
【BL二次小説】 夜の蝶①終
── チャリ部模擬店
ホストクラブ『夜の蝶』 ──
今日は洋南大学の学園祭。
朝からグラウンドも構内も賑わっている。
チャリ部の出し物は、ホストクラブだった。
「昼間だってのになァにが夜の蝶だ」
部室で荒北が悪態をつく。
「荒北ぁ!ビールこっち追加じゃ!」
「ケッ」
待宮に大声で呼ばれ、ビールを運ぶ。
「荒北、こっちも追加頼む」
「ヘイヘイ」
金城にも呼ばれる。
待宮はその社交性で女性客を多数獲得していた。
金城は放っておいても女性客が寄って来た。
対して荒北は ──。
「やってられっかヨ!こんなチャラい出し物ォ!」
終始不機嫌な顔で暴言を吐いている為、誰も寄り付かない。
指名はゼロだった。
結果、ボーイ役をやらされている。
その時。
「荒北!指名だ!」
「エ?」
荒北に声が掛かった。
奇特な女も居るもんだ、と不思議そうな顔をして席へ近付くと……。
「やあ、靖友」
「し、新開!?」
指名してきたのは新開だった。
「なんだオメー、来てたのかヨ。知らせてなかったのに」
「久しぶり。待宮くんからメールで教えてもらったよ」
驚きながら隣の椅子に座る。
「アイツ誰とでも交流すンな。福ちゃんも一緒か?」
「いや、オレ一人で来た」
しばらく近況報告など世間話をする二人。
「ホストクラブやるって聞いてさ。こりゃ行かなくちゃ、って」
「まァ、オレを指名する女なんて居ねェけどナ。オメーが指名してくれたおかげでやっとビール運びから解放されたわ」
新開のコップにビールを注ぎながら荒北はホッと一息つく。
「オメーがホストやったら構内中の女が寄って来て収拾つかなくなるナ。ギャハハ」
「嫌だよオレ。女の子におべっか言うなんて」
新開は他の席を見渡しながら尋ねた。
「靖友。この店のNo.1になる条件は?指名数?」
「いや、売上額だ」
「No.1になった場合の報酬は?」
「部室掃除の半年間免除」
「OK。オレがおめさんをNo.1にしてやるよ」
「エ?」
新開はバキュンポーズをした。
「シャンパンタワーの注文入りました!!」
部室内に響き渡る声。
全員がどよめき、注目が集まった。
中央にビニールプールが設置される。
その中にいくつものコップが重ねられ、頭上高くタワーが築かれた。
部員も客も全員プールの周りに集まる。
脚立が運ばれてきた。
両側から荒北と新開が登る。
予算の都合で用意出来なかったので、シャンパンの代わりにビール瓶をかざす。
二人で一緒にタワーの天辺からビールを注いだ。
ワアーー!!
パチパチパチパチ!!
歓声が上がる。
何本ものビールを注ぎ、辺りはビシャビシャ。
泡だらけとなったが、大いに盛り上がる店内。
全員にビールの入ったタワーのコップが配られた。
「さっきまでワシが売上No.1じゃったのに、これでパァじゃ」
「荒北の大逆転だな」
待宮は恨めしそうに言うが、金城は大ウケしている。
「ワシの方がモっとるはずなんじゃが……」
「栄吉くんっ!!」
「?」
その時、待宮の背後から怒鳴り声がした。
「なんじゃホストクラブって!うちに黙っとったんか!」
「か、佳奈!!」
突然現れた女性に飛び上がって驚く待宮。
「そげな人とは知らんかったわ!」
「ち、違うんじゃ佳奈!これはの……」
怒って部室を出ていく女性を待宮は慌てて追い掛けて行く。
それを見て待宮の客は全員白けて帰ってしまった。
「これでもうNo.1は覆えされないな」
「ギャハハ!あンがとな新開ィ!オメーのおかげだァ!」
荒北は新開の肩に手を回し、喜んでいる。
ビールを大量に浴びて酔っ払っているようだ。
「念のため、シャンパンタワーの次に値段の高いこのメニューも注文しとこうか」
「おゥ!何でも注文しちゃってェ!」
ご機嫌な荒北は、新開の注文を大声でオーダーした。
「お持ち帰りィ!注文入りましたァ!!」
「えっ???」
金城を始め、部員の全員が荒北と新開に注目した。
「じゃ」
新開は目を丸くしている部員達にウインクし、意味がよく解っていない様子の荒北を連れて、部室を出て行った ──。
おしまい