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大羊春秋~羊務執筆者党史~(2)

この「大羊春秋」(だいようしゅんじゅう)とは、私が主宰していた同人誌サークル「羊務執筆者党」(ようむしっぴつしゃとう・略称SSP)の活動を振り返る「回顧録」です。

面妖本執筆者党の誕生

お世話になった「高橋留美子総合F.C. U&R」ですが、昭和62(1987)年7月に私はトラブルを起こし自ら退会します。

時は戻ります。
その前年、I上が「赤貧対策委員会」という同人誌サークルを単独で起ち上げ、昭和61(1986)年12月27日(土)と28日(日)開催の「コミックマーケット31」の2日目に参加していました。
今日で言う「男性向同人誌」発行を目差してのことです。
余談ですが、この「コミックマーケット31」から会場が東京都大田区平和島の「東京流通センター」に変わりました。またカタログが中綴じから無線綴じになったと言われています。

私はこの発行計画を耳にすると、スケベ心から是非とも参加したいと思いました。そこで自薦のためにプライベートでスケッチブックに描いていた絵を2、3点コピーして彼の元へ郵送しました(勿論Hな絵です)。昭和61(1986)年の11月か12月のことです。
「U&R」で仲が良い方だったこともあり、話はすぐにまとまって私も寄稿することになりました。

この本の製作中、編集後記の“ネタ”として私もサークルを持つこととなりました。
そこで考え出されたのが「面妖本執筆者党」です。
考えるにあたり私にはいくつかのこだわりがありました。
まず、軍隊的なものは同人誌界に溢れ陳腐なことから◯◯師団や☓☓隊といった名にはしない。またカタカナ名も多いので採用しない。
日本らしく漢字のみにする(当時はそう考えていた)。
ちょっと政治的な名にするため「△△党」とする(この理由は長くなるので割愛します)。

ここで説明の必要が生じます。
「面妖本」とは何でしょう?
「コミックマーケット」などで頒布される同人誌の内容(ジャンル)は実に多種多様です。その中には漫画・イラスト・文章による性描写を載せた、要は“エロ同人誌”があります。
今でこそ「男性向同人誌」、そして近年生まれた「薄い本」という呼び名がありますが、当時は「妖しげな(内容の)同人誌」という訳で「面妖本」と呼ばれていたのです。

センスの無いちょっと恥ずかしいサークル名ですが、会員を募り会費を徴収し機関誌を発行する訳でもなく、飽くまでもネタのサークルなので、あまり深く考えず気楽に名付けました。

後に発行された会報『SCHAFS NACHRICHTEN vol.1』の記事「羊務執筆者党志」によると、「面妖本執筆者党」の誕生は昭和61(1986)年の12月下旬と記されています。

なお、この頃既に誌名は『四面楚歌』に決まっていたと思われます。

私は寄稿するだけではなく編集作業にも参加しました。
そしてI上宅での作業が終了すると2人で印刷所へ入稿に向かいました。時間はもう日没が迫っていた頃です。

I上は神奈川県藤沢市内にあった「友湘堂」へ持ち込もうとしていました。
ここは男性向ジャンルでは大手サークルの「美少女プロダクション」が利用していることもあり、当時の同人誌界では知る人ぞ知る印刷所だったのです。
しかし、入稿時期が遅くコミケへの日数が少ないことから断られます。他に受付けてくれる所を求めて、藤沢橋周辺を歩き1、2件の印刷所に当たりましたがどこも同じ理由で断られました。

よって、残念ながらこの本は「コミックマーケット31」に発行が間に合わず、結果、原稿は彼のもとで眠ることになります。

年が変わり昭和62(1987)年3月のある日、I上から私へ、「今、こちらの手元で眠っている同人誌原稿をそちらで発行できないか」という旨を提案されました。
これに際し、私にどのような葛藤があったかもはや憶えていません。確実なのはこの提案を受け入れたということです。

そして同年7月12日(日)、東京都北区の十条にある「しまや出版部」という印刷所へ二人で入稿に行きました。

発行が実現するにあたり「奥付」をどう表記するかが問題になりました。
そこでI上は「赤貧対策委員会」を「羊書房」と改名し企画・編集として、発行所は私名義になるのですが、その名をどうするか迷いました。
そこで登場したのが前出の「面妖本執筆者党」です。


この第2回を執筆(入力?)している最中、いくつかのワードをGoogleで検索してみたところ、「美少女プロダクション」発行の『Pretty Look!』が中古ショップのサイトで販売されているのを見つけました。
30年以上も前の同人誌が売られているのには、驚くと同時に感慨深いものがあります。

今振り返ると、プライベートで描いていたHなイラストをよくコピーしてI上の元へ郵送し自薦したと思います。
これが私の人生をも左右した全ての始まりになったと言えるでしょう。

《第2回おわり》

※文中敬称略

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