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速読は速聴(下)
前回記事、「速読は速聴(上)」で、このように書きました。
わたしたちの話す音声言語が本来的に音声であったことに立ち返れば
音声としてのことばと論理の処理能力が重要である。
だから、速読力とは速聴力である、と。
本記事ではその具体的なやり方をご紹介します。
まず前提となるのは、私の言う「速読のための速聴トレーニング」とは
脳の処理のトレーニングであるということです。
やり方は簡単。
お手持ちのスマホなどで、音声情報コンテンツの再生速度を
「ちょっと頑張れば聞き取れる」
くらいまで上げていくだけです。
使うツールとしては、
方法①速度調節機能付きの音声配信アプリ/サービスを使う
方法②OS(=機器に入っているシステム)の読み上げ機能を使って、電子書籍やネット記事を音声コンテンツ化する
という2つの方法があります。
以下に挙げるサービスを例に、使いやすいものを見つけてみてください。
方法①速度調節機能付きの音声配信アプリ/サービスを使う
例・audiobook.jp: オーディオブック。0.5~4倍まで0.1刻みで変更可。
・YouTube: 本の要約やラジオ的なチャンネルも多い。アプリだと0.25~2倍までだが、パソコンのChrome拡張機能などで4倍速再生も可。
方法②OS(=機器に入っているシステム)の読み上げ機能を使って、電子書籍やネット記事、pdfファイルを音声コンテンツ化する
例 「Kindleの読み上げを使ってオーディオブック化する方法」
さて、この記事でフォーカスをしたいのは、ツールではなくコンテンツです。
私が第一に重視するのは、コンテンツ選びの分類、すなわち
①練習としての速聴
②読書としての速聴
③速聴しない
の分類なのです。
そもそも、耳できく音声情報にはデメリットが2つあります。
それは、①時間がかかる②書き込みができないという点です。
例えばビジネス書のページ数は平均200~300ページといわれています。
これがオーディオブック配信サービスだと、だいたい一冊あたり4時間~5時間程度の音声データになります。
2倍速しても2時間、4倍速でもやっと1時間。
一冊にかなりの時間をかけることになります。
紙の本では、ぱらぱらとページをめくりながら面白そうなところだけちゃんと読む、
太字になっているとこだけ読む、などの読み方ができますが
音声ではそれができません。
また、書き込みや付箋をつけることも基本的にできないので、
あとで特定の箇所だけ見返す、ということもできません。
つまり、音声データは①時間がかかり②見返せない
という特徴があり、
速聴をするコンテンツ選びとその目的を明確にすることが重要なのです。
その見極めに際して参考となる分類軸が、
①練習としての速聴 か
②読書としての速聴 か
③速聴しない か
というものです。
①練習としての速聴であれば、コンテンツは「面白そう」と思ったものであればなんでも構いません。
ポイントは「ちょっと頑張ると聞き取れる」くらいのスピードまで上げることと、はじめは5分以内の短いコンテンツを選ぶこと。
冒頭で述べた通り、ここでは脳の言語処理のスピードを上げることが目的ですから、
惰性で長時間聞き流すより、集中して少し難しいレベルにチャレンジすることが重要です。
速聴トレーニングは、脳の筋トレなのです。
一方、速聴の練習をしながらもしっかり内容を味わい「読書」することも可能です。
この②読書としての速聴の際にコンテンツを選ぶ基準は
「最初から最後まで聞き通したいか」です。
先述の通り、耳の読書では「ぱらぱら読み」ができません。
ですが一字一句流れるように読みたいと思う本や情報に関しては、
読書のように内容を味わいつつ、脳トレとして速聴力を鍛えることも可能です。
ただしここで重要なのは、
③速聴しないという選択肢の存在です。
たとえば私個人としては、速聴トレーニングに小説や詩の朗読を使うのはおすすめしません。
なぜなら、「おっとりとした性格の主人公のセリフが早口になってしまう」など、速聴で聞くからこその弊害も生じてしまうからです。
言い換えれば、読書の時間自体を味わいたいコンテンツは
(その時間を早めようとする)速聴にはもちろん向かない、ということ。
何を速読・速聴してしまわないかを決めることは、
あなたの過ごす時間をとても豊かなものにするでしょう。
この記事では、
わたしたちの音声言語は本来的に音声であった、という原理から、
脳の言語処理速度を上げるための速読速聴トレーニングの始め方・向き合い方を紹介しました。
どんなツールでどんなコンテンツを使うのが合っているかは人それぞれです。ぜひ記事を参考に、さまざまな音声を速聴してみてください。
そして同時に、「速読・速聴したくない本」と出会ってください。
前回記事はこちら↓