「愛新覚羅溥儀」って読めますか?
1987年。
日本では、俵万智さんの「サラダ記念日」が大ブーム。中二の私も「なんとか記念日」をサラダ記念日になぞらえて作ってみたものの、次の年にはそんな記念日のことなど忘れている始末の14歳を過ごしていました。
さて、表題の「愛新覚羅溥儀」ですが、当然のように1987年の私には読めなかったのですが、その頃ある映画を見て読めるようになりました。
その映画の名は「ラストエンペラー」。
清朝最後の皇帝であり、満洲国の皇帝にもなった、あの愛新覚羅溥儀(あいしんかくらふぎ)が主人公の映画です。
ジョン・ローンが主演、それに坂本龍一さんが出演して楽曲も行われたので、ご記憶がある方も多くいらっしゃるかと思います。
そして、ここまで読んでいただいた皆様のお察しの通り、コロナ禍の緊急事態宣言を受けて自粛生活の中で約30年ぶりに観ましたよ。ラストエンペラー。
当時の記憶が曖昧で、とにかく長い映画だったな〜くらいしか印象になかったのですが、改めて見てみると、それはそれはさも新作映画を見たのではないだろうかくらいの感動を得たのです。(ありがとう。)
「なんとか記念日」を翌年に忘れるような少年でしたから、それもそうなんですが何を隠そう、それほど記憶力がよろしくないのが自慢で、
・断片的に
・興味があること
・であればどんなにくだらないことでも長期間覚えている
といった記憶の傾向があります。
さて、ラストエンペラー。ここでは、映画のストーリーを語るつもりもありませんし、興味がある方は是非是非一度見ていただきたいのですが、映画を見ていてとてつもない違和感を感じたのでそのことについて触れたいと思います。
清朝最後の皇帝のお話ですから、当然舞台は中国です。
映画が始まって最初に感じた違和感。
それは、
みんな英語で話してる。
・・・。
そうなんです。舞台が中国なのに。
英語なんです・・・。
紫禁城で交わされる言語が。
英語なんです・・・。
ベルトルッチ監督ですし、第60回アカデミー賞作品賞・監督賞など9部門受賞作品ですし・・・。
でも、英語なんです・・・。
会話が。
なんていうんでしょうか、
・刺身を食べようと思ってお醤油を猪口にさしたはずなのに実はソースだった時のような・・・。
・便座に腰を下ろしたら便座の中ぶたが下りていなくてひんやりした時のような・・・。
・新しい担当の方からメールが来た時にお名前が「瑞稀さん」や「遥さん」と書かれていて女性かな?と思ったら実際には男性だったような・・・。
そうです。
「思ってたんとちゃう現象」です。
だって、中国が舞台ですから、そりゃ中国語の方がしっくり来ます。
それでも大作映画。長時間見ているとそれに慣れてきます。
まさに、大学生の頃、人生で初めて宝塚歌劇団の舞台を見に行って、最初に女性が男性の役柄を演じていることに違和感を感じたのですが、3分もすればその世界観に身も心も包まれてしまうあの感覚なのです。
さあ、この「思ってたんとちゃう現象」はビジネスでもよく見かけます。
いわゆる「違和感を感じる」というものです。
例えば、プレゼンテーションの資料を見ていると、やたらと格好いい欧米系の白人男性や女性が使われているものを見かけます。
・笑顔で握手している海外の方同士の写真
・やれやれと両手で掌を上に広げて肩をすくめている海外のビジネスマンの写真
・思いっきり全力笑顔の海外の方の写真
わかりますよ。格好いいから。
わかりますよ。ハリウッドスターのようですし。
でも、これは伝わらないんです。
しかもそれほど長時間見るものではないので慣れも出てきません。
違和感が違和感のままだったりします。
結局、「誰」に伝えるのか?
これを見誤ると、全く相手に響かないプレゼンになってしまうんですね。
「これは自分のことじゃないな〜。」
と思わせてしまったら興味・関心が一気になくなり、話も聞かない、見もしない。
『この違和感はどこから来ているのだろうか。。。』
日常においての違和感に気付けると、資料も大きく変わっていきますから是非自分の違和感を大切に。
ところで、冒頭にあった「愛新覚羅溥儀」ですがこの6文字が読めるようになったことで当時は色々と興味の枝が伸びたことを思い出しました。
映画の中で溥儀が辮髪(べんぱつ)を自ら切り落とすシーンがあります。
辮髪というのは、頭頂部から三つ編みで長い髪を後ろに垂らしている独特のヘアスタイルです。
私が小学生の頃に流行っていたキン肉マン(漫画)のキャラクターでラーメンマンという超人がいるのですが、彼がまさに辮髪でした。頭頂部から三つ編みで長い髪を垂らしている不思議なヘアスタイルだな〜と思いながらも、その他この髪型のイラストなどをよく見かけたせいか、昔中国ではこういう髪型だったのかな〜と思っていたものです。
ところが事実は違っていまして、実は清という国は満州民族が統治したために自国の文化を浸透させるという意味合いで辮髪を中国で標準の髪型にしたことを当時知りました。
これは私の中では小さなインパクトでありまして、この固定観念の枠を払拭してくことも「ラストエンペラー」から得ることができた恩恵の一つです。
ただ、それだけでなく固定観念を持たせてくれたそれまでの偏った情報収集ルートから新たに真実に近づくことができたきっかけに至るまで、まるっと全てのプロセスが必要だったわけなのですが、「ラストエンペラー」だけでなくそこに至るまでの自分を形作ってくれた事にもありがとうといえるじゃないか〜!!という大袈裟な包括的納得感を得た14歳だったわけであります。
ありがとう、ラーメンマン。ありがとうラストエンペラー。
さて、「愛新覚羅溥儀」同様、最近のビジネスシーンにおいて、いよいよキラキラネーム組の皆様も社会人となり始めており、時々読めないお名前の方に遭遇いたします。
これまでは、「変わった苗字ですね〜。どちらのご出身ですか?」と伺ってお話ししてその方の出身や出所など色々とお話をお伺いできたのが、
「変わったお名前ですね〜。どういった念いで命名されたのでしょうか〜?」
のようにトーク内容が変わっていくような気がしてなりません。
新たな人生の気づきとこれまでの偏った固定観念を払拭させてくれる若者たちへ。(というよりもむしろその両親たちへ)
ありがとう。