【BL二次小説】 モテ期、襲来③
東「成る程。木の枝に引っ掛かっていた羽根を石を投げて落とし、礼も聞かずに立ち去った、というのだな?」
荒北の事を部室で検証している部員達。
ダン!
黒田は両拳を長机に叩きつけ怒鳴った。
黒「そんなことされたら!オレだって惚れちまいますよ!」
荒「エエ?」
真「オレだったら立ち去る荒北さんに後ろから飛び付きますね」
新「オレならその場で押し倒すな」
荒「笑えねェ」
荒北は長机に両足を乗せた。
荒「つーかさァ。その場面じゃ誰だってそうすンだろ?そんなことでいちいちファンになられてちゃア、アッという間にハーレムじゃねェか。大袈裟なンだよ」
泉「誰だってとおっしゃいますがね。そんな芸当出来るの荒北さんだけですよ」
荒「ハ?」
東「泉田の言う通りだ。普通はホウキなり長い棒でも持って来るだろう」
真「下手に木登りなんかして転落したら大事ですしね」
荒「……」
新「小石を一発で命中させるなんて、元ピッチャーのおめさんにしか出来ねぇよ」
新開は荒北に指を向けてバキュンポーズをした。
東「なんにせよ、荒北のファンクラブが結成されたことは事実だ。ようこそ荒北。オレ達の世界へ!」
東堂は荒北に握手を求めた。
荒「いらねェよファンクラブなんてメンドクセェ!」
その手を払い除ける荒北。
東「自分の軽はずみな行動が招いた結果だ。受け入れるのだな」
荒「……ぐッ」
東「ファンクラブが増えるのは良い事だ。人気のバロメーターだからな。ファンが増えればチャリ部の人気も上がる。すると部員も増え、予算も増える。貢献に直結しているのだぞ」
東堂は讃えるが、荒北は首を横に振って溜め息をつく。
荒「ヤダヤダ。色々ルール決めたり管理しなきゃいけねェんだろ?」
新「何もしなくていいさ。自ら進んで管理してんのは尽八ぐらいなもんだ。オレなんか手ぇ振ったこともねぇし。プレゼント受け取るぐらいだな。真波、おめさんは?」
真「オレは“真波くーん”って言われたら“はーい”って答えて、“頑張ってー”って言われたら“ありがとー”って答えてるだけです」
荒「プレゼントなんかいらねェし、ハーイありがとーも言いたくねェ……」
だんだん元気が無くなってくる荒北。
東「心配はいらん。ファンというのは集まれば自然と規律が生まれるものだ。抜け駆け禁止、とかな。だからファンの内の誰かと恋に発展することもまず無い」
黒「ちょっと安心しました」
荒「余計なお世話だ」
東「ただ、トラブルを発生させないためには、全員に平等に愛を注ぐ気配りは必要だ」
荒「嫌だァ~メンドクセェ~」
頭を抱える荒北。
新「平等に愛を注がなくたっていいんだよ靖友。平等に無視すればいいんだ」
荒「ン?」
新「靖友のファンはオレ達のとはタイプが違うようだからな。突き放してても問題ないと思うよ」
荒「……そォ?それならいいんだけどォ」
新開のアドバイスに少し気分が軽くなる。
しかし厄介なものを抱えてしまった。
明日からどうしよう。
荒北はその晩眠れなかった。
翌日。
泉「はーい。並んで並んで~」
部室の外で泉田が女子を1列に整列させている。
設置された長机の上には、様々なグッズが展示されていた。
“LOVE荒北”と書かれたウチワ。
“頑張れ荒北”と書かれたハチマキ。
“うるせェバァカ”と書かれたタオル。
などが積まれている。
荒北ファンの女子達がキャアキャアと喜んで購入していた。
黒「塔一郎……作ったのかオマエ。一晩で」
怒りを通り越して呆れている黒田。
泉「キミの分はちゃんと取ってあるよユキ。はい、コンプリートセット」
全商品ひとまとめにした袋を黒田に手渡す。
黒「うっ……。す、すまねぇな」
戸惑いながらも赤面して受け取る黒田。
真「泉田さーーーん!」
真波が笑顔で走って来る。
泉「はい。真波の分」
真波にもコンプリートセットを渡す。
真「わーーい!」
飛び跳ねて喜んでいる。
泉「新開さんの分は後で渡そう」
黒「……なんか、昨日より人数増えてねぇか?」
LOVE荒北うちわで扇ぎながら、ファンの列を見て黒田は不安になった。