヤのオペレーションにご興味のある方は、サイゼリヤ革命をぜひご一読ください。
サイゼリヤは知らない人ほど、安かろう悪かろうの店だと勘違いしているのですが、とんでもない話です。
高級イタリアンのような訳にはいきませんが、すべての人がイタリアンを毎日楽しめるようにしたいという経営者の強い思いが詰まったお店なんです。
普通は価格と品質はトレードオフ(どっちかを犠牲にしないと成り立たない)と言われていますが、サイゼリヤは日々の血のにじむような努力と、理系の発想による産業化マインドで、両方を実現させている稀有な企業です。
普通の外食企業は産業とは名ばかりで、industrializationという本来の産業化を本気で目指しているのは、わたしの知る限りサイゼリヤだけです。
一般的に外食企業は、心のこもったサービスでお客様に感動をというemotionalな方向に逃げがちで、もちろんそれも大事なことですが、数値化、定量化、標準化、再現性といった本来の産業化は二の次になっています。
サイゼリヤの正垣会長は、レストランチェーンの経営は工場経営そのものと仰っていて、だからこそ理系のマインドが合っているとお考えです。
スタッフの移動距離、動線、作業時間をストップウォッチで図るとか、完全に工場の工程管理そのものです。それを聞いた時は革命的だと感動しました。
わたしはベンチャーキャピタル時代に外食産業が大好きで、かなり研究して外食産業へ投資もしました。90年代後半にブームが来た「にんにくや」です。残念ながら本体は倒産し、愛媛県にあったFCの一つが上場しました。
ご参考まで、わたしは成功する外食産業のタイプを3つに分類しています。どれが正しいという正解はなく、どれかにフィットした会社が勝つということです。
一つ目は宗教がかった組織。言い方に語弊がありますが、企業理念やオーナーの考え方に心酔した社員やアルバイトが、指示せずとも勝手にオペレーションやサービスを改善していくパターン。代表的なのはスターバックスですね。かつてのワタミもそうです。
二つ目は自由闊達な組織。店長あるいは社員が創造性を発揮し、どんどん新しい業態やサービスを生み出していきます。上と似ているのですが、上は組織や企業理念にベクトルが向くのに対し、こちらはお客さんにベクトルを振り切っていて、お客さんを感動させたい、喜ばせたい、もっとお客さんに来てほしいという雰囲気の組織になります。
代表的なのは今だとどこでしょう。昔はグローバルダイニングでした。多くのうまくいっている個人商店に近い外食はこのタイプです。わたしの大好きなAPカンパニー(塚田農場)は、このカルチャーのまま急激に大きくなろうとしてコケた典型です。グローバルダイニングも同じコケかたでしたね。チェーンとしてスケールさせるのが難しいんです。
三つ目が産業化を進める組織。代表はサイゼリヤです。説明は割愛します。吉野家、トリドール(丸亀製麺)もサイゼリヤほど徹底していませんが、おそらくこっちタイプですかね。
サイゼリヤはインドネシアにもうそろそろ進出してきてもいい頃だと思いますがね。たぶん何度も検討しているけど、ハラルが面倒で出てこないかな。
ハラル認証はイスラム国家の中では楽な方と聞いているので、ここでとってマレーシアや中東にも展開できるようになるメリットもありますよ。