新生AC開発陣はAC6の対戦でどのようなアンサーを返してくるのか?

Valorantのことを書くつもりのnoteだったが実はアーマードコアの老害プレイヤーのため急にアーマードコアのことを書くnoteに切り替えたぜ(日本語崩壊)
前提としてこの記事は対戦環境に対する考察になるから対戦を気にしない人はふ~んくらいの認識でいいぜ
シングルプレイは間違いなくいいものを出してくると思ってる

4gamerのインタビューに見る興味深い記述


AC2AAをトップレベルで、AC3~LRをそれなりのレベルで対戦した経験がある自分的に、4gamerのインタビューにはなかなか面白いと感じる文言があった。
参考:https://www.4gamer.net/games/674/G067420/20230726056/

"山村氏:(略)これまでのAC,特にゲームスピードの速かったAC4~ACVDでは敵の挙動を見て対処するというよりは,「自分の被弾率をできるだけ下げ,相手の被弾率をできるだけ上げる」という持続的な最適化のゲームだったと考えていまして。本作ではそこを瞬間的な判断のゲームに寄せてみようということで,ゲームスピードを一段下げるとともに「見て対処できる」戦闘距離まで近くしたという経緯があります。"

https://www.4gamer.net/games/674/G067420/20230726056/

『「自分の被弾率をできるだけ下げ、相手の被弾率をできるだけ上げる」という持続的な最適化のゲーム』という言葉が厳密にどのような状況を指しているかは想像するほかないが、俺が思っている意味と同じだとしたら、ACの対戦をよく分析している言葉に思える。
実はこの傾向はAC3SLからすでに見られていた。そしてシリーズタイトルが更新されるごとに強くなっていった。

自分の被弾率を下げるとは

自分の被弾率を下げる方法はACにおいて2つあると考えられる。
1つ目の方法は、いつ弾を撃たれてもいいように常に回避を入れ込みながら動き続けること。この戦法をメインに据えると、必然的に相手の弾が当たりづらい距離まで離れ、当たりやすい武器をばらまき、期待値で相手を上回ることを狙うことになる(この理屈の説明は省略)。
2つ目の方法は、相手のロックオンサイトの外に出てしまうこと。こちらは逆に、近ければ近いほど相手のロックオンサイトを外しやすいので、できるだけ接近することになる。厳密には被弾「率」を下げるのではなく、そもそも撃たれないということなので、インタビューに登場した文言とは違う意味だが今後の展開のために必要な説明なので掲載しておく。

基本的には1つ目の方法はよりローリスクローリターンで、2つ目の方法はハイリスクハイリターンと考えられている。
離れるということは被弾しづらくなるが、代わりにこちらの弾も当たりづらい。
近づくということは前に出るということなので、より被弾しやすくなる。一方でこちらの弾も当たりやすくなる。もしサイトを外して一方的に撃てればそれだけ高いリターンを得られる。

システム上はハイリスクハイリターンの接近戦を選択する理由は減っている

この近づくことでハイリターンを得る戦法というのは、タイトルが更新されるごとに少しずつ弱くなっていったという実感がある。理由は、近づくことのリスクが増え、離れて射撃することのリターンもまた増えたところにあると考えられる。

理由の一つは、射撃武器の弾数が大きく増加したこと。特に左手射撃武器の追加や格納武器、EOの高性能化などの要因が大きかった。

AC2AA(と一応3)までは射撃武器は右手のみのため、5分間を戦うにはできるだけ無駄弾を避けなければいけない。しかし、左手射撃武器追加以降は弾をたくさん撃てるため、中距離からの弾のばらまきでも5分間を戦いきることができるようになった。また、接近する過程で被弾する数も増えるため接近のリスクが大きくなった。
事実、AAだと少なくとも8割くらいは命中が見込める位置からでしか手武器を射撃しないことが多い。そうしないと根本的に弾が足りないし、多少食らいながら前に出ても片手の射撃であればリスクに見合ったリターンが得られる。左手射撃武器が追加されて以降は3~4割しか命中しないような距離でも積極的に弾をばらまく方が強いし、無理に近づこうとするとリターンが見合わない場合が多い。

