感性を深める創作方法って何? 1/2
この記事の趣旨は?
一説によれば学会で活躍する研究者クラスの思考力を有するo1 proと、議論大好き模人(実際に博士を取って研究者をしている)が人間と語るには少しヘビーな感じで語り合ってみる。
今日のテーマ:創作における個々の感性を深めるための方法論とは?
下記の記事で、構成論/創作論には「正解パターン型」と「ツールボックス型」があることを紹介した。
AIを創作に使用する際には「正解パターン型」の方法論しか持っていないと、AIの「既存流行作品と似たようなところに寄せたがる」という弱点を助長してしまうことも下記記事で述べた。
となれば、「じゃあ、ツールボックス型の方法論って何?」となるだろう。今日は、自分を理解し、感性を深め、印象深く表現する、そんな方法をAIと語っていきたい。
なお
AIが知っているのは既に言語化された一般論である
各人が各様のツールボックス型方法論を持っているが、AIは全てを知らない
加えて、ツールボックス型方法論は、まさしく「ツール」であり、提示された方法を全部使う必要はない
個々人の感性や考え方に合う方法を見つけていく性格のものである
ゆえに個々人の方法論は否定されるものではない
AIの発言は「こんな方法もあるよ!」という提案である
互いにツールを持ち寄って、作品の幅を広げるのが最終目的である
という主旨であることは理解されたい。
模人の問い:自身の掘り下げ
正解パターン的理論は世に溢れており、今更語る必要はないと思います。今日はツールボックス的理論について、あなたが学習した知識をもとに深堀りしていきましょう。特に、創作者の感性やインスピレーションを研鑽するような、深堀りタイプ、およびそれらを印象的に見せるための研磨タイプのツールボックス理論です。
小説の作り方について、作者自身の個性把握、ログライン、キャラクターアーク、キャラクター配置、世界観設定、プロットなどを順に追っていきます。
まずは、作者自身の個性把握について、感性やインスピレーションを研鑽するツールボックスとは何でしょうか。
とある漫画家※は、既存商業作品を映画、アニメ、漫画、小説問わず片っ端から鑑賞し、好き嫌いに分けます。ポイントは理由を言語化、見える化することで、例えば要素ごとの評点をつけます。要素とは、ストーリー、キャラクター、世界観などです。しかし、客観的には似たようなストーリーでも主観的な評価は全く違うことがある。ではストーリーのどこが違うから評価が別れたのだろう?をストーリーのサブ要素として加える。納得のいく評価軸が出来たなら、実はそれが自身のこだわりポイントである、というような感じです。
あなたが学習した範囲で、類似するような作者が自身の感性に対する理解を深めるためのツールボックスを列挙してください。
※「うしおととら」から第一線で作品を出し続けている藤田先生の「読者ハ読ムナ」にかかれている。
o1 Proの答え
以下に、「作者が自身の感性やインスピレーションを深く理解するためのツールボックス」をいくつか列挙してみます。
1. 好み・嫌い分析シート(テイスト・マッピング)
概要
視聴・読書ログをつけながら、「何が好き/何が嫌いか」を洗い出し、項目ごとに点数や短い感想を記録する方法。
好き嫌いの要素(ストーリー構成、キャラクター造形、ビジュアル、音楽、テーマ、テンポなど)を細分化し、どこが良かった/悪かったかを言語化する。
効果
自分が反応しやすい「フック」が可視化される。
「なぜ好ましい/好ましくないのか?」を掘り下げることで、自身の価値観や創作の重点ポイントを発見できる。
使い方のヒント
特定ジャンルだけでなく、異なるジャンルや媒体(映画、ドラマ、アニメ、小説、漫画など)を横断して分析すると、より多面的な“好みの傾向”が見えてくる。
「似ているはずなのに、評価が全然違う」ケースに注目すると、自分だけのこだわりが言語化しやすい。
2. 感情タグ付けノート
概要
読んだり観たりした作品に対して、シーン単位で「どんな感情が湧いたか」をタグとして書き留める。
感動・ワクワク・違和感・悲しみ・ぞくぞく感・爽快感・笑いなど、感じたままを短い言葉でメモする。
効果
