意志と余白を往復するデザイン
MIMIGURI Advent calendar 2023、9日目は後藤(@__chhi)がお送りします。昨日は湯川さんによる『現代に巣食う不安の構造とファシリテーションの可能性について』でした。
はじめに
他のSNSでは簡単に報告していましたが、今年の9月からMIMIGURIに入社しました。新卒から7年間事業会社のインハウスデザイナーとして働いていましたが、今はデザイナーにファシリテーターという肩書きが加わりました。
入社後3ヶ月はワークショップの設計やファシリテーションを中心に活動してきました。振り返ると「ファシリテーションと過去のデザインワークって繋がってる!!」とこれまでのデザインとの接続にワクワクすることもあれば「今向き合っているものはデザインすべき対象なのだろうか?」とモヤモヤを抱くこともありました。ファシリテーションとデザインの共通点は多いはずなのに、どうしてもデザインできない領域があるような。
この記事では私が今感じているファシリテーションとデザインの繋がりにまつわる葛藤と探究を開いてみようと思います。下のテーマでいうと②と③の間くらいでしょうか。
この記事には明確な答えも特効薬もTipsもありませんが、個人的なモヤモヤにお付き合いいただけましたら幸いです。
デザインを感じられるのはどれ?
ワークショップでは、準備段階から当日にかけて、目に見えるものから見えないものまで様々なものが作られていきます。
はじめに次の問いについて考えてみます。
問:次の5つのうち、どれからデザインを感じられるでしょうか?また、デザインを感じられないものはありますか?
いかがでしょうか?
あくまでも私個人の感覚ですが、「発表スライド」「会場のレイアウト」「コンセプト」からは「デザインの気配」を感じます。
一方で「人の関係性」「学び」「創造性」からはデザインの気配を感じにくく、そもそも関係性や学び、創造性を一方的にデザインすることは難しいように思います。
むしろ、ワークショップにおいては人の関係性や学び、創造性を「デザインする」よりも「信じて見守る」と表現する方がしっくりきます。
余白をデザインする
ワークショップにおける関係性の変容や学びは、ファシリテーターが意志を持って形を与えるものではなく、参加者の感受性や想像力から生み出されるものだと私は信じています。
ただ、何もせずに参加者の関係性が変容したり、学びや気付きが生まれるかというとなかなか上手くいかず、ここでファシリテーターによる工夫が必要になります。
仮にファシリテーターがそのために何かをデザインしているとしたら、それらが生まれるための「余白」をデザインしているのかもしれません。
緩んだ空気の中に余白が生まれる
例えば、テーブルの真ん中にお菓子や飲み物を用意して、参加者にリラックスしながらワークに取り組んでもらうこと。
自分が緊張しているときは思い切って「実はとても緊張しています」と伝えることで、ファシリテーターと参加者がフラットにいられるムードをつくること。
予め用意された答えに誘導するのではなく、問いだけを用意して、あとはその場の流れに参加者と一緒に身を委ねること。
場の空気を少しだけ緩めると、参加者の心に余白が生まれる。
お互いの関係性が少しだけ変わったり、小さな気付きが生まれる前にまずはそのための心の余白を作るのが、ワークショップにおいてファシリテーターが行っている一番最初のデザインなのだと。
意志を持つこと、余白の中で信じて見守ること
少し話を戻しますが「スライド」「会場のレイアウト」「コンセプト」からはデザインの気配を感じます。これらを「ファシリテーターの意志」という観点から見てみましょう。
ワークショップを作るときは学習目標と活動目標を設定し、そのゴールに向かってワークの内容や、当日に向けてのメッセージなどを組み立てていきます。
その過程で「このルールは守ってもらいたいな」「こんな風に時間を過ごしてもらえたらいいな」というファシリテーター自身の意志を織り交ぜながらスライドなどのコンテンツを組み立てていくのですが、この視覚的表現や言葉を使って参加者にメッセージを届けることは、私にとってはまさにデザインそのものでした。
ただ、先程も書いたとおりあくまでもワーク中は信じて見守るのが重要。作り込みすぎて誘導になるのは避けつつ「ここはみんなどんな話をするのかな」「予想と全然違う発想が出てきたら最高だなあ」と、参加者の創造性に身を委ねていきます。
コンセプトやスライド、空間設計で確実におさえたい部分は意志を持ってデザインしつつ、余白の中に何が生まれるかは信じて見守る、意志と余白を使い分けるのはファシリテーターとデザイナーを往復するまではなかった感覚だなと思っています。
おわりに
私のこれまでのデザインはユーザーの行動や感情を予測して先回りすることが多く、ユーザー自身が何を思い、どう行動するかを委ねる機会が無かったように思います。
その分いま取り組んでいるワークショップのファシリテーションはとても新鮮で、先回りなしの一発勝負、手触り感のある参加者とのやり取りがとても嬉しく、日々刺激をもらいながら楽しく取り組んでいます。
1年の終わりにひたすらモヤモヤを書き綴るのもどうなんだろうなと思いつつ、たまにはこういう答えのない話をするのも悪くないかもしれません。
引き続き意志と余白の間を行ったり来たりしながら、デザインとファシリテーションの探究を続けていきます。
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明日10日目はファシリテーター/サービスデザイナーの押田さんの記事を予定しています。お楽しみに!
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