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とても良かった谷内六郎館 横須賀美術館

横須賀美術館には、週刊新潮の表紙絵1300余点を展示する谷内六郎館があります。

横須賀にアトリエを構えた谷内六郎の遺族が遺贈した作品群であり、その時々によって作品の入れ替えがありますが、横須賀美術館本館とは別に谷内六郎の作品の展示のために設計された建物があります。

企画展と常設展を見終わり、帰り際に、まあ寄ってみるか、ぐらいの気持ちで別棟に向かいました。入ってみると、見学者は私1人。「花図鑑」という展示名です。

本館のチケットで入館できるので、入口でチケットを見せ、中に入りました。中にはスタッフが1人。

ぼくとつとした絵があるなあ、というぐらいでしたが、よくよく見てみるとすべて週刊新潮の表紙絵だと解説文があります。週刊新潮は、「週刊新潮」という活字には目がとまっていましたが、その背景の絵がどんなものだったか思い出すことができないぐらい意識したことがありませんでした。
言われてみると、確かに表紙絵はこのような絵だったと次第に思い出してきました。

1つ1つの作品は、昭和の香りがする、どこかしら懐かしさを感じさせる、素朴な絵です。すべて原画です。その原画1300あまりが保存されていることに驚きました。

こうなると、じっくり1作品1作品見たくなります。しかも展示場は独り占めの常態です。ずうずうしくも、学芸員と思われるスタッフの方への質問攻めです。

スタッフの方は丁寧に私の愚問に1つ1つ答えて頂けましたし、私のどうでもいいつぶやきにも付き合っていただけました。

「作品の解説は作者自身が書いたのですね」
「そうですね。1作1作に、作者自身が思い込めて書いています」
「あれ、原稿用紙のマス目を無視して書いていますね。さすが画家ですね。マス目に囚われずに自由に書いていますね。これは面白い」
「そうですね・・・・(笑)」

「春の感じの作品が多いですね」
「ええ、『花図鑑』というテーマの展示ですから」
「たしかに。それは失礼しました(冷汗)。1300もあると展示物は入れ替えるのですか?」
「はい、定期的に入れ替えます。あちらに別棟もありますからぜひ」
「すべて原画なんですね。これは絵画市場には出てないでしょうね」
「ご遺族が売却されてなければ、そうでしょうね」
ついつい下世話なことを聞いてしまいました。

いったん中庭のようなところに出ると、10メートルぐらい先に小さい建物があります。これ、自動ドア?と思いながら中に入ると、作品が展示されていました。

本棟のもどり、
「茶室のような別棟でしたね」
「はい、よく『倉庫かと思った』と言われます。以前は、そこで映像を放映していたので、あのような小さな建物になっています」
「なるほどねえ。たしかに映像が流れていても良い感じですね」
「建物は、この作家さん作品のために設計されているんです」
「へー」

「この作家さんは全く知りませんでした。お仕事中、まだお聞きしていいですか?」
「どうぞ、どうぞ」
私1人しかいませんから、私1人向けの専属解説者のようでした。

十二分に鑑賞した後、帰り際に入口に座っているスタッフさんとも話しました。

「ここはかなり良かったです。恥ずかしながら、この作家さんは全く知りませんでした」
「ありがとうございます。次は4月に別の展示をします。これがチラシです」
「へー、それはいいですね。今度は、ここを目的に来たいですね」
「6月から修復のために閉館しますから、ぜひ」
「修復ですか?まだ建物も新しいようですが」
「外壁とか痛んでいるようですよ」
まだオープンしてから10年ぐらいですが、海から近いせいかメンテナンスが必要なようです。

ついでに、本館の企画展のことも聞きました。
「ヒコーキと美術、ですが、戦争画のようですね。戦争画を扱うのはなかなか難しいと聞いていますが、思い切った企画ですね」
「そうらしいです。初出展のものあり、見所があると思います」
「たまたま、立ち寄っただけでしたが、これは良かったです」
「そうですか!それは良かったです」

本館より滞在時間が長かったかもしれませんが、スタッフさんを独占して詳しい解説を聞くことができ、とても得した気分です。


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