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未定義終末環境分析録
MTG Arenaにタイムレスという新フォーマットが実装された。これはこれまでの実装カードがすべて使えるものであり、MTG最古のセットからのすべてが使えるヴィンテージでしか使えない、あるいはレガシーですら禁止の一部カードも使うことができる。このフォーマットに思うところがなくはない(前書き参照)が、少々遊んでみたので記事にする。
導入:初期環境で初めに試すべきこと
私はデッキ構築を「世界のどこかにあるより勝てるデッキを見つける」ゲームだと思って楽しんでいる。「デッキを作ること」はそれがより勝てるデッキであるという仮説を立てることで、対戦することはその仮説が正しいか確かめるための検証の一形態である。デッキには仮説がなければならない。そうでなければ検証により得るものがなく、次の仮説はよりよいものにならない。(もちろん、仮説がないデッキでも何かしらの学びはあるだろうが、存在するすべてのデッキを試すようなリソースはないため、時間当たりの学びを増やす方策を考える必要がある。)
というわけで環境初期は「初めの仮説」あるいは初めの仮説を立てるための材料集めが最もできそうなデッキというものを作るべきだろう。
本編
前提整理
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ヒストリック禁止カードであるラガバンから考えをスタートする。ラガバンはレガシーで禁止である一方で、モダンリーガルである。
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レガシーにある否定の力がモダンにはない。レガシーではより1マナのクリーチャーを場に出してそれを守る勝ち方が正当化される。手札→テンポ変換の強さは1マナのカードの強さ強く関連する。モダンにも否定の力と手札をに変えるインカーネーションが存在する(激情は最近禁止になったが。)であるから、ラガバンの強さはレガシー>モダン>タイムレスであるとわかる。モダンでは対抗呪文を使用したURラガバンがデッキとして成立しているが、これは難しいと考えた。なぜなら、1、2マナのクリーチャーが強い一方で、手札→テンポの変換ができないならば、1Tにクリーチャーを出せなかった場合、後攻だった場合など手札を犠牲にして盤面をまくり対抗呪文でそのまくった状況を維持という流れを作れないから。濁浪の執政もいないので青を使う意味はそもそも薄そうである。
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オーコやウーロ、指輪なんかもあるので、1マナ→フィニッシュへの流れも重要。ウィル(意思の力)がないから1マナでテンポをとってもさっさと勝たなければ強い3、4マナでまくられてしまう。そう考えるとオーコの方を使うか、ラガバンを使うなら何かしらの速いフィニッシュも必要。ネクロポーテンスなんかもあるので、3の返しのターンにプレッシャーをかけられる程度の速度は欲しい。何か別のデッキを考えるにしても速度感はそれぐらいの認識。
初期案
仮説
課題となる迅速なゲームフィニッシュのため、
①死の影を使う
②クロクサを使う
フェッチにショックと自傷手段が多様なため、死の影のライフ調整はやりやすいはずで、フィニッシャーを軽いもので揃えればルールスも使える。スタートとして頭の中にモダンやレガシーのURがあったので、ドラゴンの怒りの媒介者を採用していたので、フェッチも合わせて墓地がたまりやすい想定でクロクサも使う。
ラガバンを使いたいプレイヤーは多いだろうから
③アルカニスト(戦慄衆の秘儀術師)を使う
ラガバンに一方取れるサイズでかつ、稲妻があるからフィニッシャーとしても悪くない。プレイヤーに稲妻を使えば実質パワー4、死の影がいるから思考囲いは火力。
また検証対象として死儀礼のシャーマンも使ってみる。墓地の土地を食うのはクロクサの脱出を遅め、加速して出したいカードもないのでこの時点ではまだ強いかはよくわかっていない。
ということではじめに作ったリスト。
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ミシュラのガラクタが入っていないのは入れ忘れ。ドラゴンの怒りの媒介者がいるし、ルールスで利確しやすいのでこのリストなら入れたほうがいい。
検証結果
