この世に悪趣味は存在するのか

数少ない趣味の話しをしよう。

突然だが私はボディメイクをするのが好きだ。

中学生でバドミントン、高校生でサッカー部に所属しておりバリバリのスポーツ少女だった。骨格がしっかりしており、身長も165㎝。自分で言うのもなんだが、四肢が長く、スポーツに向いている体型に恵まれて生まれてきた。SLEを発症する前の私は、いつも色黒だったし、体育祭では基本的にリレーの選手に選ばれていたよ。会計事務所に就職して、集合写真を撮ると白トビする今とは似ても似つかないね!!

そのころは体脂肪率15%程度で、柔軟な筋肉をキープするためにいろいろ日常生活でも気を付けていたよ。

そのときの習慣か、自分の体のコントロールをするのがきらいじゃない。むしろ好きな方。

いまの私の場合はSLEもあるから、無理なダイエットでガリガリになりたい!というよりは、食生活と運動に気を遣い、健康的にヘルシーな体型を維持する、というのを目標に生きている。

そもそも骨格的になれないのもあるけれど、23歳の時に病気で43㎏まで落ちたことがあるので、ガリガリ体型には懲りた。だって転んだら立ち上がれないし、青あざ治らないし。それに貧血があるので、52㎏を切ると寒く感じる。高校時代の全盛期を過ぎた私としては、いまのベスト体型は165㎝52㎏体脂肪率21%前後という認識に落ち着いた。

そんな私が、「自分って悪いやつだなぁ」と思いながら辞められない趣味があるTwitterでダイエットを敢行しているひとの失敗例を遠巻きに観測することである。

まずそういったアカウントの特徴として、目標設定がデカイことが挙げられる。いまの自分の体から人ひとり分くらいを減らすことを、半年で目指す宣言をしたりしている。ビビル。

まぁそれでも、現状の体型がBMI30を超えていたりするから、ちょっと意識するだけで5㎏ぐらいストンと落ちる人種だ。すると調子に乗ったある日、突然に、ポテチ、ケーキ、唐揚げ、菓子パンなどを悪と位置づけ、すべて断とうとする。齢20歳前後にして、一生食べない宣言したりする。

そして真逆に、体にいいとされる食材を過剰に摂り始める。そもそも適正体重を保てていない理由の第一位が、単純に、消費カロリーを摂取カロリーが上回っているだけという事実から目をそらし続ける。そのバグった価値観で食物繊維(を免罪符にサツマイモ)やプロテイン(が含まれるとされるお菓子や赤身の肉)はいくら摂ってもいいと思っている。松本まりかが「オイルがいい」と言えばアマニ油を多量に摂取したりする。あれ油だよ?

さらに信じがたいことに、チートデイと呼ばれる暴飲暴食をオッケーとする日をつくるやつがいる。一気にカロリーを入れることで、基礎代謝を増やすというが、そんな馬鹿な。胃腸が疲弊するし、それまで全く食べないみたいなダイエットをしていたとしたら血糖値が爆上がりして糖尿病患者への道、待ったなしだ。自ら進んで摂食障害に近づいて死期を早めている。自傷行為なのかな?

スリルがある。

そうなのだ。物心ついてから日常的に、平坦に、ボディメイクを30年続けてきた私にとって彼女らの博打うち精神は新鮮そのもので、刺激的なのである。

そして彼女らの特徴は最後、大体7㎏も減ったころ、「我慢」というストレスが爆発して大げさにリバウンドする。それはもうびっくりするくらいリバウンドする。アカウントが一時停止する。

しかしあくまで一時だ。最後の更新から半年後、誰に謝る必要があるの?という謝罪文とともに彼女らは舞い戻ってくる。頼んでもいないのに懲りず、学ばず、また同じように無茶な食生活を記録したレコーディングダイエットを開始する。

さながら、毎日の食事のように、口に入れ、排泄し、ただただ繰り返す行為を見ているようだ。

そう、しかし私は冒頭でも言った通り、遠巻きに観測するだけである。

相互フォローはしているものの、リプライを送ることもなく、干渉しない。忠告もしなければ、褒めることもしない。

私が彼女らを観測するのが趣味なように、彼女らも、ダイエットを敢行している自分を見てもらうことでダイエットの成功を信じているし、短期間で終了するとはいえ、理想の自分を目指している努力家な自己陶酔が趣味なのだ。ここまで利害関係が一致しているのも珍しい。

例えば私が

「生理や臓器の活動維持も勘案すると、1か月2~3㎏減が適正だ。水を抜けば1日で500gは変わる。そもそも体重だけに縛られず、見た目や体脂肪率を計算することが大切だ。言いたいことはいろいろある。いろいろあるが、まずは栄養学と人間の体について知識を付けたらどうでしょう」

とか偉そうにリプライしてみろ。ブロック必至。

今後観測ができなくなるのは困る。

彼女らにとっても貴重な観測者が減るのはやる気を削ぐことに繋がるだろう。

だから観測のみ続ける。

しかしそんな私と同様に、舞い戻ってくるときに彼女が謝罪した理由となったであろう「積極的に干渉していくフォロワー」というパラレルな存在もいる。週末になると家族との会食を理由にバカみたいな量をむさぼる彼女らに「自分に厳しくて尊敬してます♡私も頑張る!」みたいな思ってもいないだろうリプライ送って、豚もおだてりゃ木に登るを観測目的にしてるフォロワーだ。そいつらを邪魔くさく思っているか、と思えばそうでもない。

観測対象が増えたなと思っている。

あくまで、宇宙の惑星運動を観測している気分に近いのだ。

自分では卑下したが、他人にはこのことを悪趣味とは言われたくはない。こんなのはただ、時間をドブに捨てているだけで、誰にも迷惑はかけていない。他人に迷惑をかけず、自分だけが楽しめている。趣味なんて、皆そんなもんだろ。





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