『デザインとリサーチで価値が実り続けるチームの作り方』イベントレポート
デザインとリサーチで価値が実り続けるチームの作り方をテーマに、スマートバンクのリサーチャーとマネーフォワードのプロダクトデザイナーが、それぞれのチームでの実践的な取り組みを共有しました。
ユーザーの声を聞き、チーム内で活発な議論を展開し、具体的な成果に結びつけるまでのプロセスを紐解くイベントのレポートをお届けします!
開始の挨拶〜乾杯
今回のイベントは、瀧本はろかさん著書の『UXリサーチの活かし方 ユーザーの声を意思決定につなげるためにできること』に関わった方々の繋がりをもとに、それぞれの現場のお話が聞ける場として開催されました。
最初に、MIMIGURI小田さんから本日の流れをご紹介いただき、その中で「コメンテーターからの厳しい質問もあります」&「リアルタイムで会場のみなさんからのご質問も受け付けます」とお言葉をいただくと、会場の方々がそれまでスクリーンとスピーカーに注いでいた視線をフロア中に巡らせてご確認される様子も見受けられました。
さらに、ドリンクサポーターであるサッポロビールさんに乾杯の音頭を!というリクエストもありつつ、それは懇親会でのお楽しみということで……みなさんそれぞれ飲み物を手に乾杯!
イベントスタートです!!
スマートバンクさんの発表
瀧本 はろかさん&福嶋 瞭さん
『よく見る、よく聞く、よくする』
タイトルがすでにキャッチーで、引き込まれます。この『よく見る、よく聞く、よくする』というのは教育者である羽仁もと子さんのお言葉だそうで、その言葉の深さは、羽仁さんと縁のある千葉幼稚園のサイトに詳しく載っていました。ご興味のある方はぜひご覧ください。
スマートバンクのプロダクトデザインの特徴
スマートバンクでは、デザイナーは各チームに所属し、リサーチャーはプロジェクトに応じて柔軟に関わります。まるで「遊撃隊」のように、必要な時に必要な場所で力を発揮するスタイルです。リサーチャーとデザイナーの役割は明確に分かれており、デザインプロセスは「リサーチ→要件定義→プロトタイプ作成→実装」という流れで行われます。ただし、常にこの順番通りに進むわけではなく、状況に応じて柔軟に調整しながら進めていきます。
リサーチャーはプロジェクトをリードし、ユーザーインタビューのシナリオ作成や実際のインタビュー、要件定義書のレビュー、プロトタイプの評価など、多岐にわたる役割を担います。一方で、デザイナーやエンジニアも積極的に意見を出し合い、協力してプロジェクトを進めるのがスマートバンクの特徴です。
協業の工夫
各職種のコミュニケーションを考える時の工夫として、「誰かのことを理解したい時、『よく見る』がその一歩である」ということを登壇タイトルのキーワードを用いてわかりやすく、そして共感しやすくご説明してくださいました。(改行は登壇スライドに倣っています)
具体例として、瀧本さんと福嶋さんはプロジェクトのことも含め近況を伝えあい、課題について取り組んでおられるそうです。
大事にしていること
デザインのことを考えてリサーチ設計する際に下記のようなことを考ていらっしゃるそうです。「よく聞く」「よく見る」が随所で行われていることが項目から見えてきます。
ユーザーが普段使う言葉
モックの作り込みと全体納期
リアルな反応
どんな状況でサービスに出会い、使い始めるか
デザイナーが気にかける、誰のどの課題をどうやって解決するか、どんな価値を提供するか。その視点を拾えるよう、リサーチにも反映されているとのこと。
他にも「よくする」ために大事にしていることとして、下記のようなキーワードをあげておられました。(改行は登壇スライドに倣っています)
お互いに同じ目標に視線を合わせることによって、よりコミュニケーションの質が向上していく様子がうかがえます。
また「よく聞く」の中でもさらに詳しい取り組みもお話ししてくださいました。
不確実性を議論の場に出す
議論の内容をビジュアルで表現、チームの目標を揃えていく
設計をチームでアップデートして進める
議論が活性化し、関係者の目線が合い、チェックとアップデートのサイクルが循環しながらプロダクトが前に進んでいくという流れが語られ、会場では頷きながらスライドを見つめたり、メモをとっている方も多かったです!
まとめ
ユーザーもチームメンバーも『よく見る・よく聞く・よくする』
各領域のことを知ろうとして、コミュニケーションをとっていく。というスマートバンクさんの姿勢がよく現れた発表でした!
