CDPって有料なんだね
日本では、上場企業に対してサステナビリティに関する情報記載を義務付けられようとしている。所謂『非財務情報』と言って、従来は決算情報を詳細に説明するのが有価証券報告書であったのだが、そこに決算情報以外の『非財務情報』も掲載せよというのだ。
これは、IFAS(イファースと読む)と呼ばれる国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board:IASB)が定めた国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards:IFRS)が元であり、企業の株式評価を世界基準で統一し、株式の流動性を高める目的があるものと思っています。
世界基準で統一していく中で、昨今の気候変動における責任を世界中の国家が担うだけでなく一定の企業にもその責任を負わせる目的で、IFRSでは有価証券報告書に『非財務情報』を掲載させる方向で日本でも金融庁で議論が進められています。
金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(第3回)議事次第
さらには、CO2削減に積極的でない企業からは課徴金を取るとの議論まで進んでいるのだから、なんだか雲行きが怪しい。
肥満症薬「先太り」10兆円市場へ/温暖化ガス削減未達で課徴金
(7分あたりからご覧ください)
すでに日本でも『温暖化ガス排出量取引制度』が始まっているが、その動きは活発ではない。本制度の実効性を高める上でも、未達企業には課徴金を課すのでしっかり使いなさい、ということなのだ。
実際には、CO2排出量の高い電力会社や鉄鋼会社などが対象になるとみられているが、自社の排出量を自社で相殺できない企業群は、排出量取引制度を利用して他社の削減分を購入するということになる。
すなわち、そのコストは電気代に上乗せされていくのだから、その結果負担は消費者である国民に降りかかっていくことになる訳だ。
気候変動を抑制するコストを、広く国民、地球市民で負担しましょうと言えば聞こえは良いが、先行するEUでは1トンのCO2に対して100ユーロとなっていて、現在の為替換算では16,000円に相当する。
有価証券報告書における非財務情報開示もタダではない
冒頭に書いた日本の上場企業における有価証券報告書への非財務情報開示はタダではない。企業の営利活動において、それらとは別に非財務情報開示に向けた取り組みをせねば、それは成し得ない。すなわち、上場企業はそれに対するコストを負担して非財務情報開示を行うわけだ。
結果、そのコストは販売単価に上乗せとなるのである。
この非財務情報開示について、大きな指標となるのがCDPと言われるものである。
日本においては、一般社団法人 CDP Worldwide-Japan がその任を担っている。企業の気候変動や水利用、生物多様性などに関わる活動を詳らかに報告できるのがCDPであり、それに対してA、B、C、Dあるいは未回答のFまでスコア付けされるのも特徴であり、『非財務情報開示』について世界中の誰でもが同一基準で評価できるのが利点であると言われている。
さて、ここでようやく冒頭のタイトル回収に至る。
CDPは、イギリスを本拠とする非政府組織(NGO)です。
英語で示されているので、少しずつ「みらい翻訳」を使って日本語化していこう。
CDP is a not-for-profit charity that runs the global disclosure system for investors, companies, cities, states and regions to manage their environmental impacts. The world’s economy looks to CDP as the gold standard of environmental reporting with the richest and most comprehensive dataset on corporate and city action.
CDPは、投資家、企業、都市、州、地域が環境に与える影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営する非営利の慈善団体です。世界経済は、企業や都市の活動に関する最も豊富で包括的なデータセットを備えた環境報告書のゴールドスタンダードとしてCDPを期待しています。
Our vision and mission
We want to see a thriving economy that works for people and planet in the long term. We focus investors, companies, cities and governments on building a sustainable economy by measuring and acting on their environmental impact.
私たちのビジョンと使命
私たちは、長期的に人々と地球のために働く繁栄した経済を見たいと思っています。私たちは、投資家、企業、都市、政府が環境への影響を測定して行動することで、持続可能な経済を構築することに焦点を当てています。
Our values
We default to transparency
We place accountability at our heart
We learn and improve
We succeed together
私たちの価値観
1.私たちは透明性をデフォルトにしています
2.私たちは説明責任を中心に据えています
3.私たちは学び、改善しています
4.私たちは一緒に成功します
The challenge
We must act urgently to prevent catastrophic climate change and the irreversible loss of nature and habitats. That starts by being aware of our impact so that investors, companies, cities and governments can make the right choices now.
In 2020, we celebrated our CDP’s 20th anniversary - watch our story now.
課題
私たちは、壊滅的な気候変動と自然や生息地の取り返しのつかない損失を防ぐために、緊急に行動しなければなりません。それは、投資家、企業、都市、政府が今、正しい選択をできるように、私たちの影響を認識することから始まります。
2020年、私たちはCDPの20周年を祝いました。今、私たちの物語をご覧ください。
Why ‘CDP’?
CDP was established as the ‘Carbon Disclosure Project’ in 2000, asking companies to disclose their climate impact. Since then, we have broadened the scope of environmental disclosure, to incorporate deforestation and water security, while also building our reach to support cities, states and regions. By shortening our name to ‘CDP’ (in 2013) we have been able to both preserve the global brand we were known for and address the necessity of understanding wider environmental impact.
In 2021 we launched a new strategy that expanded our horizons further still to cover all planetary boundaries. Our ambition continues to grow, expanding to new areas such as biodiversity, plastics and oceans, and recognising the interconnectedness of nature and earth’s systems.
なぜ「CDP」なのですか?
