起立性調節障害と保健室
保健室来室が増えて、遅刻が増えて、欠席が増えて
……その背景によくあるのが「起立性調節障害」だ。
これは自律神経の中で特に血圧に影響する身体的な疾患で、中学生では約10%にみられる。
特効薬はないが、加齢と共に症状が軽くなることが多い。
主な症状は、特に朝の怠さがあり、頭痛やめまい、吐き気、腹痛等がある。
比較的午後になると元気で、夜も元気で遅くまで起きている。だから朝起きられないという悪循環になり「生活が不規則だから」と言われることも多い。
これも自律神経の影響で、頑張る時に出る交感神経と、休むときに出る副交感神経がチグハグなため、寝るべき時間帯に眠れない。起きるべき時間帯に起きられない。そんなつらさがある。
休日やイベントは、リラックスしていたり興奮状態が続くので、割と元気だったりする。それがまたこの疾患の誤解を招く。
起立性調節障害は仮病ではないか、と。
また、ストレスの影響が大きく(自律神経系なので当たり前なのだが)、嫌なことがあると症状が悪化しやすい。だから好きなことをやっているときは元気なのに、嫌なことは病気を理由に逃げているように見えてしまう。その姿も誤解を生む。
起立性調節障害は気持ちの問題ではないか、と。
そのように勘違いされやすいが、
ちゃんとした身体的疾患である。
小児科で検査してもらうことで診断可能だ。
私自身の感覚だと、起立性調節障害でもなんとか頑張って登校する子が多い。
通常は加齢と共に軽減するが、起立性調節障害を理由に不登校になるパターンは大きく2つある。
1つは病気だということで全く手を加えないまま放置されること。
少しずつ朝起きる時間を早めたり、ゆっくり支度をしたり、遅刻しやすい環境設定が必要になる。
また、水分塩分を多めにとったり、軽い運動をしたりと、本人の努力も必要だ。
症状の重さに個人差があるので、休みたくなる気持ちもわかるのだが、午後や夕方に顔を見せてくれたら嬉しく思う。
次に、診断を受けても仮病だと思われてしまうケースだ。
友達の何気ない一言が刺さったり、教員や保護者の理解が得られないと、気持ちの行き場がなくなる。
安心する場所があることは症状改善する方法の1つでもあるのだが、学校や家が嫌な場所になってしまうと心身症としての側面が強くなり、ますます悪化する。
私も時折職員に発信するのだが、表面的には理解を得られても、難しさを実感することがある。
痛いものは痛い。
つらいものはつらい。
休んだ分だけ焦る。
なのに誰も信じてくれない。
それなら学校に行きたくなくなるだろうし、自分の部屋やトイレに引きこもりたくもなるだろう。
だから、登校してる子たちはよく頑張っているなぁと心から思う。
そして、そんな子たちの気持ちを代弁したり、調節役になるのも自分の役割だと思っている。
理解を得る難しさを実感しながらも、大人で専門職の私が言ってもわからないなら、その子1人で抱えるのは相当しんどいよね。と、相談してくれて良かったという気持ちが湧く。
大人も、先が不透明で不安を抱える。特に責任感が強い人ほどそうだ。
成績や生活、進路、将来を考えると悲観的になるのも仕方ない。元気な姿を見ると信じてあげられなくて、言いたくないことを言ってしまうこともある。
私は無責任で無力な立場だけど、だからこそ双方の不安を聴きたいと思う。
いつも双方にどう伝えようか、悩んでいる。