マネーフォワードの発表
加茂 由香里さん・酒井 芳樹さん
『チームが価値を生み出すためのデザイナーのふるまい』
マネーフォワードからは2名の登壇者が、それぞれの担当プロダクトにおいてどのような取り組みを行ったのか、各種事例を用いてお話しいただきました。
取り組み紹介・1(加茂さん)
自分の担当しているプロダクトについて、ユーザーの課題起点ではなく、法制度に対応するために生まれたプロダクトであるということ。まずこれを前提としつつ、マネーフォワードという会社のバリューの一つにユーザーフォーカスがあることを考えた時に当人が感じた課題としては「ユーザーフォーカスが足りない」!
そこで、
現状の情報を集める
開発チームメンバーが常に見ることができる状態を作る
という目標に向かって、チームメンバーに協力してもらいながら改善に奔走されたお話を深掘りして話していただきました。
ユーザーの声を聞く
ユーザーインタビューのリクルーティングに苦戦しつつも、様々な方法を試して、担当プロダクトの中では数年ぶりに実施することができました。
チームに伝える
ただリサーチを行う、というだけでなくそれがどう活用されるのかということを実例を元に解説していただきます。具体的には下記のような内容です。
ユーザー情報を積極的に共有する
ユーザー価値を起点とした仮説やアイデアが出るようになり、優先順位づけに貢献できた
エンジニアのモチベーションアップ👆👆
『デザイナー自身が臨機応変に動き続けることが、価値を生み出し続けるために必要なこと』とメッセージを発した加茂さんの瞳の強さが、決意と成果を物語っていると感じます!
取り組み紹介・2(酒井さん)
加茂さんと同様に、マネーフォワード クラウドは多種多様なプロダクトが揃っているので、まずは自分が担当しているプロダクトの説明から入ります。そして取り組みの内容が共有されました。
やったこと
実施されていたリサーチ結果、社内マニュアルから作成
POが作ったエクセルから全体のイメージを作成
エンジニアと一緒に不明点を潰してシステム構成を可視化
ここまでやったので、スムーズにUIデザインに移行できた!
とはいかず
どんどん増える論点と不明点……理解してから作ることは諦め、一緒に作ることにしました。
関係者の時間を確保して一緒につくることで、みんなの認識をあわせがしやすくなり、その場で方向性を握ることもできます。さらに、自分も確認しやすくなり、理解しやすくなるというメリットもあったとのことです。
これらが成果となって現れたのが、『前倒しリリース』『他社にはないUI』とのことでした!(途中の「とはいかず」で参加者さんのアテンションが集まるあたり、みんなの心が一つになった瞬間を見ました)
具体と抽象を行き来する
「具体から抽象、抽象から具体を可視化する」
「可視化した仮説をチームで検証する」
デザイナーがチームの中でどのように伴走していったのかをお話しされた後、具体と抽象を行き来するということについて「問いかけをすることによって具体的に見えてくる」とご説明されていました。
「イメージを可視化し、問いかけ、新たなソリューションを生み出す」や「可視化して検証すると価値がわかりやすく伝わる」という資料内の言葉に込められた『具体的に見えてくる』ものにより、よりチームが強くなる様子が伝わってきました。
『共創することにより価値が生まれていくのではないかと思う』という酒井さんのコメントに伝えたいことが凝集している発表でした。
まとめ
情報収集や共有におけるデザイナーの臨機応変で適切な行動や、スキルを活かした可視化によるチーム内での共創が、共に価値の創出に繋がった例として、とても参考になりました!
質疑応答
株式会社ユーザベース鳥居さん、株式会社Algomatic國光さんからの鋭い質問や、参加者の皆さまからの疑問など、尽きることなく投げかけられましたが、それらの問いに登壇者さんたちが落ち着いて回答されていました。
自分の疑問を登壇者さんにリアルタイムでぶつけることができたり、他の方の質問などに共感するなどもイベントの醍醐味ですので、ぜひみなさんも次回のタイミングなどで質問してみてください!
参加した感想
とにかくみなさんのお話が非常にためになるものばかりで、事業の規模や会社のフェーズなどで全く同じことはできなくても、目的意識や、どんな方法を検討するかのようなことは真似ることができるのではないかと思いました。自分の引き出しを増やすにはもってこいの機会でした!
これからもこのようなイベントを開催してみなさんとナレッジをシェアしていけたらと思います!!
そして、記事の中でもご紹介したスマートバンクさんの登壇内容がこちら👇の記事で詳しく書き起こされています!ぜひご覧ください!!
スマートバンクさんにはこの記事の中のお写真の数々などもご提供いただきました。ありがとうございました!