ストーリーのどの部分でどんな感情が動くのかを可視化できる。
自分が最も重視する感情や、創作で表現したい感情が明確になる。
使い方のヒント
感情タグを何種類かに絞り込んでおき、各作品・シーンに割り振る形にすると、あとで集計や比較がしやすい。
作品全体でなく部分的なシーンにも注目して感情をタグ付けすると、より細かい“ツボ”の発見につながる。
3. 五感×体験ヒアリング
概要
日常生活や作品鑑賞時に、五感(視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚)がどう刺激されたかを言語化する訓練。
特に印象に残ったシーンを、「音のイメージ」「光の感じ」「空気感」などの五感レベルで詳細に記録する。
効果
感覚的な反応を言葉に置き換える力が養われ、表現力も向上する。
自分がどの感覚に強く反応するかがわかり、作品の雰囲気づくりに活かせる。
使い方のヒント
映画のワンシーンを観たとき、「どんな匂いがしそうか」を想像して書き留める、といった形で訓練を重ねる。
小説や漫画であれば、描かれていない五感情報を想像補完してメモすることで、自分の「感覚的好み」がはっきりする。
4. “なぜ?”を5回問う(ファイブ・ホワイズ)
概要
トヨタ生産方式で有名な問題解決手法を、創作の感性分析に転用する。
「この作品の主人公が好き…なぜ?」「◯◯だから…なぜ?」と掘り下げを繰り返し、本質的な理由を炙り出す。
効果
直感的な好き嫌いを、より深いレベルの価値観やテーマに結びつけられる。
何度も「なぜ?」を繰り返すうちに、自分が本当に大切にしている要素や、無意識の思い込みが見えてくる。
使い方のヒント
好きなキャラ、好きな展開、好きな設定などに対して5回「なぜ?」を繰り返すと、それらを貫く自分特有の“核”が現れやすい。
嫌いな要素にも応用すると、自分がどうしても受け入れられない価値観や展開がわかり、逆に創作上の禁則事項が浮き彫りになる。
5. マインドマップ or キーワードクラウド
概要
好き・嫌いの要素や感情タグ、思い浮かんだキーワードなどを、連想ゲーム的に枝葉を広げながら整理する手法。
直感的にキーワードをつなげていくことで、自分の連想回路を視覚化する。
効果
思考の広がりや結びつきが一目でわかる。
バラバラに記録していたメモが関連づけられ、テーマやモチーフなど“核”が見えやすくなる。
使い方のヒント
紙やホワイトボードに「好きな要素」「嫌いな要素」などを中心に書き出し、周囲に関連キーワードを放射状に配置していく。
デジタルツールのマインドマッピングソフトを使って整理してもよい。
6. テーマ・ストーリーテリング自己分析
概要
自分の人生経験を題材に、「一番熱くなった出来事」「強く印象に残っている失敗」などを簡単なショートストーリーにする。
そのショートストーリーに“テーマ”をつけ、「なぜこのテーマが自分にとって大切なのか」を書き出す。
効果
「自分はこういう問題や価値観に強く心を動かされる」というパターンが発見できる。
人生経験をフィクション化する力が鍛えられ、自分が描きたいテーマがより明確になる。
使い方のヒント
昔の失敗談や成功体験をいくつかピックアップして物語形式に書き出す。
そこに“キャラクター化”や“対立構造”を付加して分析すると、自分の好きな物語パターンが見つかる。
7. ビジュアル・ムードボード作り
概要
自分が「ピンと来た」画像や写真、色味、アートワークなどをスクラップして、1枚のボードやデジタルでまとめる。
言葉では捉えづらい「感覚的好み」を、ビジュアルで集約・比較する。
効果
“自分の世界観”が直感レベルで掴みやすくなる。
配色やスタイルの好みが判明し、作品全体のトーンや雰囲気づくりに活かせる。
使い方のヒント
Pinterestや画像共有サービスなどを活用して、フォルダ分けしても良い。
ビジュアルをひとまとめにした後、そこに短い言葉で印象をメモするなどして“自分はここに惹かれている”ポイントを可視化する。
まとめ
これらのツールボックス的手法は、いずれも「自分の好み」「反応するツボ」「大事にしたいテーマ」を可視化・言語化・構造化する点に共通しています。とくに、