AC3やAC3SLはそもそも有効射程が短いことや、SLでは特に008コアのOBが強いために違ったメカニズムでの対戦が可能だったが(これもメインテーマじゃないので省略)、N系以降ではOBの弱体化や余積載によって速度が上昇するシステムによる中~重量機体の速度強化、LRではカメラ位置の変更などなど複数の要因が重なり、基本的には中距離で弾をばらまき合い削り合う「パチンコゲーム」の側面が強くなったと考えている。
(もちろんAC2AAでもパチンコになる場面はあり、例えば軽量機同士で111で削り合う展開などがそれ)

AC4~ACVDの対戦については明るくないが、システムからは基本的には近い傾向があるように読み取れる。
弾は多いし、オートサイトのシステムが追加され、近距離で人間だけでは不可能な補足ができるようになった。またQTの追加で迎撃機体も理論上は近距離戦で不利を背負うことが少なくなった。
もちろん、例えば4系で軽2や中2で「攪乱」して勝利を重ねる上位プレイヤーが存在することは認識している。このような「反応が若い」プレイヤーはゲームスピードの速さを活かしている。V系はそもそもチーム戦なので全く違うゲーム性と言える。
そのため上記の見解は人によっては反対意見もありそうだが、フィジカルが同等のプレイヤーが対戦したときにどうなるか?やデュエルだとどうなるか?を想像したとき、あくまでシステム上は接近により大きなリスクがついたことは事実だと考えている。
もちろん、これまでと全く違うロジックで試合が動くことも多いと思われるため(例えば火力とか相性とか)一概にこれらのシリーズがつまらないと言うつもりはない。ただ『「自分の被弾率をできるだけ下げ,相手の被弾率をできるだけ上げる」という持続的な最適化のゲーム』という認識は正しく、それがより強固になる傾向にあったというのは事実と見ていいように思う。

フロムが状況を理解している可能性

インタビューの文面にもう一度戻ると、恐らくディレクターのひとりである山村氏も同様の認識を持っているように思われる。

山村氏”本作ではそこを瞬間的な判断のゲームに寄せてみようということで,ゲームスピードを一段下げるとともに「見て対処できる」戦闘距離まで近くしたという経緯があります。”

https://www.4gamer.net/games/674/G067420/20230726056/

"4Gamer:
 確かに,遥か彼方でACが何かやっていても,撃たれてることしか分かりませんからね。"

https://www.4gamer.net/games/674/G067420/20230726056/

このやりとりを見る限り。フロムも現状がいわゆる「中~遠距離パチンコゲー」が中心になっているという認識は持っていることになる。
個人的な見解だが中距離パチンコゲーで競われる技術というのは「なんだかよくわからんが良い感じに弾を逸らせられる入れ込み回避の技術」「ミスらないサイティング」「下手に攻めない忍耐」などの地味な要素が多い。そして、基本的には「期待値の高い行動を取る」のが行動原理になるが、あくまで「期待値」でしかないので、運が悪いと相手の命中率が上振れたり自分の命中率が下振れて、期待値で勝っているはずなのになぜか試合には負けたりする。
多くの人が「お互いが引き撃ちするだけのゲームってあんまおもんないよな」と感じていると思うが、それをより詳しく言語化するとこんな感じになると思う。

「ゲームスピードを落とす」だけでは解決しない難題

そしてこのような状況はフロムも変えたいと思っているようだ。ではその解決方法はどうなるのだろうか。インタビューでは見て対処できるようにゲームスピードを落とし、戦闘距離を近くしたとある。

