MBAのEthics(倫理)の授業 あなたの倫理観はどっちタイプ?
Ethicsの授業がかなりおもしろく完全にはまっています。先生が素晴らしいというのも理由の一つと思いますが、わたしは会社の不正がなぜ起こるのかにとても興味があり昔よく調べていたんです。そのことを思い出しました。
当時は欧米系の企業で起きる不正と、日本の企業で起きる不正は原因が異なると考え、日本ならではの不正の文化的な背景を調べようとしていました。欧米企業は個人の利益を最大化しようとしてずるいことをする、日本企業は組織を守ろうとしてずるいことをする、というものです。
今回テキストを読んだり、そこで引用されているおもしろそうな論文を読んでみると、どの国や文化でも不正のパターンは似通っているように思いました。
欧米系であっても東芝の粉飾のような「チャレンジ=無謀な目標を与えられる」があるし、三菱自動車をはじめ多くの自動車会社で発生する燃費不正問題「社会規範より組織を優先」があるのです。
わたしは修士論文のテーマに不正を選ぶのもおもしろいかもしれないと考え始めました。材料を集めやすいんですよね。
今回は社内不正の話をすると長くなるので、不正を起こす、または不正を防ぐ個人の倫理観についての授業で興味深い話があったので共有します。
個々人の倫理観を分類する
授業の前に、YourMorals.orgというサイトで、それぞれがどのような倫理観を持っているか事前に調べておくことになりました。
このサイトはアメリカで保守派とリベラル派がどのような倫理観を持っているのか、これまでいわれているような典型的な特徴を本当に持っているのか、年代によって変わることがないのかを調べる目的で立ち上げられたものです。
二つ受けるように言われ、1つはMoral Foundations Questionnaire、もう一つがSchwartz Values Scaleです。
Moral Foundations Questionnaire(倫理観がよって立つものは何か)
価値観を1. Care Concerns, 2. Equality, 3. Loyalty Concerns, 4. Authority Concerns, 5. Purity Concerns, 6. Proportionality Proportionalityに分けて出します。用語はあとで説明します。
一般的にアメリカではリベラルと言われている人は1.Care Concernsと2.Equalityが高く、保守派は4.Authority、5.Purity、6.Proportionalityが高いと言われています。
用語の説明をします。
わたしはどうだったかといいますと、Proportionalityが最も高く、次にLoyaltyが高く、あとはすべて平均以下の数値でした。最も平均から乖離したのがCareとEqualityです。
わたしは自分がリベラルだと思い込んでいたので驚きました。わたしの解釈はリベラルは他人に干渉しない自由人で、PureとAuthorityが低いタイプと思っていたのです。
ところがアメリカのリベラルはそれだけではなく社会主義的な要素が強いということですね。たしかに大きな政府か小さな政府かという対立軸はあります。
今回クラスメイト達が自分たちのスコアが意味するところを知りたがり、やたらと質問したので時間がかかりましたが、おかげでいろいろと分かりました。
わたしが特におもしろいと思ったのが、1/4くらいの学生がすべての項目の点数が高いと言っていたことです。
普通はあり得ないんですよ。例えば、EqualityとProportionalityを同じように高くするのは無理です。努力に関係なく同じ評価を得るべきというEqualityと、努力に応じて評価を変えるProportionalityは矛盾するんです。
わたしは先生が何て言うか楽しみに聞いていました。あなたは嘘つきですねというんじゃないかと思っていたんです。
ところが、この結果はあると言っていました。矛盾を抱えて葛藤するのが人間なのだと。わたしの頭の中に西田幾多郎の”全体矛盾的自己同一”が浮かびました。
そして、こんなことも言っていました。全部の点が高いタイプは、すべての人に良い顔をしたい、すべてにおいて完璧でいたい、その結果どうしたらよいのか分からなくなって決められないタイプなんだそうです。
そういわれた学生は図星だと言っていました。それだけでなく、周りの親友たちが手をたたきながら本当にその通りと言っていたのです。
バンドン工科大学のようなエリート学生に多いタイプなのかもしれません。
小さい頃から親や先生の言うことを聞いて完璧な人間であろうと一生懸命努力してきたんでしょう。
ちなみに、わたしがグループワークで好んで一緒になるとても優秀な努力家の女子もこのタイプで、唯一違うのがCare Concernsだけが平均を下回るところです。「わたしは薄情な人間なのかもしれない」と気にしていました。そういうことなんです。
すべての倫理観を正しいと考え、守らなければいけないと思っているのです。
Schwartz Values Scale(シュワルツの価値分類)
10の価値観を分類し、大きく4つのタイプに分け、それぞれが相反する傾向にあるとしたものです。
例えば、下の円グラフでいうと、Openness to ChangeとConservationは相反します。
これは1学期で習ったCompeting Value Frameworkでも出てきていて、わたしの分類「平家海軍国際派vs源氏陸軍国内派」と同じで変化を歓迎するタイプと変化を好まないタイプです。
10の価値観の解説をします。
わたしが高かったのは1番がSelf-Direction、2番がStimulationで最初からそうなると分かっていました。典型的な変化を求めるタイプです。
一方で一番低いのはPowerとHedonismなので、本来は近しいタイプが低くなっています。
リクルートの性格分析で、もっとも会社で成功して出世するタイプとされるのは、AchievementとPowerの数値が高いタイプと言われていました。わたしが就職活動をしていた頃の話で今は違うかもしれません。
わたしが同じサークルで一緒だった心理学専攻の学生は質問の意図は全部わかりどう答えるとどういうタイプに分類されるか分かると言ってました。
話を戻し、この矛盾が生じる傾向は他のクラスメイトにも見られたので、シュワルツ教授の無理やり感を感じました。
無理に対立とか言わない方がいいんじゃないのという感じです。
Self-Directionの反対はPowerなのに、円グラフだと微妙にずれちゃってます。
StimulationとHedonismが近いというのは分からないでもないですが、わたしの場合はHedonismでは刺激を得られないタイプなんですよね。
自分を追い込んで限界に挑戦したいマゾタイプなので、ある種正反対なんです。わたしのようなタイプは結構多いと思いますけど、なんでこういう配置になっちゃうのかなという感じがします。
PowerとAchievementの反対にUniversalismとBenevolentを配置しているところも欧米人っぽい配置に感じます。
権力や達成は利己的だと断定していますが、わたしは理念や志の実現のために権力を求める人がいて、そういうタイプはUniversalismが同時に高いと思います。政治家とかそうあって欲しいですね。
授業のおもしろさが伝わったらよいのですが、わたしの文章力のなさで伝えられなかったかもしれません。
その場合は長文を読んでいただいたのに申し訳ありません。