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日本は本当に住みやすい場所なのだろうか
チベット・インド旅行記
#26,国境へ②
【前回までのあらすじ】1ヶ月にわたるチベット生活を終え、バスはネパール国境へ向けて出発した。
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ネパール国境行きの乗合バスは十数名のツーリストたちでワイワイガヤガヤ楽しそうだ。
乗客の半数以上は韓国人のグループ、残りはイタリア人、フランス人、オーストラリア人、そして日本人の姿もちらほら。
私とチンゴン以外は皆同じホテルの同居人だった為か、キムパやらナッツやら交換し合ったりとずいぶん親しそう。
私も、慌ててカピカピになった干しブドウをカバンの底から引っ張り出して、皆に配って回った。
出発してしばらくすると、前方の座席に座っていた韓国人のおっちゃんがマイクを手にアナウンスを始めた。
「え~、皆さん、これからこのバスは4日間をかけてチベットとネパールのボーダー(国境)まで向かいます。
今日はラサの隣のシガツェの街まで行ってから宿泊する予定です。
それでは皆さん、ゆっくりとくつろぎください。」
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シガツェの街は先週行ったばかり。
見慣れた景色をぼーっと眺めていると、通路を挟んだ向かいの席の女の子が声をかけてきた。
「ねぇねぇ、あなた日本人?やっぱり。
私、マリカっていうの。オーストラリア人よ。
ここに来る前は日本にも住んでた事あるんだ。」
マリカは赤毛のアンみたいなおさげと、そばかす顔が可愛らしいハツラツとした女性で、東京で2年間、英語教師をしていたのだそうだ。
「日本!それはすごいね!どう?日本は楽しかった?」
と何気なくマリカに聞いてみると。
「う~ん、そうねぇ…。
英語のクラスで教えていた日本の子供たちは可愛かったし、お母さんたちにも良くしてもらったけど…。
もう一回住みたいか?って聞かれたら微妙だな。
それより、この旅の次はフランスに一回住んでみたいんだよね。」
と苦笑いで笑っていた。
マリカのあんまり日本楽しくなかった発言にはリアクションに困ったが、でもその気持ちはちょっぴり理解できる気がした。
私は日本に生まれて、日本人の社会の中で育ってきたから、そんなには気にならないけれども。
何も知らない外国人がいきなり日本の社会で暮らすとなると、周りの空気を読む文化とか、無言の同調圧力とか、他者への無関心さとか、正直しんどいだろうなぁと思う。
東京で暮らした2年間。
アパートを間借りして、職場と家の往復の日々を過ごしていたのだろうか。
心通わせる友達や、親身になって相談に乗ってくれる人は東京にはいたのだろうか。
そんな事を考えて気まずそうにしている私を気遣ったのか、マリカは話題を変え、
「そういえばユーキは何で旅をしているわけ?」
と聞いてきた。
何で旅。
面と向かって聞かれると答えに困る。
ちょっと考え込んでから、
「分からない。でも分からないから旅に出ようと思ったんだ」
と返すと。
マリカにとっては予想外の答えだったのか、じっと私の顔を覗き込んでから、
「そっか、いいね。ユーキにとって旅はバケーションじゃないんだね。
そうやって言えるのいいな。
私、日本に居る時にユーキみたいな人に会えたらよかったな。」
と、今度は私にとっての予想外の答えで返してきて。
「え!?まさかの正解ですか!」
と思わずドギマギしてしまったが、マリカの横に座っているナイスガイなボーイフレンドがニヤニヤしながらこっちを見ていたので慌てて平静を装った。
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「でも。」
マリカは思い出したように繋いだ。
「私、『懐かしい』って日本語、好きだったな。
英語にはね、『懐かしい』っていう感情を表す単語は無いんだよ。
昔の出来事や記憶を思い返して、懐かしいな~。って表現できる日本語、私、結構好きだったな。」
懐かしい…、か。
言われて不意に思い返す、楽しかった思い出の数々。
思えば日本を出発してからも色々な事があった気がする。
いつの日か、そう何十年も経った後に、この旅の事も「懐かしい」と思える日が来るのだろうか。
不意にそんな事を思った。
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そして夕方、バスはシガツェの町に到着した。
長時間の移動から解放されて思い思いに体を伸ばす乗客たち。
明日の移動も長くなりそうだ。
今日はむやみに出歩かず、早々と休む事にした。
国境への旅はまだまだ続く。
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⇨国境へ③へ続く
【チベット・インド旅行記】#25,国境へ①はこちら!
【チベット・インド旅行記】#27,国境へ③はこちら!
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