ちいさな君は
「うわぁ。ちっさいねえ」
「そうでしょう。爪を切るのすら、今でもまだ慣れなくって怖いからね」
姉と、生まれたばっかりの赤ちゃんに会いに、ゴールデンウィークに帰省した。
私の人差し指をぎゅっと握るその強さは、思いのほかたくましい。
「なんか、自分が巨大な人間になっちゃったみたいな気になるね」
私がそういうと、それ聞いていた母もけらけら笑って、
「あんたより一回り以上大きい私の立場がないじゃない」とふくよかな腹をつまんで見せる。
「お母さんは、ゆるキャラポジションでいいじゃん」と、姉は母とそっくりな声で笑っていた。
かしましく、ゆかいな会話に参加したいらしく、赤ちゃんも「あうー」と声をあげている。
ぷっくりとした唇はこれから何回笑うのだろう?
宝石のように輝く瞳は、これからいくつもの景色を眺めるのだろう?
今はただ、柔らかなガーゼケットに包まれて。
窓から広がるあたたかい春の空をつかもうと、小さな手を伸ばしてる。
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