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勝つことへの考え方

先日、前橋中央のスタッフも参加しているSNSグループで勝利至上主義に関しての投稿があり、大変勉強になりました。
前橋中央としてのスタンスを明記しておこうと思います。

前橋中央においては
「勝利を主目的とせず、それぞれの成長過程を理解できるよう促し、それぞれのステージに見合った練習・試合を実施します。10年先を見据えて、野球をツールにした人間形成に取り組みます。」
と公に謳っております。

野球における「試合の目的」

公認野球規則「1.00 試合の目的」には

  • 1.01 野球は、囲いのある競技場で、監督が指揮する9人のプレーヤーから成る二つのチームの間で、1人ないし数人の審判員の権限のもとに、本規則に従って行われる競技である。

  • 1.02 攻撃側は、まず打者が走者となり、走者となれば進塁して得点することに努める。

  • 1.03 守備側は、相手の打者が走者となることを防ぎ、走者となった場合は、その進塁を最小限にとどめるように努める。

  • 1.04 打者が走者となり、正規にすべての塁に触れたときは、そのチームに1点が記録される。

  • 1.05 各チームは、相手チームより多くの得点を記録して、勝つことを目的とする。

  • 1.06 正式試合が終わったとき、本規則によって記録した得点の多い方が、その試合の勝者となる。

とあります。

勝利至上主義に関して、いつもに問題となるのは「1.05」にある 「勝つことを目的とする。」ことです。
解釈の仕方が大きく異なるのでいろいろと問題提起がされてるのだと思います。
その勝つことを目的にしている公認野球規則はどのようなものなのでしょうか?

公認野球規則の大本って?

公認野球規則はアメリカMLBのOffcial Baseball Rules「OBR」が大本で、その翻訳版になります。
アメリカにはOffcial Baseball Rules(メジャーリーグ規則書)の他にNCAAのNational Collegiate Athletic Association(全米大学体育協会野球規則書)とNFHSのNational Federation of State High School Associations(全米州立高校協会野球規則)があります。
それぞれに規則の違いがあったりそれぞれの理念が謳われていたりします。NCAAのカテゴリーには「respect(敬意)や integity(威厳)」なども明記されているようです。
日本でも公認野球規則があって、アマチュア内規や高野連特別規則など運営団体やその下で行われる大会によって規則が異なります。
ボーイズリーグにも特別規定は存在しています。
附則的なものはたくさんありますが、基本は公認野球規則になります。

世界最高峰MLBのルールが大本なのであれば

誰もが知るようにMLBは世界最高峰のリーグになります。
日本人メジャーリーガーを見てもわかるように、ある程度成熟した状態でアメリカに渡り活躍されています。
世界中の成熟度の高い選手たちが集まり、競い合うのがMLBであります。
そのルールを訳した規則なので「勝つことを目的とする」になって良いと思います。

しかしながら、その世界最高峰のリーグでもリーグ優勝勝率は6割程度になります。
勝つことを目的にしたルールで戦うリーグでも勝率6割なのが野球です。
再現性も低く、不確実な要素が多い競技のため「勝つことを目的とする」ことを主眼にしても勝率6割なのだと思います。

拡大解釈になるとは思いますが、目先の勝利よりも年間を通した勝利を目指す「勝つことを目的とする」なのかと考えております。
だって、捨て試合っていっぱいありますよね。
得点差の開いた試合で野手が登板したり、主力を下げて若手の経験値を上げたりなど実際にご覧になったこともあると思います。
「勝つことを目的とする」の解釈が「何が何でも勝つ」や「絶対に諦めてはいけない」というのであればこんな試合あってはならないですよね。
逆に大本の野球に即して試合をするのであれば、トーナメントでもコールドゲーム無しにしてアンリトンルールに則って、大差が開いたら開いたなりの試合展開を心がけなければなりません。相手への敬意が非常に重要となり、指導者も選手もより理解を深めなくてはなりません。

さらには、高校生以下のカテゴリーにおいては相対年齢効果の影響があったり、成長が早い選手もいればゆっくりな選手もおります。
その結果、未成熟で体格差のハンデを背負った状態で試合に挑まなければなりません。
その場合、成長過程の早い選手が多く集まったチームが強く、その他のチームは一般的なチームになります。
また、その一般的なチームにおいても、その中で成長過程の早い選手を中心にチームが形成されることが多くなります。
チームの中で「良い選手になるには」「レギュラーになるには」といった表現をされるときに「努力」という言葉を用いて達成させようとすることがあると思います。しかし、この時期に関しては個人の「努力」では決して補えない要素があることを理解しておかなければなりません。
成長過程を理解した上で「勝つことを目的とする」を考えていかなければなりません。

「勝つことを目的とする」をどう考えていくか

まずはリーグ戦を前提にしたルールの中にあるものであれば、リーグ戦を試みる取り組みをして「勝つことを目的とする」ということが、どのようなことなのかを探っていかなければならないと思います。
前橋中央としては、同志で立ち上げたPFFリーグから得た経験や改善点などを今後に活かしていけるようにと考えております。
ここまでは同じチームと試合を重ねた結果、勝ったり負けたりが繰り返されるので、公認野球規則に則る場合はリーグ戦での戦い方が望ましいものになるのではないかと感じています。
そしてその活動を周知させる努力をして、リーグ戦と現行のトーナメント形式をうまく組み合わせたり、新たな形式を構築したりしていければと思います。

