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会社なんてとっとと潰せ

前倒しで来た大廃業時代

以前から「2025問題」と盛んに危惧されているのが、圧倒的に労働者が不足し、経営者も高齢化して後継者がいないという大廃業時代。しかしこれは、コロナ対策による経済ダメージにより、前倒しで既に始まっています。

私が事業として支援をしているM&Aは、その解決策として有力視されてはいるのですが、ぶっちゃけ業種を問わず売れる会社は売れます。元も子もない言い方ですが、後継者不足は「儲かってないから」に尽きるのです。原因は人材不足ではなく、利益不足です。

コロナ対策でそれが早まったと書きましたが、理由はいわゆる「ゼロゼロ融資」を出しまくったからです。この融資は国が(税金で)利息を一定期間肩代わりしてくれるということと、審査が緩い(あまりにも緩すぎた)ことで、銀行にとっては空前の営業チャンスだったわけですが、私の知る限りでも「それは無茶すぎるでしょ」と思われる先にもバンバン融資していました。

なかには、10年以上既存の借入をリスケ(返済の条件変更)していて、数千万円の債務超過が続いている先にもコロナ融資が下りていました。要するに、コロナの名の下で死に体企業にもお金を出して、いわゆるゾンビ企業を量産したのです。

誰が考えても、数年ほど延命させるだけとわかります。案の定、今年くらいからそれが返せずに破綻する企業が相次いでいます。

この思考は、日本人に特有のものかもしれません。老人医療にしても、手厚い保険制度で90歳を過ぎた人を一生懸命延命させていたりしますが、それにより保険料を払っている現役世代はやせ細っています。これをホスピタリティや助け合いなどと称するのは欺瞞であり、政治家が現役からの税金(保険料)で老人票を買ってるに過ぎません。制度的に、どう考えても持続不可能です。

人命に関わる医療については、線引きが難しい議論ですが、企業に対しては別です。社会の活性化のために、潰れるべき企業はとっとと潰した方がいいのです

解決策は起業率を上げること

昨今、アメリカほどではないにせよ、日本でも起業を志す若者が増えてきたように思います。私は仕事柄、そのような若者と会う機会が多いですが、旧帝大のような優秀な大学の在学中に会社を作って、卒業時には大手に売却するような人も増えてきています。

また、私が書いた「M&A起業の教科書」を読んで、M&Aによる起業を志した人もいて、著者としては嬉しい限りです。

経営者の高齢化と、後継者不足による廃業の増加が深刻度を増している中で、社会の活力を取り戻すには「起業率」を上げるしかなく、その意味ではとてもいいことだと思います。

廃業数の増加は避けられません。いや、避けるべきではありません。社会の新陳代謝を活発にするには、死に行く人(会社)を守るのではなく、生まれる人(会社)を増やすことです

残念ながら、人口に関しては既に遅きに失した感はあります。今後何をやっても少子化に歯止めがかかることは期待できないでしょう。国はいろいろと「やってる感」を出したいようですが、税金を無駄に使うだけの結果になってますし、今後も変わらないと思います。

しかし、会社は別です。会社をやっている以上、浮き沈みは当然にあるものですし、突如何らかの不可抗力的な出来事に巻き込まれないとも限りません。客観的に見て回復する見込みはないと判断できれば、すぐにでも潰すべきです。それは早ければ早いほど、再起しやすい。それをやらずに、体力と気力の限界まで引っ張ってしまうから、再起が困難になるのです。

取引先に迷惑をかけるという気持ちはわかります。しかし、それなら尚更、早く再起してお返しすることもできるのです。

社長に必要な客観性

経営者であれば、誰でも自分の会社や社員に愛情があるのは当たり前です。社員には伝わりにくいことかもしれませんが、それがない人の方がむしろ異常です。

それゆえに落胆させたくない気持ちが強く、まだ何とかなるかもしれないと、9回裏ツーアウトから逆転満塁ホームランを狙ってしまいます。結果、身も心も疲弊してしまうケースが多いようです。

社長に必要なのは、「ここで満塁ホームランなど、確率的に0.1%(かどうかはわかりませんが)」と客観的に事業を判断できる力です。今の戦力でどこまで戦えるか、無理だと思ったら即刻撤退する。意思決定が仕事である社長には、そんな客観性が必要なのです

もちろん、撤退戦は口で言うほど簡単なものではありません。私も会社を潰したことがありますので、それはよくわかります。一社は無借金だったので清算はラク(それでも会社を作るときよりも遥かに手間がかかります)でしたが、借金がある場合はかなり長期間かかりるし、法的整理になるとそれなりのペナルティもあります。しかし、それでもダラダラと血を流して出血多量で再起不能よりは格段にマシです。その残務処理の期間に、次への準備が出来ますから。

経営者には、ある意味それくらいの強かさが必要です。会社というハコに執着して、未来の目を潰すことのないようにしてもらいたいと、強く思います。ダメかもしれないと思ったら、次の計画を作ってとっとと潰してください。そして、買収するなりゼロから立ち上げるなりで、新たに起業しましょう。失敗経験のある起業家ほど、日本に必要な人材はいません

会社経営は、壮大な知的ゲームです。人生かけて執着しても、誰のためにもなりません。ハコに執着して、その後の人生の選択肢を狭めることのないようにしてください。

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