見出し画像

インドネシアでブームが来そうな日本食 5回目 カツ

カツはブームが来そうというレベルを超え、すでに定着しつつある感覚がありますが、ご紹介させてください。
イスラムの国なのでトンカツはなく鶏肉を使ったチキンカツです。

高級和食レストランだけでなく、屋台や持ち帰り専用の小さい店まで、至るところにKatsu(カツ)はあります。あまりに普及しすぎて、わたしが調査をしていたときも、「Katsuってなに?(わたしの説明)え?あれ日本食だったの?」という反応があったくらいです。

なぜここまで普及したのか

インドネシア人は無類の揚げ物好きです。通りのいたるところに揚げ物屋台(Gorengan)があります。Goreng=揚げる、anを語尾に付けると名詞化します。日本語でいうモノが語尾に付くイメージです。食べ物(Makan:食べる+an=Makanan)、着物(Pakai:つける、つかう+an=Pakaian).

揚げ物といっても、日本の揚げ物のような衣はつけずに、ただ素揚げしています。タフゴレン、テンペゴレンが代表格です。
そうした揚げ物とは一風変わったパン粉をつけたカツは、斬新だったのだろうと思います。さくさく感を味わえます。
インドネシア人はさくさく感をよく理解しており、焼きたて、揚げたての皮がパリパリしている状態が大好きです。英語のCrispyが現地語化し、Krispiになっているくらいです。
このパリパリ感をよくわかっている人にとって、さくさく感は入りやすいのでしょう。

Katsuの普及ぶりについて、Google MapでKatsuを入れてバンドン工科大学の周辺を検索してみた結果を張り付けてみます。

赤いマークが店名にカツが入っている店

店の名前にKatsuは入っていなくとも、カツを提供している店はおそらくこの10倍はあると思います。

天ぷらは普及せずカツが普及した理由

わたしの世代では、外国人が好きな日本食といえば、「寿司」「天ぷら」「すき焼」と言われた時代です。すき焼は、名曲「上を向いて歩こう」の英語版の題名になっているので知られていました。

インドネシアにも天ぷらはありますが、知られていません。学生にもあまり知られていないくらいです。丸亀製麺がUdonに加えTenpuraという文字を看板に入れているため、そのうち普及する可能性はあります。

わたしの予想は、天ぷらは作るのも難しいし、提供するのも難しかったのだろうと思います。
今も日本食を提供すると称する現地資本の寿司チェーンや、中国系、韓国系オーナーの日本食レストランで天ぷらが出てきますが、レベルが低いことが多いです。
衣の材料を理解していないか、天ぷらと唐揚げの違いに気づかないくらいの味覚の持ち主なんでしょう。唐揚げの衣も間違えている店が多いので同じ状況です。

はっきり言っておいしくないし、それでいていっちょ前に高いんです。これじゃあ普及しないよなと思います。
天ぷらには温かい天つゆに、大根おろしとショウガを一つまみ入れるのに、そうなっていないのです。じゃあ塩ですかといえばそれもないです。カレー塩や抹茶塩はどこに行ってしまったんでしょうか。

こんな状況なので、天ぷらを誰もが作るようになるのは、カツに比べてハードルが高いんでしょう。

ここまで書いてきてふと気づきましたが、カツ(カツレツ)は英語のCutletから、天ぷらはポルトガル語から来ていますから、純粋な和食ではないですね。日本で進化を遂げた料理ではありますので、このまま和食の範疇でいきます。
第2回の餃子、第3回のうどんはいずれも中国から来た料理ですし、あらためて日本のすごさに気づかされました。

バンドンで美味しいカツが食べられるお店

名店というよりは、人気がある店をチョイスしました。正直申し上げて、日本にあるトンカツの名店のようなこだわりやおいしさをこの国で求めるのは難しいです。

1.キムカツ

恵比寿に本店のあるキムカツがインドネシアで多店舗展開しており、日本よりはるかに大きな規模になっています。2018年3月にジャカルタに1号店を出店してから6年の間に34店舗(キムカツの日本本社の情報)しており、日本の店舗数を凌駕しています。

ボガグループという地元企業によるFC展開で、このボガグループはペッパーランチのインドネシア展開で大きくなった会社です。
ペッパーランチ、キムカツ、しゃぶ里、焼肉ライクの和食や韓国料理の店も展開しています。

