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インドネシアの新幹線Whoosh開業から1年 どうなった?

Whooshが正式運航を開始してから1年が経ちました。
日本の論調は、日本を裏切って中国と契約した裏切り者、日本の真似をした中国の低レベルの技術を使っているいまいちな鉄道という、やっかみが混じった誤解の多いものでした。

実際には、中国の技術は多くの分野ですでに日本を追い抜いており、高速鉄道についても日本より優れています。
また、インドネシアの新幹線のレベルはとても高く、スピードは日本よりはるかに早いですし、時間通りの運航や行き届いた清掃など、素晴らしいサービスが提供されています。

そうは言ってもわたしはこう思っていました。1年間継続出来て初めて素晴らしいサービスといえると。
インドネシア人の性格を考えれば、決められたことをしっかりやり続けることは苦手で、すぐに手を抜いてしまうことが目に見えています。
さらには、メンテナンスの意識は低めで、劣化が早いのもよく見てきました。

なので、1年経ってどうなったのかは定点観測としてやっておきたかったのです。

✔ まず、時間を守ることについては、いまだにしっかりと守られています
それどころか、時間を守ることに固執しすぎているのか分かりませんが、時間前に出発することもしばしばです。
改札は出発5分前に閉められホームに入れなくなりますし、バンドン駅から新幹線の駅であるパジャジャラン駅へ行くKAI Feederも出発5分前には改札を閉めてしまいます。

✔ 車内放送は、シンプルになっています。
最初のうちは「時速350キロに達しました」というアナウンスをしていましたが、今はしなくなりました。
ただ、合言葉の「Whoosh whoosh whooooosh Yes!(ウーシュ フーシュ フーーーーシュ イエス!」は毎回やってくれています。
でも、最初のころは真似してつぶやいていた人たちは居なくなりました。さみしいくらい無反応です。おそらく聞きなれたのでしょう。

✔ 車両、駅はきれいなまま
インドネシアの場合、どんどん薄汚れていくケースが多いのですが、きれいなままです。
駅構内のタイルのかけやひび割れ、よごれはなく、イスもきれい。
車両の座席もまったく変わらずきれいなままです。
掃除が行き届いているのと、利用者の質も高いのかもしれません。
所得が高めの人が利用していると思いますから、これは大きいと思います。

✔ 駅構内と駅前の充実は差あり
駅構内は店が増えてきて、最初のころのスカスカな状況と比べると見違えるようです。
一方で、駅前の様子は変わっておらず、スカスカなままで、空き地も目立ちます。

ハリム駅については、全国グルメストリートみたいな魅力的な通路があったのに、閉店が目立ち始めています。
わたしが愛用していたミー・アチェの店もずっと閉まっています。
価格が高すぎるのと、味がいまいちなので、ドリンク以外は客がいないのです。
調理スペースがないから味がいまいちなのは仕方ないにせよ、価格はもう少し下げないと厳しいでしょうね。

✔ システムには改善がみられる
当初は乗り過ごすと時間変更できず、払い戻しもなく、丸損だったのに、無料で時間変更できるようになりました。
大きな進歩です。
予約アプリは変わりません。

✔ 価格は上がってきた
開業直後はキャンペーンを多発しディスカウント料金を出していましたが、最近ではディスカウント率が縮小してきています。
プレミアムエコノミー(一番安い席)は、平日15万ルピア(1500円)もあったのに、今は25万ルピア(2500円)はしますし、30万ルピア(3000円)のときもあります。

✔ 途中の駅はいまだに開業せず
パジャジャランとハリムの間には、本来カラワン駅があります。
ジャカルタから東にブカシ、カラワンと続く街で、日系企業が数多く進出している工業団地がたくさんあります。

工業団地に入居している日本人に聞いたところ、工事は続いているらしく、開業をあきらめたわけではなさそうです。

✔ 中国からの指導員が残っている
今現在の状況は確認できていませんが、半年経過の段階では、大量の中国人が車掌指導や運行管理で滞在していると聞いていました。
合弁企業(Whooshの会社名はKCIC:Kereta Cepat Indonesia China インドネシア中国高速鉄道)なので、合弁先に駐在するのは当たり前といえば当たり前ですが、実質中国人が運用しているとなると、割り引いてみなければなりません。

✔ 業績は計画を下回り赤字
値下げ効果もあり、まあまあの搭乗率だとは思うのですが、わたしの実感は50%いっていないです。
もう10数回乗っていますが、ほぼ満員になるのは最終電車とその1本前くらいです。

この会社は日本が関わったジャカルタの地下鉄MRTと違い決算を開示していません。その代わり、合弁会社の株主(国営建設会社)が上場しているため、彼らが定期的に開示します。

今年の夏あたりは計画を下回り赤字になっていると発表され、新幹線事業の赤字が会社全体の赤字を加速させているとされました。
一番の問題は乗車率が低いことですが、仮に満席になったとしても値上げしないと黒字にはならないでしょう。

MRTも同じ問題を抱えていますが、MRTと新幹線の一番の違いは借入金利です。
MRTは日本から金利ほぼゼロで借りていますので、支払金利費用が圧倒的に低く、プラス国からの補助金が大きく黒字です。この二つがなければ新幹線と同じ赤字構造になります。

新幹線の借り入れは中国からで、金利は2~3%です。超長期の借り入れとしては十分に優遇された金利とはいえ、一兆円を超える巨大事業ですから、借入金も大きく金利負担はかなりあります。

最後国が肩代わりしないと返せないでしょうね。おそらく交渉、取引でなんとかしようと思っていると思います。
インドネシアはその辺はなかなかしたたかです。

来年も定点観測をしたいと思います。

1年経過後のわたし

1年前

おわり









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