次に、ここまでの野球界では当たり前になっていると思いますが、成長過程の早い選手を多く集めてチームを編成して「勝つことを目的とする」ことの達成を目指すことが高校生以下のカテゴリーに適していることなのでしょうか? 現状の野球界ではアリですが、将来的には改善を求められるようになると思います。
それとは逆で、保護者の身長や本人の身体成熟度合を考慮して将来の予測を立てながら野球に取り組むことはどうでしょうか? このことは前橋中央で一番主張したいことで取り組んでいることでもあります。
現状では6・3・3の輪切り教育において一気通貫指導ができないことと、甲子園を最終目標にしている選手が多いことから時間的に厳しく理解を得ることに難しさを感じていますが、何とか必要性を説いて克服ていきたいと考えております。

前橋中央としては、やはり選手の成長過程を正しく理解した上で「勝つことを目的とする」ことへ取り組んでいかなければならないと考えます。
そうでなければ、早く大きくなる傾向の選手に偏った選手起用で障害のリスクが上がったり、重責に耐えられなかったり早期に得る満足感でバーンアウトしたり、一部の選手に偏ったチーム運営でその他の選手が満足できなかったりします。

それぞれのカテゴリーにおいて必要な規則が設けられていくべきだと考えます。
投球数制限や金属バットの規格なども追加されたり変更されたりするように「試合の目的」自体が変更されて良いと考えます。

と、ここまでは前橋中央での考え等を記しましたが、結局のところそれぞれのチームの考え方で野球をしているのが現状だと思います。

野球には共通理念が存在しない

ことが背景にあると思います。

野球には他競技に見られるような、競技を始めたらまずどのような取り組みをさせて、どの年代ではどのような取り組みをするのが望ましくて、最終的にはどのような選手に育てていこうといったことが明記されている一気通貫の育成方針や共通理念がありません。

日本少年野球連盟(ボーイズリーグ)においては

このあたりが理念にあたるとは思いますが、「野球を愛好する少年たちに正しい野球のあり方を指導し、野球を通じて次代を担う少年の健全育成を図る」ことが創立以来の目的で、「硬式野球を愛好する少年に正しい野球のあり方を指導し、野球を通じて心身の錬磨とスポーツマンシップを理解させることに努め、規律を重んじる明朗な社会人としての基礎を養成し、次代を担う少年の健全育成を図ること」を目的に事業展開されているようです。

いろいろな解釈ができると思いますが「勝つことを目的する」ことが主目的ではありません。

ボーイズリーグをはじめ野球界には多くの連盟があり、それぞれが理念や目的を示しています。
その結果、共通理念を持てない現状となっていると思います。
そのことによって一番迷走するのは各チームの運営者と指導者であり、被害を被るのは選手たちになるのではないでしょうか。

より良いサービスを提供してあとは選手と保護者が選べばよいといった競争選抜では、そのピラミッド型を形成できるほど今は選手もおりません。
どこがトップになるのかは分かりませんが野球界の共通理念が求められる時代になると考えております。
共通した理念さえあれば「勝利至上主義」や「勝つことを目的とする」ことへの解釈もある程度同じ方向性に向かうのではないかと思います。

最後に

現行の野球が、公認野球規則「1.00 試合の目的」の「1.05 各チームは、相手チームより多くの得点を記録して、勝つことを目的とする。」に則り取り組んできた結果の「勝利至上主義」なのであれば、育成期の子どもたちをお預かりする前橋中央では、ありきたりの表現とは思いますが「勝利目標主義」を掲げていきたいと考えております。
そして、この素晴らしい野球という競技をツールにして人間形成に貢献していければとも考えております。

前橋中央は成長過程の違いを考慮した2チーム体制でのチーム運営を行っており、投球数制限にもいち早く取り組んできました。
育成を掲げたり、選手を第一に考えて取り組むことを掲げると勝利を放棄しているのではないかといったご指摘を受けることがあります。
しかしながら、前橋中央もしっかり勝利は目指しています。

例えば新チームは比較的成長過程の早い選手が多いことと、PHV的な成長を中1の期間に迎えた割合が多いことから、前橋班は全国大会出場・前橋中央班はベスト4を目標に新年度の大会へ挑む予定です。
現3年生の旧チームは成長過程のゆっくりな選手ばかりで、中3の受験期に身長が伸びまくっているメンバーばかりです。旧前橋班はベスト4・旧前橋中央班は公式戦1勝が目標でした。それ以上に高校に行った時のことを考えて取り組んでいたメンバーも多かったです。

それぞれの学年の身体成熟度合の状況と、チーム編成によって定義を変えた勝利目標を掲げていくことが大切であると考えております。

それには選手も保護者もそれぞれの成長過程を正しく理解して野球に取り組むことが重要になります。

10年先を見据えるというのは、成長過程を理解すれば分かってくることです。

「勝利を主目的とせず、それぞれの成長過程を理解できるよう促し、それぞれのステージに見合った練習・試合を実施します。10年先を見据えて、野球をツールにした人間形成に取り組みます。」

前橋中央のマニュフェストを達成できるように努力してまいります。


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