からくり屋敷から始まるオンラインフィールドワーク
先に言っておくが、オンラインフィールドワークでおこなっていることは、ただみんなで新しいことを知るだけではない。そのプロセスで子供の能力を開発する目的のもと、実践しているレッスンである。
4月初回の様子を話しながら、その目的を伝えたいと思う。
4月初回の様子(前半戦)
4月 こども新聞でみた、からくり屋敷が何か気になるという意見が出る。
そこで「からくり屋敷」を検索。上位サイトで戸隠流忍者村がヒット。
「からくり屋敷って忍者なのか?え、忍者気になる?」
「気になる!」ということで、戸隠流忍者村のページをクリック。
こうして今回のオンラインフィールドワークがはじまる。
サイトをみているといくつか疑問がわいてくる。
「忍者村はどこにある?」
地図のタブを開くと、長野県長野市の北西にあった。
「長野市はお墓参りで去年行った!」ということで、不思議な縁を感じることになる。→けっこうこれ大事。実際に行ってみたくなるフックになる。
「そもそも戸隠ってなに?」
ウィキペディアをみると村の名前だとわかる。
ふーん、とここで終わりがちだが、さらに追求。
「戸隠って名前の由来は?」
ウィキペディアに「名前の由来」とあるのを見つける。
1)日本神話で、天岩戸を開いた天手力雄命(アメノタヂカラオ=相撲の神様)の子孫が当地に移入したという説。
2)九頭一尾の鬼が行人の法音によって当地の守護者となったという説
「どっちの方を信じる?」と聞くと、「アメノタヂカラオ!!」ということでこちらをさらに調査することに決まり。
さて、ここで30分の前半戦終了である。
ここまでの内容をひとまず箇条書きでいいからまとめることに。
初回なので、後半戦に抽象構成作文法を使って、全体がわかるマップ作りをはじめると約束して、30分の自習時間。
4月初回(後半戦)
後半戦開始。
まずは箇条書きしたメモを確認。メモしながら新たに疑問に思ったこととかないかとたずねるが、まぁ初回なのでそりゃありません。
それを見越して、こちらで資料を準備。
一つ目の資料。
日本忍者協議会の「忍者グローバル調査」
https://www.lisalisa50.com/research20170502.html
観光客のほとんどが忍者を知っていて、しかもその半分は「忍者になりたい」(!?)と思っていることが判明。
忍者が外国人の名物観光になっていることを資料から読み取る。
「ここで、何か質問はない?」とたずねる。
「忍者村ってだれがくるの?」
「やっぱり外国人じゃないの」
「いまコロナだけど」
「たしかに…」
ということで、2019年の訪日観光客数と現在の観光客数をくらべることに。
「月別・年別統計データ(訪日外国人・出国日本人)」https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/visitor_trends/index.html(JNTO日本政府観光局より)
280万人いた訪問客が5万人に激減していることがわかる。
ここから話し合いながら、マップを作成。
「戸隠にどうしてアメノタヂカラオがいるのか?」
「九州から長野まで飛んできたらしい…なんで?」
「いまの戸隠村ってどうなってる?」
「家からどうやって戸隠村までいける?」
「どうせなら一泊することを念頭に行き方から宿泊施設まで調べて家族をガイドしよう」
「そもそもからくり屋敷ってなんなの?」
「というかどうして忍者が長野にいるの?」
など疑問がわきでてきたので、それをマップに記入。
こうして次回までにこれらを自分で調べてさらに話を広げ、その後文章にまとめられるならまとめてもらうということになった。
感心だけで終わらせない
このようにオンラインフィールドワークは、拙著の「オンライン学習本」で書いた「好きなことからどんどん能力開発につなげていく」という方法を実践しているのだということが、わかるひとにはわかると思う。
実際に本で書いたみたもののどうやってやるのか、実際にこんなふうにやると、教科関係なく子供の能力を伸ばし、結果的に受験の素養も身につけられるということをここで実践していきたい。
オンラインで「探求学習」するとなると、どうしても情報の共有だけで終わりがちである。「へーそうなんだー」と感心してその次のアクションにつながりにくい。
この点を解決しなければいけないし、やっぱりレッスン中にも子供のあらゆる能力を開発するようにしていかなければならない。
そうでなければ、いいドキュメンタリー映画をみたほうがよっぽど意味があるということになりかねない。(現に探求学習という名を売ってはいるが、結局そうなってしまう教育機関もある…)
オンラインフィールドワークで伸ばしたい能力3つ
僕が個人的にこのグループレッスンを通して伸ばしたい能力は大きくいえば、以下の3つだ。
・デジタル機器を使って情報を即座に見つける「方法」を開拓する
(情報は、歴史資料・グラフや表資料・地図読み取り・地形の仕組み・交通情報など。これらが理科社会の素養となる)
・学んだことを即座に文章化できる(筆記あるいはキーボードで)
・話し合いを発展させる「疑問」を持つことができる(→「質問ある?」と聞くとだいたい「ないです」と答えるところを何とかしたい。)
ガイドさんのように自分の言葉にする
これらは『オンライン学習本』に書いたことでもあるが、このプロセスは言うならばガイドさんがやりそうな仕事ともいえるだろう。
公立中高一貫校の適性検査のなかで、「子供たちで自分の町を案内することになりました」という体裁の問題が割とよく出題される。
つまり、ガイドの仕事を皮切りに、理科社会を融合したような問題が出てくるのだ。
ガイドの仕事をするという視点はけっこう使える。あまり知らないことを自分なりに調べて、他人に語り、ちゃんと案内するというのは主体的な学びそのものである。
たとえば将来大学のゼミで発表するときにも使える。「じゃあ君は次このテーマで発表ね」と練習がてら未知の領域について調べることだってある。
そして、受験の過去問研究でも使える。よく「自分の受ける学校の問題については教師よりも詳しくなるようでなければいけない」と僕は生徒にいう。どんな傾向で問題が出題されるのか、来年度にどんな問題が出題されると予想されるのかなど自分なりに徹底的にリサーチすることで、結果的に点数も高得点をとることができる。
ということで「ガイドのような仕事を遊びながらやってみる」という視点でオンラインフィールドワークはやっていきたいと思っている。
まだ新規参加者募集中。興味ある人はご連絡ください。
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前田大介『本で書けない話』
教育・子育てのお悩み相談や多岐にわたる教育活動などのエッセイを毎週連載。 計算や漢字の非公開動画もこのマガジンでこっそり公開していきますー
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