死の影は強かった。土地と囲い(+アルカニスト)によるライフコントロールは想像より強く、苦々しい勝利のような弱いカードを入れる必要はない。
一方でクロクサは弱い。ウーロやオーコ、指輪など、クロクサ脱出のレンジと同じぐらいの何と向き合っても負ける。何より手札から出すのが弱すぎる。手札から出してテンポロスしていると脱出できてもオークのトークンにチャンプブロックされて刺しきれない展開になる。
改善案
仮説
クロクサの代わりに死の国からの脱出を使ってみる。入れ忘れていたガラクタも入れたので墓地がたまりやすくまたガラクタを複数回脱出してリソースにできるし、稲妻を複数回脱出で直接のフィニッシャーにすればいい。
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検証結果
死の国からの脱出はまずまず。クロクサよりはマシだが、序盤に引くと弱いし、速度が必要な相手でリソース勝ちできないと稲妻脱出できめるしかないので条件が難しい直接火力。
その他の発見
仮説とは別に回数回した(この時点で前リストと合わせて8回ぐらい)ことにより理解が進んで解析が捗る。
①チャネラーが弱い
初期理解としてウィルやインカーネションによる手札→テンポの変換ができず、それでいてカードが強いのでクソ先手ゲーだと思っていた。しかし、稲妻やオークなど除去が強いため後手はそこまで不利ではない。それでも先攻有利ではあるが。(参考程度に現時点で履歴を見たら先手勝率75%後手勝率68%だった。)先手ブン率を上げて先手は確実に取り、後手は相手が動き悪ければ取る…ぐらいの認識を改め、後手だった場合やケアするプレイもする方針へ。チャネラーラガバン系8枚だとオークをケアできないケースが多いため、使うのをやめる。
代わりに全部死儀礼に変更。マナ出しはルールスに使えれば十分だし、相手にオークでチャンプされる場合や、指輪のプロテクションをつけられた場合でも相手エンドに2点クロックにできるのは偉い。墓地対策も全部偉い。
②探索するドルイドは強い
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仮説検証とかしなくても見たら強いのがわかったので採用。プレイ中にあったら強い場合が多すぎた。デッキが軽いのでめくれたものは大抵使える。詰めに行かなければならないターンでも稲妻目当てで使ったり、ラガバン疾駆で2マナ2点火力として使って詰めたりで即使える火力みたいなものは計8枚。本体も結構強い。フェッチがあるので赤緑と黒緑のショックを入れれば緑の土地は実質12枚で出る。アルカニストで何かしら(コジレックの審問空うちでも)誘発するので相性がいい。フィニッシュ前ターンに出してもパワー4ぐらいは平均して期待できる。これは反復つきのタルモ。微妙だった死の国からの脱出の枠はこれで満足。
③サイドプランに血染めの月を採用
害悪な掌握を最初は3枚取っていたがかなり怪しい。特に先攻なら入れなくていい。オーコやウーロを使う相手にはさっさと殴って勝つべきなので1ゲーム中に2枚使うような場合は大抵負けている。そういうレンジなのでルールス回収で出すより出せば勝つ3マナのカードを入れればいい。
完成
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完成。メインは土地もやりながらいじり、ガラクタ以外は納得。ガラクタはトップを知ったうえでハンデスするのが強く、土地がない状態でルールスを出したときの利確に使えるのでカードは強いが、オークにやられるのがよくないので考えてよさそう。
と思ってみていたらメインのプッシュは邪悪な熱気に変えたほうがよさそうと書いてて気づきました。
サイドは適当。害悪な掌握、全体一点はなくていいのでなんかほかにいいものがあれば変えていい。
おわりに
仮説検証としてのデッキ構築の考え方が伝わったのならば幸いである。あるいは仮説を立てるところまでいかなくても、目的意識を持つことは重要。ある程度思考を絞り、デッキの課題点を明らかにしながらプレイすれば、実際に使ってみなくても入れれば強いカードがわかることもある。課題(何を倒したいか、今のデッキに何が足りないか)ベースで考えながらプレイすると捗る。プレイの一貫性なんていうが、一貫性は当然デッキ構築から始まっている。構築とプレイを包括した視線を持つことが最終的に一番の近道である。
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