CDPは2000年に「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト」として設立され、企業に気候変動への影響を開示するよう求めています。それ以来、私たちは環境情報の開示範囲を拡大し、森林破壊や水の安全保障を含めるようになりました。また、都市、州、地域を支援する活動も拡大しています。2013年に社名を「CDP」に短縮することで、私たちの知られているグローバルブランドを維持すると同時に、より広範な環境影響を理解する必要性に対処することができました。
2021年には、地球上のすべての境界をカバーするために、さらに視野を広げた新しい戦略を開始しました。私たちの野心は成長を続けており、生物多様性、プラスチック、海洋などの新しい分野に拡大し、自然と地球のシステムの相互関係を認識しています。
How we are governed and funded
CDP Global is an international non-profit organization comprising of CDP Worldwide Group, CDP North America, Inc. and CDP Europe AISBL. It is directed by a board of trustees and board of directors respectively. As an international organization, CDP receives funding support from a wide range of sources.
どのように管理され、資金調達されていますか
CDP Globalは、CDP Worldwide Group、CDP North America, Inc.、CDP Europe AISBLで構成される国際的な非営利組織です。それぞれ、評議員会と取締役会によって指揮されています。国際組織であるCDPは、幅広い資金源から資金援助を受けています。
と、いう風に書かれていました。
CDPという組織がどのような資金で維持されているのか、そこをもっとよく知る必要があるのですが、その一端を下記の『回答事務費用』の側面から見ていきます。
回答事務費用
https://cdn.cdp.net/cdp-production/comfy/cms/files/files/000/007/965/original/CDP_fee_FAQ2023_JP.pdf
彼らのサイトに掲載されたPDFには下記のように説明されています。
回答事務費用にはどのような選択肢がありますか?
Essential level fee 106,000 円(+消費税)
⚫ CDP コーポレートダッシュボードページ等を通じた回答
⚫ CDP ツールの利用(レポーテイングフレームワークとガイダンス)
⚫ CDP を通じた情報開示により(投資家及び顧客等のステークホルダーとの)対話の機会
Foundation level fee 295,000 円(+消費税)
⚫ CDP コーポレートダッシュボードページ等を通じた回答
⚫ CDP ツールの利用(レポーテイングフレームワークとガイダンス)
⚫ CDP を通じた情報開示により(投資家及び顧客企業等のステークホルダーとの)対話の機会
⚫ CDP ジャパンイベントの優先的参加権限
Enhanced level fee 702,000 円(+消費税)
⚫ CDP コーポレートダッシュボードページ等を通じた回答
⚫ CDP ツールの利用(レポーテイングフレームワークとガイダンス)
⚫ CDP を通じた情報開示により(投資家及び顧客企業等のステークホルダーとの)対話の機会
⚫ 【CDP サポーターマーク】ロゴデーターの付与(希望者は別途要申請)
⚫ CDP サポーターとして CDP ウェブサイトへの組織名の掲載
⚫ CDP イベントでの企業名紹介(ご要望がある場合のみ)
⚫ 企業サスティナビリティレポート等への CDP ディレクターからのコメント(ご希望の場合のみ)
⚫ CDP ウェブサイトからの他社回答閲覧無料回数 100 回(通常は 20 閲覧回数まで)
⚫ 無料 CDP ベンチマークレポート作成(英語、同業他社 10 社との詳細な比較内容含む、別途申請フォームより手続きが必要となります。)
⚫ 1 社 1 名の人数制限がある CDP イベントに 2 名までの参加権限
⚫ 関連する CDP 認定パートナーとの 1 時間の無料コンサルテーション
⚫ サプライチェーンにおける環境活動を把握するため、上位 50 社のサプライヤーを対象とした補完的なスクリーニングの実施
回答事務費用とは何ですか?
CDP を介して情報開示するための費用です。この回答事務費用は、料金レベルがいくつか設定されており、その料金レベルに応じたメリットを享受することができます。
彼らの収入は上記URLで見ることができます。
このサイトには下記のように書かれています。
How we are funded
CDP’s funding comes from a combination of government and philanthropic grants and mission-complementary fee for service (‘F4S’ activities). The combined income of the members of the three legally separate parts of the CDP Global System: CDP Worldwide Group, CDP Europe AISBL Group and CDP North America in the year ended 31 March 2022 (2021/22) was £55.3m (US$69.3m) and came from the following sources:
• Government grants 3.9%
• Adminstrative fees 7.4%
• Philanthropic grants 55.9%
• Sponsorship and partnerships 5.7%
• Data sales 7.6%
• Service based membership 18.5%
• EU Commission Public grants 1.0%
資金調達の仕組み
CDPの資金調達は、政府および慈善団体からの助成金とミッション補完型サービス報酬 (「F4S」活動) を組み合わせたものです。CDPグローバルシステムを構成する法的に別個の組織であるCDPワールドワイド・グループ、CDPヨーロッパAISBLグループ、CDPノースアメリカのメンバーの2022年3月31日終了年度 (2021/22年) の総収入は5,530万ポンド (6,930万米ドル) で、以下の財源から得られました。
• 政府助成金3.9%
• 管理手数料7.4%
• 慈善助成金55.9%
• スポンサーシップとパートナーシップ5.7%
• データ販売7.6%
• サービスベースのメンバーシップ18.5%
• EU委員会の公的助成1.0%
すなわち、年間 6,930万米ドル、現在の為替で100億円余りの資金を集めているのです。また、その18.5%は前述の「回答事務費用」を含むメンバーシップの費用ということですから、18億円も集めているとは驚きです。
繰り返します・・・
この費用は、結果的に消費者である国民に降りかかっていくことになる訳です。
なんだかなぁ、これでいいんだろうか?
地球温暖化は儲かる
って誰かが言ってたよね・・・儲けてるのは誰なの?どこの団体、企業、個人なの?あるいは、どこかの国なのか??
なんか、腹に落ちないな・・・
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