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MBAの授業の様子と感想(2週間経過後)

インドネシアのビジネススクールのレベルがどの程度なのか、授業ではどのような教え方をするのか興味をもってスタートしました。
わたしはMBAを踏み台にステップアップする野心的な若者たちではないので、成績は関係ないとはいえ、やるからにはさすがビジネス経験のある人間は違うと思わせたいという欲は拭い去れません。
それに日本からやってきた唯一の学生として貢献したいと思っています。

そんないろいろな思いを持ちながら2週間が経過したわけですが、クラスメートの優秀さは、さすがにエリート校だけあってやはりずば抜けていると思いました。
授業のレベルは比較対象がないので何とも言えませんが、議論のレベルや理解の深度は浅いと思います。ただし、社会人経験なくそのままビジネススクールに来たのが2/3、社会人経験といっても2、3年が1/3なので、深い議論をすること自体無理と思います。

以下もう少し詳しく、どんな授業が行われているのか、どう思ったかを書いていきたいと思います。

■ 会計の知識がない学生たちが授業にけっこうついてきているのに驚く

Financial Report and Controlは、今まで1回2時間の授業を4回行い、うち初回を除き3回はチーム別に与えられたケースの分析発表を行いました。ざっくり授業1時間、ケース30分、残り時間で授業のまとめといった感じです。

初日の授業では、Financial reportとFinancial statementは違うこと、Financial Reportがなぜ重要なのか、Financial Reportの構成について説明がありました。IFRSとかUS GAAPというものがあって、それぞれ欧州と米国が中心にルール決めをしていて、こういう組織があってという説明もあります。

ここで私が驚いたのは、生徒がまったくノートを取らず、黒板の板書もせず、黒板の写真も撮らずにただ聞いていたことです。
さらには、先生が説明したことを理解しているかクイズを出すのですが、みなパッと正解を答えるのです。
ちなみに私は複雑に考えすぎて「答えがない」とか「この質問の前提はなんだろう、前提が違うと別の答えになるぞ」などと考え間違えます。

日本にもいますよね。授業で先生の話を聞いていたら全部わかってしまう秀才が。テストが得意で、こう聞かれたらこう答えるんでしょ、とすぐにコツをつかんでしまう生徒がいますよね。あれですよ。
3億人近い人口の中から勉強が得意な選りすぐりの学生が集められているのはこういうことなんだなと思いました。
ただ全員がそういうわけではなく、半分くらいがそんな感じです。

わたしはFinancial Reportの勉強をする前に、Reportの中で使われる会計用語、数字が示す経営状態の知識、数字の読み方を勉強しないと、Financial Reportの内容を理解するなんて無理だろうと勝手に思っていたので、こいつらならもしかしてできてしまうのかも!?と衝撃を受けました。

■ だんだん細かくなってくるに従って学生たちもつらそうになる

2日目はFinancial Reportの中に出てくる会計用語の説明、IFRSのConceptual Frameworkについて詳細に説明がありました。
ここもついてきていた感じです。後半に仕訳(journal)と借方(Debit)、貸方(Credit)の説明になり、だんだん怪しくなっていきました。資産が増えたらどっち?費用が増えたら?とかのクイズにぽろぽろ間違え始めます。ここは誰でも混乱するところですからね。

3日目の授業はバランスシート4日目は損益計算書です。
わたしはもう十分な経験と知識があるのでついていけますが、自分が大学を出てすぐにこの授業を受けたらどうだったろうかと想像すると、予習をして臨んだとしてもおそらく1/100くらいの理解度だったろうと思います。
なにしろ、1時間程度でバランスシートの説明を終わらせるんです。損益計算書の説明は質問が多く出たため1時間30分かかりましたが短いです。EPS(一株あたり利益の計算や説明)や、Consolidated income(連結)やComprehensive income(包括)、OCI(Other comprehensive incomeその他包括利益)もこの中に入ります。
用語の説明はするけれど、その数字の多寡が何を意味するのか、どう数字が動くとどう評価できるのか投資家は何を見るのかという説明がないです(多分後でやるんでしょうけど)。
私はベンチャーキャピタル業界に入って、世話好きで親切な先輩たちに教えてもらい、支店で付き合いのあった監査法人の先生たちによる業務後の勉強会に参加したりして、自分の仕事で使う実例を元に2年かけて基礎知識を学びました。全部はカバーしていません。当時連結会計や包括利益は関係なかったんです。ベンチャー企業相手ですからね。まだ90年代でSOXもない時代だったし。入社前に会計の本も課題図書で渡され読んでいます。それをたったの1、2時間授業を聞いただけで理解しろなんて厳しいです。

