書林に譜蝶舞い簡を編み、森羅に詩を題して紅塵を掃う。
清代の文士彭㝡の語るところでは、大規模な書庫において書物は互いに干渉しあうという。ある棚の一冊での蝶の羽ばたきが、遠く離れた棚の一冊で竜巻を起こすというように。これは彭㝡の遺作『环形书库』に記されたものであるが、現代でも文字情報における非局所性の例としてたびたび言及される。
Cartaphilus, M. (2182). Does the flap of a butterfly’s wings in a storyboo
賢者の海南西部に自生する食言樹はその名の通り言葉を食う樹である。
言葉を食う──つまり近づいた者の言語中枢を侵食し廃人にする──この樹の生態については未だ研究が進んでおらず解明されていない部分が多い。そばに来た研究者を捕食してしまうためだ。知識という甘い好餌を罠に。
近隣コロニー住民からは不法廃棄された粘菌コンピュータが独自の進化を遂げたものではないかとまことしやかに囁かれている。
Cartaphilus, M. (2184).Verbivorous tree in Mar
古代よりケルト人は宇宙を格子柄と考えてきた。
タータンにおける経糸は時間を、緯糸は空間を表しており、これにより世界面は常に矩形に形成される。中世スコットランドでは氏族の紛争が絶えず、その争点は各々のクラン・タータンで表される宇宙の在り方であったという。
また、ミンコフスキーがキルトの腰から裾へ広がる形状から光円錐を提唱したことは読者諸氏もよく知るところであろう。
Cartaphilus, M. (2183). The theory of plaid spacetime. A