ゲームスピードを落とし、戦闘距離が近くなれば、パチンコゲームを解決できるのだろうか。そうとは限らない。
そもそもパチンコゲームになった理由は弾が増えてばら撒けるようになったことと、接近のリスクが増えすぎたことにあるはずだ。それを解決しなければ「距離が近いパチンコ」をやるだけになるのではないか。

実際、過去に公開された映像を見る限り機体のスピードや武器の弾速は遅いため、極端に離れて戦うことはなさそうだが、左右の射撃武器と左右の肩武器(あるいはハンガー武器)が存在し、弾数は豊富そうだ。そしてなにより、今回もオートサイトシステムは存在し、追従性能は動画を見る限り過去作よりもさらに強力になっているように見える。つまり攻める側がサイトを外せる可能性はかなり低いように見える。ある程度の距離を維持して弾をばらまく内容が変わるとは思えない。
さらに今回からスタッガーシステムが採用される。前に出る機体が被弾率が高いことは言うまでもなく、そうなると接近する理由はさらに減る。反動で固められることを嫌って中距離で反動と命中率に優れた弾をばらまき、相手のミス(多く被弾してスタッガーする)を狙うという対戦になる可能性もある。

これはあくまで仮定ではあるが、過去作の対戦をやり込んだ「老害」が懸念しているのはこのような状況だ。別にネガキャンしたくてしているわけではなく、それなりの根拠があって言っているのは分かってもらえたと思う。
これを解決したければ、ゲームスピードを落とすだけではなく他のアンサーを併せて用意しなければならない。ではフロムは何を用意しているのだろうか。

公開された情報から読み解く解決策

解決策として予想されるシステムのひとつとして、アサルトブーストによる被弾時反動の軽減効果が明言されている。攻めるときのリスクを軽減させるシステムとして期待されるが、この軽減効果がどの程度なのか、近づいた後にリスクを上回るリターンを得られるかが問題になる。
また、もう一つ注意しなければならないのが「リターンが取れすぎてはいけない」ということだ。例えば今作は動画で見る限りブレードがかなり当てやすいように見える。アサルトブーストで一気に接近した後にブレードを振って必中に近い状況なのであれば、その威力次第でかなり問題になりそうだ。ローリスクハイリターンの行動が生まれてしまえば、それを押し付ける以外の選択肢は無くなる。ブレードや大型ミサイルを押し付け合うデモンエクスマキナを見れば一目瞭然だ。

もうひとつ期待されているシステムとして「マニュアルエイム」※オートサイトをOFFにした場合の優位性がある。オートサイトではレティクル(照準)の移動が遅く、予測射撃が追い付かない仕様になっていると言われている。オートサイトをOFFにするとレティクルの追従速度が上昇するという仕様になっていそうだ。

山村氏:(略)ただ,アシストOFFでは照準の追従性能が一段上がるような補正をかけていたりはしますし,シリーズをやり込んできた熟練傭兵の方々であれば,キーアサインを最適化して完全マニュアル操作でのスーパープレイも見せてくれるものと期待しています。

https://www.4gamer.net/games/674/G067420/20230726056/

オートサイトでどの程度弾が逸れるのかによってはマニュアルエイム※オートサイトをOFFにする強みが出てくる。
今作のオートサイトはかなり追従するように見えるが、レティクルの動きが遅いのであればある程度マニュアルエイムをせざるを得ない。そしてマニュアルで動かしている間はオートサイトは使えないから、左右の動きやフェイントでサイトを外すような動きが有効になる可能性は残されている。
一方で、オートサイトでもそれなりに弾が当たる仕様なのであれば、多少の照準のズレを考慮してもオートで戦った方が強いという可能性もある。その場合は自ら接近戦を挑む戦術はリスクばかりが目立つ行動になりかねない。

※訂正:マニュアルエイムは従来のロケットのようなものだという情報あり。インタビュー中にロックオンしたまま右スティックを動かして操作することでレティクルの追従が早くなるという説明があったため追記しました。

