【BL二次小説】 モテ期、襲来④
バシャバシャ。
ローラーを終え、外の水道で顔を洗っている荒北。
キュッ。
蛇口を閉める。
「はい」
「はい」
「はい」
荒「!」
荒北の目の前に数人の女子達が一斉にタオルを差し出した。
荒「……」
青冷める荒北。
荒「いや、自分のあっから」
荒北は拒否して立ち去る。
「キャー!断ったわ!」
「思った通り!」
「荒北くんらしい!」
「素敵ー!」
大喜びする女子達。
黒「受け取ってたらどう反応したんスかね」
荒「なんか……みんなお揃いの変な文字が書いてあるタオルだった……」
げっそりしている荒北。
黒「……」
自分もそのタオルを持っていることは秘密にしようと黒田は思った。
整列した部員達の前で福富が本日のオーダーを発表していると、荒北ファンが遠巻きにキャアキャア騒いでいた。
福「ム?」
いつもと違う空気に気付く福富。
福「なんだあの派手なうちわを持った女子達は」
荒「……!!」
福富に指摘されさすがに無視出来る状況ではない、と荒北は行動を起こす。
ツカツカと女子達の方へ歩み寄り、怒鳴った。
荒「うるせェぞオマエラ静かにしろ!!」
すると……。
「出たわ“うるせェ”!!」
「“うるせェ”いただきました!」
「アタシに言ったのよ!」
「アタシよ!」
「もっかい聞きたーい!」
「もっかい言ってー!」
大反響が巻き起こった。
新「プーーーーッ!」
吹き出す新開。
腹を抱えてゲラゲラ爆笑する。
唖然としている部員達。
荒北は頭がクラクラして倒れそうになる。
荒「どうすりゃイイんだオレは……」
黒「荒北さん!しっかりして下さい!」
東「とりあえずファンから荒北を遠避けるか。フク、外周に出掛けるぞ」
福「わかった」
東堂の号令でチャリ部員は一斉に峠へ向かった。
真「荒北さん、疲労困憊してますね」
峠を登る荒北を前方に眺めながら新開に話し掛ける真波。
新「最初はついに靖友にモテ期が来てしまったかと焦ったけど、あの様子じゃ女性不信になるのも時間の問題だな。靖友には気の毒だが、オレとしては都合がいい」
真「だけど実際、今回のことは正当な評価ですよね。荒北さんの魅力に女子がやっと気付いたという」
新「靖友のハートをゲット出来るのは、いったい誰になるんだろうな」
真「いつまでもみんなのアイドルでいてもらいたい気もしますけどね」
その時だった。
「荒北くーん」
「頑張ってー」
突然荒北ファンが下り坂のコーナー脇から飛び出して来たのだ。
荒「!!」
キキーーッ!!
ブレーキをかけたが間に合わず、荒北はファンを避けるため急ハンドルをきった。
ガシャーン!!
コースアウトして転倒する荒北。
新「!」
真「!」
ガシャーン!
ガシャーン!
同様にコーナーに突っ込む新開と真波。
ガシャガシャガシャーン!!
次々と後続が突っ込み、大落車事故が起こった。