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DAZZLE『Labyrinth 東京C』【#まどか観劇記録2020 13/60】

日曜日の深夜なのに眠れずにいます。明日から普通に仕事だというのに。あまりに眠れる気配がないのでパソコンを立ち上げて文章を書き始めてしまった。

眠れない原因は言うまでもなく数時間前に見たDAZZLEの『Labyrinth東京C』のせいだ。

事の発端は今年の2月にさかのぼります。新型コロナウイルスの影響を受けて、3月5日から上演予定だったDAZZLE『NORA』が初日まで1週間という日に延期が決まりました。
それに前後してすべての舞台公演をはじめとするエンタメが止まり、緊急事態宣言が出され日本全体が厳しい状況を過ごした4月、5月。そして、先日ようやく緊急事態宣言が解除され、6月からの再スタートを切ろうとしていた30日夜、それは突然に告げられました。

2020年5月31日22時。
DAZZLE「NORA」の舞台である東京Cがオンライン上に出現する。

2月に必ず上演するという強い言葉とともに延期を告げられたため、いつかのその日を疑ってはいなかったもののまだ具体的な日取りなどは難しいだろうなと思っていた矢先の出来事でした。

リアルでできないならオンラインでやってしまえ。
これまでの期間でも様々なアーティストの方々がライブ配信等、オンラインを駆使したコンテンツを提供してくださっていましたが、ついにDAZZLEもなのだなと告知文を読むと目に飛び込んできた言葉。

疑似的オンラインイマーシブシアター
そして「NORA」で導入される予定だったマルチストーリーも装備。

イマーシブシアターとは観客自身の意志で動き見るものを決められるという没入型の舞台形式のこと。
マルチストーリーとは用意された複数のストーリーを観客の投票によって決め物語を進めていくという方式のこと。

彼らは一体何をやろうというのか。
オンラインでそんなことが可能なのか。

使うツールはYouTubeのみ。
スタート時間に最初の動画が配信され、それを見た観客がコメント欄にあるREDかBLUEの選択肢にいいねを表明し、投票数が多かった選択肢が次のルートとして選ばれ、その動画が続いて配信されるという仕組み。

それだけ、なのです。
イマーシブシアターといえ、観客が自由に動き回ったり、操作できるわけではない。やれることはどちらかの選択肢に意見を表明することのみ。しかし、この選ぶという行為がこれほどまでに物語に対する没入度を深め、観客自身の心理状況を揺さぶるのかということを先ほどの私はまざまざと体験したのでした。DAZZLEは、観客には選択するというひとつの行為を行わせることでオンラインイマーシブもマルチストーリーも実現してしまいました。

上演時間は15分。今年に入って一番濃密な15分。

『Labyrinth東京C』では、選択のチャンスが3回ありました。
動画がいつまで公開されているかわかりませんが、これからYouTubeで見る人のために順番と選択結果だけ記録しておきます。

①ゲームスタートhttps://youtu.be/hKI8jqqkIK
選択肢:R鍵のネックレス B十字架のネックレス
選ばれたのはR
②奇妙な情報屋youtu.be/k3XfG8yuocw
選択肢:R男を追う B新聞を見る
選ばれたのはR
③背中の先にあるものyoutu.be/KWNT7e2soYg
選択肢:Rケースを調べる B死体を調べる
選ばれたのはB
④密室から見える道https://youtu.be/obTh5g2dWnE
~FIN~

3回の選択チャンスで3回とも違う体験ができました。

1回目の選択。
実はYouTubeのみで見ていた最初は再生がうまくいかずに選択に参加できませんでした。この時点では、後れを取り戻さなければというのに必死で考える間もなく次の動画に進みました。

2回目の選択。
選択は間に合いましたが、多数決で私が選ばなかったほうに決まりました。これがかなり引きずります。全部見終わった今でもあそこで私が選んだ側のルートだったら何が見れたのだろうかと考えているほどです。

3回目の選択。
選択もでき、選んだルートに進みました。それでも、選ばなかったルートが気になります。なんてことだ。笑

2,3回目の選択に参加したことによって選択するドキドキ感を知ってしまい、1回目に参加できなかったことが悔しくて悔しくて仕方がなかった。
実は始まるまでは、自分が選択しなくても他の観客の選択肢で物語が進むのであれば、映像に集中したいし、ダンスが見れるならそういうものだと思って選択しなくてもいいかななんて考えたこともありました。でも、始まってしまったら選択せずにはいられない。この一票が物語を動かすかもしれないという誘惑と期待とに抗える人間はいないのではないでしょうか。

