カフェ・ロワイヤル
近所の喫茶店で気になっていたメニューがあった。
『カフェ・ロワイヤル』
ブレンドコーヒーより100円くらい高く、マスターに聞くと「ブランデー入りのコーヒー」と返ってきた。
その日、少し疲れていた。運転をしない夜、店に立ち寄って、静かに、カフェロワイヤルをいただいた。
ブランデーの香りが鼻腔をつき、ナポレオンですら酔わせた芳醇な甘さにくらり、と額が揺れた。
そして、ほのかに立ち上るアルコールの蒸気と絡まりながら、珈琲豆の煎った香りが広がった。
ブランデーは主張が強すぎても、弱すぎてもバランスが崩れる。高級な洋酒だからこそ、裏方にまわってコーヒーの香ばしさを引き立てることができるのだろう。
「俺を、私を見て」そのような台詞と自己主張に満ちた世界にやや疲れていた。
支える役割になっても、中心にいなくても、しっかりと香り、輝く。
『高貴』とは、そのようなものなのかもしれない。
夜のカフェロワイヤルは、少しくたびれた木曜日の夜に相応しい。