最悪のシナリオは何か

最悪のシナリオの一つは言うまでもなく『「自分の被弾率をできるだけ下げ,相手の被弾率をできるだけ上げる」という持続的な最適化のゲーム』、つまり「パチンコゲーム」がさらに強化される場合だ。接近のリスクが依然大きく、オートサイトも外せなくて、攻めた方ばかりが反動で固まるようなひどいゲームだ。
もう一つは、突進して強みを押し付けるゲームになってしまうことだ。

このようなゲームになった場合、いくらパーツバランスなどを調整して「複数の選択肢があるゲーム」「三すくみがあるゲーム」になったとしても、これまでの経験上対戦は面白くならない。
複数の選択肢があってもパチンコするだけのゲームなら、見かけ上いろいろな武器があってもやってることは全部同じ、というゲームになりやすい。このようなゲームではいずれ最適解が発見され理論上最強のアセンが生まれやすい。ACLRやSwitch版デモンエクスマキナの射撃機同士の対戦はこれに近い環境と言えた。

パチンコに対して近接の極大リターンで対抗する、というような強みを押し付けるゲームになった場合、仮に複数のタイプの機体が存在し、かつバランスが取れていたとしても、自分の強みを押し付けるだけの対戦になりがちだ。このようなゲームは自分の強みの押し付けやすさで勝敗が決まることが多く、相性負けを覆すのが非常に難しい。そして、メタゲームに参加できない機体はそもそも「対戦させてもらえない」。つまり、機体選択の時点でほぼ勝敗が決するようなゲームになりやすいのだ。これは腕マシ、フロート、バズ、リニアキャノンなどが存在するACNBが顕著だが、他のシリーズでも比較的それに近い傾向は見られる。俺が好きな2AAでも技術レベルの向上でそれに近い状況にはなっているし、最近のローカルレギュレーションの改定(武器腕の強化)でよりその傾向が強くなりかけたこともあった。また、ブレードを含めたデモンエクスマキナの対戦もこのパターンに近い対戦が行われた。

逆に言えば、これらのシナリオを回避できる何かがあれば、AC6の対戦が面白くなる可能性は残されている。

フロムはアンサーを導き出せたか

結局のところ、ふたを開けてみないと対戦がどのような環境になるかはわからない。ただ、これまで動画などの情報で判断すると、AC6の対戦が面白いものにならないリスクはかなり高いと考えていた。
一方で4gamerのインタビューではかなり本質を突いた発言も見られた。ここまで記載してきたようなアンサーをフロムが用意していれば……AC6の対戦が面白くなる希望はまだ残っている。
はたまた、これまでの他のタイトルの開発経験を活かした、全く予想外のアンサーが出てくることもあるかもしれない。

俺たちが愛したアーマードコアは、これからどんな景色を見せてくれるのか。不安7割、期待3割で発売日の8月25日を、今か今かと待っている。

補足

人によってシリーズの好き嫌いはあると思うけど俺が嫌いなシリーズがあるからといってあなたの好きな気持ちを否定するわけではないのでそのへんのアレはうまいことアレしてください

補足2

ゲームスピードを落とすこと自体は別の理由でめちゃくちゃ良いと思う
アーマードコアは小倉・山村両氏が別のインタビューで答えた通り「相手の動きを見て対処する」ことがキモのゲームだと俺も考えていて、そのためには軽量機を自力で補足できるかできないかくらいのバランスがいっちゃん良い
速すぎると高速あっち向いてホイになるだけなので
そこ考えても動画見る限りAC6のスピード感は今のところちょうど良さそうに見える

補足3

こういうこと書く一方で、個人的には引く機体がちょっと強いくらいのバランスが良いと思ってるねんな
なぜなら攻める機体同士の対戦はそれはそれでAP勝ってる側が引くだけのゲームを誘発しやすいんで
なので重量の引く機体がちょっとメタだけど軽量が頑張れば勝てる、くらいが軽量vs重量のAC対戦の醍醐味がいっちゃん味わえる環境になりやすいと思うというのが持論

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