見えない、聞こえない場所
「あなた」や「私」の 物語のなかに
普遍性は かくれていて
一般論の中に 普遍性はない
それは
素晴らしい映画や小説には、個人を引き込むチカラがあるのに
ためになるはずの説法が、ときに退屈なあくびをさそうのに 似ている
社会生活を送るうえで 必要かつ大切な常識も
それらを取りまとめているものが、実は得体の知れない「世間」であり
ちょうど
平均点などという点数が この世のどこにも実在しないように
「世間」もまた、目安でしかないことを 肝に命ずべきかもしれない
見える風景は 見えないものに触れていて
聞こえる音は 聞こえない音に触れている
感動する風景や音楽は
おそらく、わたしたちに
見えない風景、聞こえない音に 触れさせてくれるのだ
コトバもまた、
意味以前の原型に わたしたちを連れ戻すチカラを 奥深くに持っている
わたしたちが 感動するとき
風景や、音楽や、コトバの意味直接ではなく
その裏側とでもいうか
見えない、聞こえない場所で 心がふるえている
何かに癒されたとしたなら
その「何か」は、普遍性を持った「なにものか」であり
それは、きわめて個人的な、誰もが保持している「物語」なのだと思う