キムカツ、しゃぶ里は、日本で店舗数を拡大する前の段階で海外展開を開始しており、今までにないパターンになっていると感じます。
Boga Groupが手掛けているしゃぶ里、焼肉ライク、Kintan(韓国焼肉)は、調べたら日本のDinning Innovationという会社が海外展開を手掛けているようです。
とても興味深いビジネスモデルですが、今回はカツ特集なのでこの辺にしておきます。

キムカツはジャカルタで多店舗展開しているため、ジャカルタ周辺のジャボデタベック周辺出身の学生にはよく知られています。バンドンには4か所しかありません。

チキンカツ ミルフィーユ状になってる。

ここのスタイルは日本と変わりません。ご飯、味噌汁、キャベツおかわり自由がないくらい。あとカラシがついていない。
味は全く申し分なく、値段も肉の量とクオリティーを考えればお得感があります。
ゴマを自分でするスタイルもうれしいですね。

2.勝田食い物や

キムカツと同じパスカルモールにあるお店。モールの建物の外に店が立ち並ぶ一角にあります。
ここはバンドンでは珍しく、トンカツが食べられるお店。別に普通でしょと思われる方が多いと思いますが、ムスリムが大多数のインドネシアでは普通じゃないんです。
ここはトンカツだけでなく、豚骨ラーメン(バンドン唯一)、豚肉餃子(バンドン唯一)もあります

ちゃんとカラシがつくのはバンドンでは初めて
豚餃子。ビールもあるので夢のビールと餃子のマリアージュを楽しめる

なぜ勝田なのか、オーナーのガンダさんに聞いたら、茨城県の勝田の食堂で働いていた時に覚えた料理だから名付けたそうです。彼はスンダの血が結構混じっている4世代目の華人で、日本には1988年から2004年までいたそうです。

ここはインドネシア人が来ないので空いており、潰れないか心配です。貴重な存在なので、なんとか頑張って欲しい。

3.Nona Noni

キャンパスの裏手にある屋台ストリートにある日本食屋台です。メイン画像の写真が外観です。
メニューには寿司、カレー、ラーメンがありますが、いつ行っても今日はやっていないと言うので、実態はかつ専門店になっています。
チキンカツとビーフカツ、チキン照り焼きがあります。

ここは学生にとても人気があり、いつ行っても混んでいます。わたしも週に一度は必ず行きます。
安くて美味しいのです。チキンカツどんぶりと牛カツどんぶりが共に22,000ルピア(220円)で、味付けは日本のカツ丼に近いレベルで驚きのクオリティーです。

チキンカツ丼

4.Katsunyaka(カツンヤカ)

ローカルの人たちに人気の店です、高級な店構えなのにリーズナブルだからだと思います。キムカツの半額くらいのイメージです。
インドネシア人たちはみな「カツニャカ」と読んでいます。せっかくカタカナでカツンヤカと書いているんですが、誰も読めないです。

味については、あくまでもわたしの個人的な味覚ですが、いまいちです。

おそらくキムカツにインスピレーションを受けて、カツを分厚くしたかったんだろうと思います。ところが、キムカツは薄くたたいて伸ばした鶏肉をミルフィーユ状に積み重ねているのに対し、カツンナカは鶏肉をそのまま重ねて分厚くしています。


そのせいか、肉がパサパサかつ固くなってしまっています。わたしの大すきなNona Noniなんて、ミートハンマーもどきを使って鶏肉をたたいてから卵液に入れてますから、ちょっとぺちゃんこになるくらいでちょうどいいんです。
ドイツのトンカツなんてやりすぎだろというくらいぺらっぺらです。

それと、これに文句を言うのは日本人だけと思いますが、味噌汁の味がいまいち。たぶん味噌汁の味をちゃんと理解していない、あるいは出汁の味が分からないんだろうと思います。インドネシアあるあるです。
それに、トンカツソースの味もいまいち。これもローカルの味覚に合わせたというより、よく味を理解していないからだと思います。

でも人気なんで、わたしの味覚よりもカツンナカが正解ということです。みんな安くておいしいと言っています。

カツはカレーととても相性がよく、カツとセットでカツカレーをメニューに入れているお店が多いです。
なので、次はカレーライスにしたいと思います。

わたしは寿司、ラーメンの次はカレーライスが来ると2010年にサンフランシスコにいたときに思っていました。やっぱり来たなという感じです。

いいなと思ったら応援しよう!