感情・感覚を具体的に記録・タグ付けする
“なぜ?”を繰り返し問うことで、本質を掘り下げる
視覚的な整理(マインドマップ・ムードボードなど)を併用する
といったアプローチが効果的です。
こうした自己分析を習慣化することで、いざ小説の企画やキャラクター設定を考えるときに「自分の核となる価値観・好み」が把握でき、ブレない作風やオリジナル性に結びつきやすくなります。
最終的には、「自分は何を面白いと思い、何を嫌だと感じ、どんなテーマを描きたいのか」が明らかになるほど、創作上の選択肢が整理され、独自性のあるストーリーやキャラクター設計がしやすくなるでしょう。
模人の問い2:ログラインなど簡易あらすじについて
では、次にそうやって自分のこだわりや興味がなんとなく分かってきたとします。次に、大まかな方向性に基づいて、ログラインを作りましょう。
例えば、キャッチーであること、など正解パターン的な理論もありますが、ここでは作者の感性やこだわりを深めるためのツールボックス的な理論を重視して、あなたの学習した内容を整理してください。
o1 Proの答え
以下では、作者の個性・感性を軸にして“ログライン”を作る際に役立つツールボックス的な考え方・アプローチをまとめます。いわゆる「売れる形」「キャッチーな形」を目指すよりも、自分のこだわりや興味をしっかり反映させた“核”を可視化し、後々ブレずに発展できる土台をつくることが狙いです。
1. ログライン作成の“ツールボックス的”視点
(1) 自分の「なぜ?」を軸にする
ツールの概要
まずは「なぜ、今回のテーマやストーリーを描きたいのか」を自分に問いかけ、言葉にしてみる。作品世界やキャラクターより前に、“作者がそこに何を求めているか”を最初に意識する。メリット
作品の根幹となる“魂”や“核”を把握できる。
ログラインに“作者ならではの熱量”が込められ、キャッチーさとは違う“独自性”が滲みやすい。
(2) 複数バージョンを試作する
ツールの概要
ログラインを一つに絞り込む前に、「キャラクター視点」「世界観・設定視点」「テーマ視点」「感情的フック視点」など、異なる切り口で数パターンの“ログライン候補”を作ってみる。メリット
自分のどの要素を強調すれば一番“しっくり”くるかを比較できる。
ログライン作成自体が“自分はどの要素を最も大事に思っているのか”を再確認する過程になる。
(3) 感情の動き・雰囲気を盛り込む
ツールの概要
作品全体で得たい感情・トーン(ワクワク・切なさ・高揚感・ダークさ 等)を、短いフレーズでもいいのでログラインの中に滲ませる。メリット
読み手(自分も含めて)が、その物語が醸し出す“空気感”をイメージしやすい。
書き手の“こだわり”や“作風”がより明確になる。
2. ログライン作成の具体的ステップ例
ここでは、あくまで“ツールボックス”のように柔軟に使えるステップを示します。順番どおりでなくても構いません。各ステップを組み合わせたり、抜き出したりしてみてください。
Step 1:キーコンセプト(Key Concept)を抽出する
やり方
先にやった「好き嫌い分析」や「感情タグ付け」を参照しながら、“今回の作品で絶対に入れたい要素”を1〜3個書き出す。
例)「復讐と救済」「真実を求める探究心」「SF的ガジェット×青春」など。
ポイント
数が多くなると焦点が散るので、多くても3つくらいに厳選。
これが後々、ログラインで“必ず外せないピース”になる。
Step 2:主人公 or 中心キャラクターの「欲求」と「欠落」を明確にする
やり方
主人公が求めているもの(Want)と、心の奥にある不安や欠けている部分(Need、あるいはトラウマ)を短文で書き出す。
例)「妹を救うため、犯罪組織を追う元刑事。だが自身も幼少期の体験から、人を信じることが苦手。」
ポイント
自分のこだわるテーマと主人公の内面がどこで接続するかをチェック。
欠落や悩みは、作者が「こういう葛藤が描きたい!」と思うものがベスト。
Step 3:対立・衝突(Conflict)を整理する
やり方
主人公の目標や価値観を阻むもの(敵対者、環境、内面の葛藤、社会の構造など)を明確にする。
“この物語はどんな葛藤・闘いを描くのか?”を一言で言い表す。