そして、選ばれなかった選択肢をこれほど強く考えたことも初めてでした。普段、私は選ぶことは意識しても選んだことによって選ばなかったことを意識することはあまりありません。しかし、今日に限っては選ばなかった選択肢の先にあったはずの未来が気になって仕方がないのです。
しかもリアルタイムで見ていた時はついていくのに必死だったけれど、あとから見直すと選択肢の得票数も見れるのですよね。僅差だったりするともう…考えが留まるところを知りません。

マルチストーリーの罠(沼?)に完全にハマったようです。

そして、見ている間に選択をすることについての違和感も全くなく、ゲームのプレイヤーかのように自然に物語にのめりこめたことも素晴らしかった。

リアルタイムで2択の選択肢を迫られる。
このことにより、観客はただの傍観者ではなく、自分で考えることになる。考えようと選ぼうとすればするほど物語に深くのめりこみます。
そして、選んだ答えが正しかったのかも考え続けることになりました。だって自分の選択肢の先に人が死ねばそれはなんとも言えない気持ちになるわけです。しかもどうやら何かの謎を解かなければいけないような雰囲気があるから、選んだ答えが正しいかどうかもハラハラする。

わずか15分の間にどれだけ思考が動いたんだろうというくらい疲れました。笑

物語の舞台を東京にしたところも素晴らしいなという感想です。動画は最初東京タワーから始まるし、東京で暮らす人間としてはどこか見たことのあるような風景に物語の世界が一気に身近に感じられ、カメラの視点がいつの間にか自分の目線にすり替わる感覚があります。

すごい没入感。つまりイマーシブ。
まんまとしてやられた気分です(笑)。ああ、楽しかった。

そして、15分の上演の最後に発表になりましたが、2020年3月に果たされなかったNORA上演は一年の時を経て2021年6月に上演が決定しました。おそらく、それまでに更なる進化を遂げているのでしょう。プロトタイプとしてのVer.0のNORAを見てみたかったなという気持ちもわずかにありますが、今回の『Labyrinth 東京C』を見て期待は高まるばかり。

今回は選択肢が選ばれたらあらかじめ作っていた動画のどちらかを流すという方法でしたが、実際に劇場でこれをやるとなると演者、スタッフ関わる多くの人が一人残らず全員間違えずにやり切ることでしか実現できません。動画なら一人が切り替えを担当できるでしょうが。。。
オンラインで体験してみて、改めてこれをリアルでやろうとしているすごさに気づきました。これは絶対にリアルで見たい。そして選択に参加したい。参加しない選択肢がむしろない。

チケット取れるのかなあ…!という心配だけです。
マルチストーリーのシーンもすべて見たいしどうか公演数は多めでお願いしたい気持ち。

最後にもうひとつだけ書き加えてさせてください。
この一連の練習、撮影、編集は緊急事態宣言が解除されてから行われたそうです。

2か月の自粛期間、こつこつと力を蓄え、知略を積み重ね、あとは実行するだけというところまで持っていき、わずか5日ですべてをやり切るというその強さがまぶしいです。爪を牙を研いでいた獅子が満を持して咆哮をあげたかのような。
誰もが大変だった期間に、あきらめることなく前を向いて歩みを止めずに着実に進んでいたDAZZLEの姿に感動と勇気をもらいました。強く爽快な15分でした。

まだ見ていない人は最初の動画がこちらです。

ぞして、リアルのNORAを見たくなった人は、公式サイトやDAZZLEの公式ツイッターで情報が発信されると思うのでチェックしてください。

「NORA」公演サイト→ https://nora-dazzle.tokyo/
DAZZLE 公式ツイッター→ @DAZZLE_tokyo

どうやら疑似的ではなく本物のオンラインイマーシブシアターも開発が進んでいるとか。ますます気になる。

個人的にはかっこいいダンスが見れたのでさらに満足です。

おすすめの作品などを教えていただけるととてもうれしいです。