ついに4日目の授業で学生たちの不安が一気に噴き出しました。きっかけは、先生がEPSの説明をしているときに、ある学生が「Overwhelmed」といってもう正直自分はついていけていないと弱音を吐いたときです。
それをきっかけに、自分だけではなかったんだとインドネシア人エリートたちがホッとして、次々に不明な点を質問し始めました。
先生もそれまで一方的にうむを言わさぬ厳しい感じで説明していたのが、ここは緩めどころと感じたのでしょう、インドネシア語を交えたりして、質問することも大事なんだと言ってガス抜きを図りました。さすが教師です。

ある学生(私の見るところリーダーシップもありかなり優秀です)が、覚えなければいけないのであればすべて覚えるが、この知識はどのように役立つのか、どうやって自分たちの仕事に使うのか、イメージを持ちたいと発言しました。

わたしはかなり共感しましたね。大きくうなずいていたと思います。私が大学時代に法律の勉強が大嫌いだったのはこれが理由です。逆に社会人になったら好きになりましたから。知識をどうやって生かすのかのイメージを持つことがいかに大事かということです。

先生は学生たちが卒業後にマネージャーとして大きな組織で働くときに、財務数値を見てなんらかの決断を下すのに役立つので、最低でも分析はできた方がいいねと言いました。MBAの授業なのでアカデミックではなく実用的な勉強なんだとも言っていました。

わたしは先生が甘すぎと思ったので、わたしの経験上の話と断った上で発言しました。
「あなたたちが将来自分で会社を始めて投資家からお金を集めようと思ったら、自分でBS、PL、CFが入った事業計画を作って投資家回りをするんだよ。投資家に数字の説明もしないといけない。銀行からお金を借りるときも同じ。全部一から自分で作れるようにならないとダメなんだ。」

ビジネススクールに入って2週間しかたっていない学生には厳しいかもしれませんが、2年後には余裕でできている優秀な若者たちだと思います。

■ ビジネススクールで学ぶには社会人経験があった方がよく、なるべく産業や国がばらけている方がみんなの理解が深まる。

Financial Reportと並行して、Organizational Behaviourという組織論や人事手法の授業もやっているのですが、実際に目標を与えられて評価を受けた経験がある方がイメージはつきやすいと思います。360度評価をやっている組織であれば、評価を経験し評価項目を目にしたことがあるかもしれません。

コンサルや金融機関の組織論と、製造業の組織論は企業文化や仕事のスタイルが違うので変わってきますし、国や文化の違いも出ます。
自分たちが何気なく普通のこととしてやっていることが、実は普通ではないとなったとき、なんでやっているんだっけと考えるようになるのがとても大事です。

アメリカのMBAがダイバーシティにこだわるのはアメリカ人の学生にとってもいいことだからだと思いました。
効率からいえば、同じ考え方の人間同士で、細かい背景の説明をはぶいて共通の理解をベースに議論を進めていく方が早いのに、あえて非効率なことをするだけの価値があるのでしょう。

多様性を高めると、授業ではそれ聞いてどうする的な質の悪い質問が多くなる(と感じる)し、また先生の力量がなければ質問の中から良いポイントを読み取って議論を深められないので、授業の運営はより高度になります。

まだ2週間なので、物事を複雑化させクラスメートの理解の妨げにならないよう、新しい切り口を持ち出すのは遠慮していますが、自分のケースの発表のときは、深い議論ができるようにしたいと思っています。
授業が終わったあとで、インドネシアではどうなのか、日本との違いを一人で確認にいっています。特に採用や人事評価、昇進とか聞きましたが、おもしろいです。

クラスメートたちがわかっていないような感じで書いてしまいましたが、私がもし同じ立場でなんの経験もないまま授業を受ければ、彼らの足元にも及ばないレベルの人たちです。若い彼らが急成長していく場に立ち会えるのは楽しみです。
とにかくすごい吸収力と成長スピードなのは間違いないです。







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