ポイント
あなたが重視したい“対立軸”を色濃く打ち出すと、そのまま作風の独自性がログラインに反映される。
ポイントは“正解の対立”ではなく、自分が燃える・わくわくする対立を探すこと。
Step 4:舞台・設定(Setting)をひとフレーズで入れる
やり方
ファンタジーなら「魔術が衰退しつつある王国」、現代物なら「地方の寂れた港町」、SFなら「火星へのテラフォーミングが進んだ近未来」など。
簡単な形容詞やキーワードを添えると、世界観の雰囲気を短く伝えられる。
ポイント
ログラインの中に盛り込みすぎず、“要所”だけ切り取る。
設定に熱を入れたい場合は、数パターンのログラインで各設定の説明を試してみると、自分のこだわりがどこにあるか浮き彫りになる。
Step 5:テーマ or メッセージの“余韻”を加える
やり方
作品を通じて「何を問いかけたいのか?」「どんなエモーションが最終的に残るか?」を短い言葉で示唆する。
例)「家族とは何かを問い直すダーク・ファンタジー」「孤独を抱える人々が光を見出す近未来群像劇」など。
ポイント
はっきり“説教”や“結論”を語る必要はない。むしろ「読んだ後に、こういう気持ちになってほしい」という“余韻”や“問い”をほのめかすくらいでOK。
自分のこだわり(好きなテーマ、描きたい感情)が一言に凝縮されるので、自分自身のモチベーションを保つためにも重要。
Step 6:一文 or 二文にまとめる
やり方
上記1〜5をベースに、「キャラ(欲求・欠落)+ 対立・障害+ 舞台+ テーマの余韻」を混ぜ合わせて、一文か二文に挑戦する。
いろんな順番で組み替えてみる。たとえば「舞台→主人公→欲求→対立の概要→テーマ」など。
ポイント
まずは何パターンか書いてみて、“これは自分の作品らしい!”と思えたものを仮バージョンとしてキープ。
一文に収まらなくても無理やり削らず、二文構成にして「キャラと課題→世界観とテーマ」と分けるのもアリ。
Step 7:振り返り・微調整
やり方
ログラインを読んだとき、自分自身が“ここにワクワクできるか?”を最終チェック。
何か物足りない部分や、「もっとこれを入れたい」と思うことがあれば書き足しや差し替えを行う。
ポイント
あくまで“自分のため”のログラインなので、一般的なキャッチーさや簡潔さのルールに捉われすぎない。
作者が「これなら書きたくなる!」と燃え上がるような核さえあれば充分。
3. “ツールボックス的”ログライン作りの鍵
完成形よりも“プロトタイプ”を重ねる
1回でベストなログラインを目指すのではなく、何度も試行錯誤することで、自分の感性に合った形に近づける。
“正解”より“自分の情熱”を最優先
キャッチーなフレーズかどうかよりも、「自分が本当に描きたいものを言い表せているか?」を重視する。
テーマ・トーン・設定など、自分がこだわりたい軸を強調する
ログラインは必ずしも一般受けする要素を端的に示すためだけのものではない。自分独自の色を出すことが、のちの創作エネルギーに直結する。
柔軟に改変しつつ、軸がブレないようにする
作品づくりが進むにつれて世界観やキャラが変化しても構わないが、“なぜこの物語を描きたいのか”の本質が失われないように注意。
まとめ
“作者の感性”を中心に据えたログライン作りは、作品の“核”と自分の“書きたい理由”を一体化させるためのツールボックス的手法といえます。
ツールボックス的発想では「自分が飽きずに創作を続ける燃料」として活用できます。
とりわけ、“複数パターンの下書き”や“自分がワクワクできる要素の洗い出し”を優先すると、自分のこだわりや興味が活きたログラインが生まれやすくなるでしょう。
最終的には、「どの切り口が自分らしさを最大限に発揮できるか?」を見極めることが大切です。
長くなるので、キャラクター関係と世界観は、次の記事に。
当たり前だが、AIがやっているのは既存の知識の提案であり、新しいツールの考案と、ツールの選定は人間の役割である。それに、AIといえど知っている範囲には限りがあるので、あなたが持っているツールが否定されるわけではない。私も勉強中の身なので、ぜひぜひ教えてほしい。
↓がキャラクターと世界観。